発達障害の親は子育てに向いていない? ASD&ADHDのママ声優が実感した5つの「意外な強み」

中村郁
2026.04.10 13:07 2026.04.23 11:50

笑顔の女の子

「発達障害の特性を持つ親は、子育てで苦労する」と思うかもしれません。
しかし、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)の特性を持ち、女の子2人のママでもある中村郁さんは、「ずっと弱点だと思っていた発達障害の特性が活かされ、花開くステージが『子育て』だった」といいます。
中村さんの著書より、発達障害当事者ママが実感している、特性があるからこその強みを5つご紹介します。

※本稿は中村郁(著)『発達障害・グレーゾーンかもしれない親の子育て』(かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

※発達障害の特性や子育てのあり方には個人差があります。本記事の内容がすべての方に当てはまるものではありませんが、ひとつのヒントとしてご覧ください。

「凝り性」→親が夢中になり、子どもの関心を深められる

川遊びをする女の子

発達障害を持つ人は、凝り性な人が多いと言われています。

自分の興味関心のあることは、とことん調べてしまう。時間を忘れて好きなことに没頭してしまう。あなたもそんな経験はありませんか?

私はまさに究極の凝り性で、自分の気になることに関してはどこまでも調べまくるので、「検索の鬼」と周りの人から言われています。

私の娘たちは、そんな私の姿を見ているからか、道端で気になる虫を見つけると、帰宅後すぐに図鑑を広げて調べる癖があります。そこから派生して、卵はどんな形なのか、どんな幼虫なのか、何を食べるのかなど、私も一緒になってさらに深く調べます。凝り性なので、その虫に関してありとあらゆる情報を集めてしまうのです。

結果、娘は今や虫に関してとても詳しい「虫博士」になっています。

私の凝り性な特性によって、知らず知らずのうちに、楽しみながら子どもの興味のあることに寄り添い、子どもの関心を深めることができていたのですね。

子どもに向き合い続けることができるのも、凝り性ならではの特性です。

凝り性であることは、「夢中になることの大切さ」を見せられる大きな強みです。何かに夢中になれると、毎日がキラキラと輝きます。ひいてはそれが、人生の輝きへとつながります。親が凝り性であるということは、子どもにとって最高の教育になるのです。

あなたが凝り性だとしたら、凝り性である自分に誇りを持ってくださいね。

「思いついたら即行動」→子どもにたくさんの経験をプレゼント

キャンプをする家族

ADHDを持つ人は多動傾向にあり、じっとしていられないだけでなく、脳内も忙しく動き回っています(脳内多動と言います)。スマホで言うと、常にたくさんのアプリが起動している状態ですね。

これは、あちこちに思考が飛んで気が散ってしまうなどのマイナス面もあるのですが、いろいろなアイデアがどんどん浮かんでくる、というプラス面もあります。

私の場合、突然、「娘とこんなことしたら楽しいんじゃないかな?」と思いつくことが多く、衝動性も相まって、それを即行動に移します。

先日テレビを見ていたら、子どもとおでかけできる楽しそうな場所がたくさん紹介されていました。その中でも「ネスタリゾート神戸」のグランピングが格別に楽しそうで、いてもたってもいられなくなった私は、即予約。グランピングだけでなく、プールで泳いだり、バーベキューしたり、最高の夏の思い出ができました。

この特性のおかげで、娘にいろいろな体験をさせてあげることができています。

「過集中」→子どもと同じ熱量で集中して楽しめる

発達障害のデメリットが、子育てではメリットに! ASD&ADHDのママ声優が実感した、特性の強み5選の画像1

発達障害の特性のひとつに「過集中」があり、これも子育てでは強みになります。

たとえば、ブロックやお絵描きなどをして遊ぶとき。子どもと同じ熱量で集中して楽しむことができて、一緒に盛り上がれる。子どもにとってそれは、とても嬉しく、楽しいことなんです。

また、過集中のおかげで、夜泣きなどの子育てにおける困りごとについて、原因や対処法を調べまくったり、子どもの勉強に付き添っていたときにわからないことが出てきたら、子どもと一緒にとことん調べたりできます。

親が問題に真剣に向き合う姿は、子どもにとって、とても良いお手本になります。また、好きなものに集中する親の姿は、「好きなことに夢中になっていいんだ」という最高のメッセージを届けることにもつながるのです。

過集中は、日常生活では困りごとになることもあります。しかし、子育てにおいては、大きな「強み」になってくれます。

私は子どもの頃、夜中1人で千羽の鶴を折り続け、過集中のあまり、明け方に吐いてしまったという経験があります(笑)。しかし、大人になった今、その集中力を「子どもと一緒に楽しむ力」に変えることができました。

今の私の楽しみのひとつは、子どもと一緒に折り紙を折ることです。

子どもと一緒に折った鶴は、今までにいったい何羽になることでしょう。もはやその数は想像もつきませんが、一緒に鶴を折った時間は、私たち親子にとって宝物になっています。

