探求学習に力を入れた結果、大学進学実績は…? 注目のSSH「仙台三高」が育てる自ら学ぶ意欲

宮城県において伝統ある進学校として屈指の存在感を誇る宮城県仙台第三高等学校(以下、仙台三高)。早くから理数科を設置し、理系教育に力を入れ、2010年には文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定するスーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)の指定校に採択(第Ⅰ期)。そこでの実績も評価され、引き続き、2017年には第Ⅱ期、2022年には第Ⅲ期(〜2026年度)のSSH指定を受けています。
同校では試行錯誤をしながらも、SSHとして培ってきた実践的な研究開発やノウハウを、「三高メソッド」として他校に向けて公開していますが、なかでも、同校が力を入れているのが「探求学習」。教科横断的な授業やプログラムを開発した「三高型STEAM教育」を展開、それを基礎としたうえで、課題設定能力と課題解決能力を育成し、生徒たちが自ら実践的な学びに取り組んでいます。同校の「探究学習」を主幹する渡部敦先生に、その詳細な取り組みについて伺いました。(取材・文/高橋徹)
教科横断的な授業をつくり、「探求」に必要な力を養う

――「探究学習」の概要について教えてください
現在、教育界では、生徒が社会に出たときに活躍できるような資質や能力を育むためには、各教科で学んだ見方、考え方を総合的に生かして、さまざまな課題に取り組めるような人材を育成しなければならないという方向に向かっています。
今までの学力観にとらわれず、社会の現状を把握し、諸課題を見出しつつ、リーダーシップを発揮しながら適切なアプローチによって、課題解決に取り組むことができる力が重要視されています。そして、そのための資質・能力を育成するために学校教育で何をすべきかと考えたときに、共通認識として挙げられるのが「探究」となります。
「探求」は「研究」よりももう少し幅広く、興味関心に基づいて生徒の視点で取り組める内容であるとか、また、大学の研究にはないけど、こういったことを解決するのは必要だと、生徒自身が問題意識を持ってや取り組む活動であり、それを進めていくことが社会で活躍できる人材の育成につながると考えています。
本校ではデータ分析から社会の現状を把握しようとするデータサイエンスなど、さまざまな教科・科目の要素を取り入れて、探究活動と教科横断的な内容を組み合わせた授業を実践しています。これらの授業を通じて社会で活躍できる人材育成を目指しているのが「三高型STEAM教育」となります。
また、「探究学習」において、もうひとつ大事にしているのがフィールドです。実際に観察して分析するフィールドが必要なので、本校では近隣や学校に関わりのある人たちなどの人的財産や、自然環境や外部団体を含めて仙台三高と関わってくれるすべての資源を「尚志ヶ丘フィールド」と呼んでいます。このようにリアルな場所や人とのつながり、そこで生まれる交流も取り入れながら探究活動の質的向上に努めております。
自らの興味関心に基づき、テーマを設定し、解決まで考える

