かんしゃく持ちの6歳に「あんたやっぱおかしいわ」 息子を愛せないと悩む母に、精神科医が返した言葉

佐々木正美
2026.03.30 13:30 2026.04.09 11:50

頭を抱える男の子

発達がゆっくりな6歳のお子さんを育てる母親から、精神科医の佐々木正美先生に相談が寄せられました。かんしゃくの激しさに限界を感じ、「愛情をもって接することができない」と思い詰めています。

その苦しさに寄り添い、佐々木先生はどのような言葉をかけたのでしょうか。『この子はこの子のままでいいと思える本』よりご紹介します。

※本稿は、佐々木正美(著)『この子はこの子のままでいいと思える本』(主婦の友社)より一部抜粋、編集したものです。

かんしゃくの激しいわが子に愛情をもってかかわれない

(6才と3才男の子の母)

6才の息子に対して、愛情をもって接することができなくなってしまいました。

息子は赤ちゃんのころから発達が遅い子でした。

生まれたときからかんしゃくがひどく、扱いにくくて苦労しました。近ごろは、息子に話しかけられただけで「息子としゃべりたくない」「うっとうしい」と感じてしまい、ついつい怒り口調になってしまいます。息子が何かできなかったり、言うことを聞かなかったりすると、「あんた、やっぱりおかしいわ」と言ってしまいます。

毎日のように息子がかんしゃくを起こすので、あまりにたいへんすぎて、たたいてしまったときも罪悪感がありませんでした。市の保健センターに相談しても、わたしの気持ちが持ち直すことはありませんでした。

子どもがかんしゃくを起こさなくなる方法はちゃんとあるのです。真の専門家にかかわり方を学びましょう

わたしに相談の手紙をくださったことが深い愛情の証しです

落ち込む 慰める

6年間、たいへんな思いをされてきたことと思います。発達の遅れがあり、育てにくいと感じ続けてきたお子さんを、おそらくはたったひとりで(ご主人がいたとしても)支えてこられたのでしょう。

「愛情がもてない」「罪悪感もない」と投げやりな口調で書かれていますが、愛情がないお母さんがこの相談室に手紙を送ってくるはずがありません。そんな言葉を言ったり、書いたりしなければいけないほど、追い詰められていらっしゃるのです。

市の保健センターに相談に行かれたのですね。それなのに気持ちに変化が生じなかった。それは、保健センターが必要な機能を果たしていないのです。本当の意味での専門家がいないのだと、わたしは思います。

まず緊急にしていただきたいことは、本当の専門家のいる機関を訪ねることです。失礼ながら、ご住所を拝見させていただきました。お住まいの都道府県には、子どもの発達障害について信頼のおける国立の大学病院があります。お住まいの場所からは多少距離がありますが、一度そこを訪れて相談してみてはいかがでしょうか。

信頼できる機関には、医師、臨床心理士、ソーシャルワーカーが専門チームを組んで、親子のケアにあたっているものです。受診したら、あなたが思っていること、悩んでいることをどんどん伝えることです。がまんしてはいけません。どうしてほしいか、どの部分を支えてほしいのか、正直に言うといいのです。正しく対応してくださるはずです。

大事なことは、定期的に通い続けることです。大学病院に通えない場合は、近くのクリニックなりセンターなりを紹介してもらうことができます。一度受診したら、必ず次の予約をとりましょう。つながり続けることが何よりも大切です。

行動は、できるだけ早く開始してください。このままでは子どもへの嫌悪感が強くなり、親子関係が不幸なものになりかねません。

アメリカ発の「TEACCH(ティーチ)」を知っていますか

男の子とお母さん

お子さんは「かんしゃく」がひどいのですね。成育歴などを考えると、自閉傾向があるのではないかと思いました。そういう子がかんしゃくを起こさないための、具体的なかかわり方があることをご存じでしょうか。

アメリカのノースカロライナ大学が始めた「TEACCH」という、自閉スペクトラム症の子たち向けの指導プログラムがあります。ティーチの理念は、「自閉症の人たちが、自閉症という特性をもったまま、一般の人たちとともに生きていく」ということです。目の見えない人に点字ブロックが必要なように、車いすの人にスロープが必要なように、自閉傾向のある子にもふさわしい環境が必要なのです。

環境を変えるとは、コミュニケーションのとり方を変えるということです。専門家を訪ねると具体的に教えていただけると思いますが、たとえばこんなことです。

発達障害の子の多くは、話し言葉を理解するのが苦手です。本人はペラペラよく話していても、耳で聞くのは弱いのです。逆に、文字や絵で伝えられたことは理解しやすく、見たものについての記憶も強いのです。絵カードなどを使うと、おもしろいほど通じますよ。何度声をかけても黙々と遊んでいる子に、お茶わんとお箸の絵を描いたカードを見せると、すっと食卓にやってきたという声をたくさん聞きます。

こういう子には、口数の多い育児はよくありません。具体的ではない言葉かけもいけません。「なんでこんなこともできないの。ちゃんとしなさい」なんて、どれだけ言ってもムダなのです。「散らかさないで」ではなく、「脱いだ服は全部持って洗濯機に入れようね」と言うのです。否定ではなく、肯定で。あいまいではなく、具体的に。感情的ではなく、穏やかに。一度に言うのではなく、何度も繰り返すのです。

子どもに変わってもらうのではなく、周囲が変わるのです。「ますます大変になる」と思われるかもしれませんが、そうではありません。車いすの子のために家をバリアフリーにすることと同じなのだと考えてください。発達障害の子は正直で素直ですから、特性に合った穏やかな育て方をすれば、それぞれの子のよさや、かわいらしさも存分に発揮されるはずです。どうぞこれ以上、ご自分とお子さんを責めないでください。

佐々木正美

佐々木正美

昭和10年前橋市生まれ。昭和42年、新潟大学医学部卒業。東京大学で精神医学を学び、ブリティッシュ・コロンビア大学児童精神科に留学し、児童精神医学の臨床訓練を受ける。帰国後、国立秩父学園(重度知的障害児居住施設)や東京大学精神科助手を経て、神奈川県児童医療福祉財団・小児療育相談センターに所長として20年間勤める。その間、東京大学精神科、東京女子医科大学小児科、お茶の水女子大学児童学科等で非常勤講師、ノースカロライナ大学で非常勤教授を務める。川崎医療福祉大学特任教授、横浜市総合リハビリテーションセンター参与などを歴任。2017年没。著書に『子どもへのまなざし』(福音館書店)など多数。