過集中の熱量は、子どもの心を支え、才能を伸ばす原動力になります。吐かない程度に(笑)、子育てに取り入れていきましょう。

「親がミスを連発」→子どものカバー力・対応力が高められる

びっくりするママ

発達障害を持つ人は、うっかりミスが多くて、忘れ物をすることが非常に多いもの。

あるとき、長女と一緒に次女を園まで迎えに向かっている途中で、そろばんのお稽古カバンを家に忘れてきたことに気がつきました。

「ああっ」と悲痛なうめき声をあげる私。

「何か忘れたの?」と長女。

「そろばんのカバン忘れたわ……もう取りに行く時間ないわ……」と私が言うと、

「やってしまったね……。私も自分のことしか考えてなくて、○○ちゃん(妹)のカバン持ってくること、すっかり忘れてたよ。ごめん!」と長女が謝ってくれます。

いや……あなたが謝ることではないのですが……と思いつつ、「どうしよう」と私が困っていると、長女はこう言ったのです。

「大丈夫だよ。前にカバンを忘れた子いたけど、そろばん貸してもらってたし、問題集も先生が用意してくれるよ」

あなたって子は、なんて冷静なの……。

それだけではありません。次女も、カバンを忘れたことを謝る私に、「大丈夫だよ。貸してもらえるから」と……。

結局、パニックになったのは私だけでした(笑)。

このように、母がうっかりミスを連発するおかげで、子どもたちはすっかりトラブルへの対応力を高めながら育っているのです。これもまた、発達障害を持つ親の強み(?)です。

もちろん、親の私が失敗したとき、言い訳をせず、素直に謝ることも大切です。

そんな私の姿を見ているからか、娘たちは自分が失敗したときは、いつも素直に謝ってくれます。娘が失敗を素直に謝ってくれる姿を見ると、私のどんくささが、この子たちにとって、「失敗しても大丈夫、完璧じゃなくてもいいんだ」ということを感じてもらえるきっかけになっているのかな、と思えます。

「リピート癖」→子どもが好きなものを延々と楽しみ続けられる

絵本を読む親子

発達障害を持つ人には、同じ映像や音楽を何度見ても聴いても、毎回新鮮に感動できる人がいます。

まさに私がそうで、好きな映画はセリフを全部覚えるくらい見ますし、好きな曲は延々リピート再生して楽しんでいます。

周りの人から見ると、ちょっと理解できないかもしれないこのリピート癖ですが、実は子育てにおいては大きな力になるのです。

なぜなら、子どもというのは、お気に入りの絵本や歌、アニメを「エンドレスリピート」したがる傾向があるからです。

「ママこれ読んでー!」

毎日同じ絵本ばかり持ってこられると、多くの親は「そろそろ勘弁して……」と思ってしまうかもしれません。

しかし、リピート癖のある私は、これに何度でもお付き合いできてしまうのです。何度でも一緒に笑い、一緒に泣ける。これは子どもにとっても、親にとっても、双方ストレスなく楽しく過ごせるとても素晴らしい強みです。

さあ今夜も、もう何度めかわからない『モンスターズ・インク』を、娘と一緒に楽しみたいと思います!

中村郁

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ナレーター、声優(株式会社キャラ所属)。発達障害当事者会「ぐちゃぐちゃ頭の活かし方」主催。注意欠如・多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)併存の診断を受けた発達障害当事者で二児の母。子どもの誕生をきっかけに人生観が大きく変わり、発達障害の特性と向き合いながら仕事と家事育児に奮闘。著書に『発達障害・グレーゾーンかもしれない人の仕事術』(かんき出版)など。

発達障害・グレーゾーンかもしれない親の子育て
中村郁(著)『発達障害・グレーゾーンかもしれない親の子育て』(かんき出版)

「子育てがしんどいのは、私の努力が足りないから?」
「どうして、他のお母さん・お父さんと同じようにできないんだろう……」

そんなふうに、自分を責め続けてきた発達障害のあるお母さん・お父さんへ。

本書は、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症(ADHD)を併発する発達障害当事者のママが書いた、「発達障害・グレーゾーンの親」が、無理せず、楽しく子育てをするための一冊です。

忘れ物、時間管理、マルチタスク、感情のコントロール――著者は「できないこと」が多く、社会の中で何度もつまずいてきました。だからこそ、子どもが生まれる前は、

「子育てなんてしたくない」
「自分には向いていない」

そう思っていた一人でもあります。

それでも今、ふたりの子どもたちを不器用なりに、試行錯誤を重ねながら育て、子どもたちとまっすぐ向き合って生きています。

本書では、

・発達障害と診断されるまでの生きづらさ
・「社会不適合者」と言われた過去
・発達障害の特性を抱えたままの子育ての現実
・できないことを「根性」で克服しようとしない考え方
・環境調整と工夫で、子育てを回していく方法
・親自身の心を守るための視点

を、当事者の目線で正直に綴っています。

発達障害があると、子育ては「人一倍大変」に感じることがあります。音、予定変更、泣き声、マルチタスク、周囲の目――普通なら流せることが、心と脳をすり減らしていく。

でも、だからこそ伝えたいのです。

発達障害があっても、子育てはできます。完璧じゃなくても、子どもは育ちます。

お片付けが苦手でもいい。
うっかりしてもいい。
毎日ニコニコできなくてもいい。
疲れたら、休んでいい。

子どもにとって必要なのは、「完璧な親」ではなく、自分を大切にしながら生きている親です。

本書は、「発達障害の自分には無理だ」と思い込んでしまったあなたの心に、そっと寄り添う一冊です。