――「探究」の授業は具体的にはどのような流れで進んでいくのですか?
普通科の一年生を例に挙げますと、入学してオリエンテーションの後は、3ヶ月程度、講義形式でグループワークやワークシートに取り組みながら、研究手法、地図やデータの活用方法などを学んでいきます。そして、夏休みも利用して、立地する鶴ケ谷地域のフィールドワークを通じて課題設定をおこなっています。
見つけた課題に対して、自分たちで仮説を立てて、テーマに即した発表を行います。テーマ設定に関しては、生徒が自分たちがやりたいと考えたものを優先していますが、先輩たちの今まで行っていた探究の成果が学校のホームページ上にあり、それを参考文献として、探究活動を継続していくというグループもあります。
例えば、近隣の沼地に行って、沼を散策して、どの部分が危険か、なぜ危険な場所になっているのか、解決方法は何か、などを発表するグループがあったり、植生を見て、なぜこういう植生になっているか考察したグループもあります。
一年生の活動を経て、二年生では近隣地域の現状を分析して課題を見つけ、その課題を解決したいと考える生徒も出てきます。
あるグループは、公園化の計画が中止されたため、放置されて誰も近寄らなくなった場所があるのですが、これを課題として捉え、大学の先生に意見を伺ったり、地元住民の人たちに自分たちのアイデアを発信したり、アンケートを取って分析した結果を地元住民と協力したりしながら、地域の課題を解決しようとしています。
大学の先生と話すと、非常に詳細な資料を提供してくれますが、その資料を読み込むためには自分たちも勉強しなければなりません。また、地域の住民たちと協力していくうえでは交渉力も必要になります。他にも、地域住民の人たちと協力してハザードマップを作製したグループや、小学校とか中学校の子たちに出前授業をし、啓蒙活動に取り組んだグループもあったりします。
ひとつの活動をしていくにあたってさまざまな力が試されていくのですが、その力を生かすことが、いわゆる社会に出たときの未知なる課題をどのように解決するのか、その資質・能力の育成につながると我々は考えています。理数科の場合は、大学の研究に準じた形で、自分たちが疑問に思ったところを科学的な手法に基づいて研究していくという取り組みを行っています。
世の中が大きく変わる中で、過去の経験だけでは通用しない場合もあり、自分たちで現状を把握して、何が必要かというのを考える力を高校時代から養おうということで探求を重要視しています。
「探求」によって、学ぶ意欲が上がり、学び方も学習する

――先生方は、どのような形で「探求」の指導に取り組まれるのですか?
「探求」の指導は全校体制なので、関わっていない先生はいません。1、2年生の普通科だけでも、2〜4人の探求のグループが約140あるのですが、教員の数が60弱なので、一人あたり2〜3グループを担当しています。そのグループと対話しながら、テーマを詰めていきます。
テーマを決めてやるべきことが見えたら、例えば、「自分たちのテーマについて専門的なアドバイスをしていただける人はいませんか」といった感じで相談受けて一緒に探したり、調べたりしますが、先生方が関与するのはその程度です。生徒と一緒に考えることは多いですが、簡単に解決策は出ません。むしろ生徒たちが自分たちで進めていく方向性を見出せるように協力し、我々でお膳立てするようなことはできるかぎりしないようにしています。
それぞれの先生の得意なところ、苦手なところもありますし、どちらかといえば、生徒と一緒に楽しんでいただくような形で取り組んでいただいています。先生方も知らないことを知ることができますし、これまで関わりがなかった分野について、面白さに気づくこともあります。先生自身もこれからの教員生活にプラスになることは間違いないと思っています。
――名門の進学校として、例えば、保護者からもっと大学入試に即した授業をといった声などは挙がりませんか?
確かに進学実績が落ちたりすれば、そういう声も挙がってくるかと思いますが、おかげさまで進学実績に関しても成果をあげております。特に、高大接続が行われて、社会につながる資質能力を持っている生徒を大学側も求めており、一般入試の定員を減らして、総合選抜と呼ばれているコンピテンシーを含めた評価によって選抜する大学が増えています。
その結果、総合選抜入試で探求活動をメインに自分をアピールすることで大学に入学する生徒もいます。むしろ探究活動に力を入れた生徒は成績が伸びる傾向がありますね。探求活動を通じて生徒たちは社会と関わり、社会課題をすごく熱心に語るようになっていきます。
実際にリアルに地元の人たちと関わったり、外部の企業の人たちと関わったりしていくなかで、社会の課題というのが他人ごとではなくなっていくのですね。自分ごとのように捉えることができるようになり、それが将来の目標設定や社会で活躍したいというモチベーションにつながっていくと感じています。
探究活動によって生徒たちは、さまざまな経験を通じて、学び方や本質の捉え方を理解できるようになり、大学入試問題に関しても、どういうふうに解けばいいか、自分で勉強できるようになっていくと感じています。





























