「字は読めるけど本が読めない」の原因は? 子どもの読解力を阻む“見えない壁”の正体

加藤俊徳
2026.04.03 15:56 2026.04.13 11:50

図書館で本を選ぶ女の子

大人はつい、「字が読めたら本も読める」と思いがちです。しかし実は、「文字が読める」ことと「本が読める」ことのあいだには、大きなギャップがあるのだそう。
子ども達が本への苦手意識を抱える背景にある“壁”の正体を、医学博士の加藤俊徳先生の著書よりご紹介します。

※本稿は、加藤俊徳 (著)『難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方』(大和書房)より一部抜粋、編集したものです。

「“文字“が読める」と「“本“が読める」の間にあるギャップ

本を読む子供

現代社会には、根本的に「本を読みにくくしている原因」があると思っています。

それは、現在の学校教育では、「文字が読める」と「本が読める」の間のギャップが埋まっておらず、苦労している子どもたちが多い、ということです。

私たち大人はつい、「文字が読めるんだから、本も読めるでしょう?」などと思ってしまいがちですが、その間にはとてつもなく大きな隔たりがあります。
私自身も、この「字を読む」→「文を読む」の壁には大変苦労しました。

小学校に入学してすぐ「あいうえお……」と50音の文字を習い始めたと思ったら、そのあとすぐにカタカナや漢字の学びも始まり、頭の中はフル回転。
でも、言葉の世界は狭いままです。
そんな状態でいきなり本を読んだとしても、はじめて出会う言葉が多かったり、意味を知らない単語がたくさんあったりするはず。
それではお話を読んでいても、内容がわかりにくいですよね。読みたくなくなってしまうのも当然です。

やはり、「知っている言葉」の数が少ないと、読める本・理解できる本は限られます。
しかし逆に言うと、「知っている言葉」が豊富であれば、読める本・楽しめる本は増えるということです。
つまり、語彙を増やすことができれば、「文字が読める」と「本が読める」の間のギャップを埋めていくことができるということです。

では、「知っている言葉」を増やすには、どうすればよいのでしょうか?
まず、ご家庭ですぐできることは、家族での「会話」を増やすこと。
身近なお父さん、お母さんの言葉は、子どもの脳への一番の栄養です。
聴覚系脳番地をダイレクトに刺激し、言葉の引き出しを増やしていってくれるでしょう。

そして、さまざまな「体験」を通して、言葉の世界を広げることも大切です。
子どもは、実世界のものを見たり聞いたり触ったりして、それに関連する言葉を覚えていきます。
実際に体験して五感をフルに働かせる(=多くの脳番地を刺激する)ことで、その中で見つけた物や、大人が話してくれた説明、感じたことを表現するための言葉など、さまざまな言葉をリアルに吸収することができるのです。
もっとも、現代の子どもたちは、ネット動画やSNSなどで文字や言葉に触れる機会がたくさんあると思います。
しかし、その言葉は経験が伴っていなくて、薄っぺら。
そのような五感を通っていない言葉は、脳内でイメージを増幅させられません。

というのも、言葉というのはそれ自体に意味があるわけではなく、脳が蓄えている「経験」と結びつくことで意味を獲得するからです。
脳内の経験が豊富であれば、言葉が頭に入ってきたときに彩り豊かな意味を持つでしょうし、新しい言葉が入ってきても、その意味を今までの経験から推測できるようになります。

逆に経験が乏しいと、入ってきた言葉は意味づけが薄くなり、ただの文字の羅列になってしまうというわけです。

ですから、言葉に付随した経験が多ければ多いほど、脳を柔軟に使うことができ、イメージを大きく膨ふくらませることができます。
そういう経験と知識が伴う言葉を扱う力が、本当の意味での「語彙力」であり、「文字が読める」と「本が読める」のギャップを埋めるものなのです。

「助詞強調」で一文を読むと脳が理解しやすい

机に向かう小学生の男の子

そしてもう一つ、語彙以外にも重要なのが「助詞」の活用法。助詞の活用法(助詞活)によって、文の意味はまるで変わります。
次の二文を比較してみてください。

 花子さん「は」団子を食べました。

 花子さん「と」団子を食べました。

「花子さんは」と「花子さんと」では、他に誰がいるか、いないかという登場人物の人数が変わりますね。
次のように、「は」や「と」でなく、「の」に変えたら、さらに意味が変わります。

 花子さん「の」団子を食べました。

花子さんはお団子を作ったのかもしれません。
あるいは、誰かが、花子さんの分のお団子をちゃっかり食べてしまったのかもしれません。
もし、「は」と「と」と「の」の違いをよく理解していないなら、一文の意味を理解できないことになります。
要するに、助詞の理解は本が読めるようになることに直結するのです。

本が読めない子は、「助詞活」が苦手です。
子どもは2〜3歳になると話し言葉で助詞を使い始めます。しかし、一文や本の中の「助詞活」が得意であるかは別の問題。
これを克服するには、助詞を強調して教える、あるいは、助詞を強調して表示することです。
すると、一文が音読しやすくなったり、容易に文章が読みやすくなります。
本嫌いな子ども、あるいは算数の文章題が苦手な子どもなどは、親御さんが積極的に助詞活教育をしてください。
これによって、学校の教科書や塾のテキストが読みやすくなり、成績も向上している例がたくさんあります。

そうは言っても、忙しくて子どもの勉強を見てあげる時間がない、というご家庭もあると思います。
そこは、無理をする必要はありません。
日常生活の中で、親子が同じ時間を過ごすだけも、十分に子どもの脳は育ちます。
日頃の親子の会話も、「語彙」を増やしたり、「助詞活」の教育につながります。

加藤俊徳

加藤俊徳

新潟県生まれ。脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。 株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。

難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方

加藤俊徳 (著)『難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方』(大和書房)

10歳までに「学力の土台」をつくる!
一生モノの読解メソッド

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