反抗期の中学生が「自分から勉強するようになる」親の言葉がけ(思春期の子との接し方は、やさしい動物たちが教えてくれる 第2回)

新年度が始まり少しすると、中学では中間テストの勉強が始まります。自分から計画を立てて勉強できる子どもはいいのですが、なかなかやる気にならない子の場合、親もヤキモキしてしまいます。
子どもが反抗期となれば、さらに、親との衝突も起きやすくなってしまいます。テスト勉強に向かわせるコツはあるのか、思春期親子の相談を数多く受けてきた元公立高校教員で『けなげに生きぬくいきもの図鑑』(実教出版)の著者、岡幸子さんに聞きました。
(連載「思春期の子との接し方は、やさしい動物たちが教えてくれる」第2回、聞き手・構成/一般社団法人Raise・宮本さおり)
反抗期の中学生になくて、親が持っている力

中学生はまさに反抗期のピークともいえる時期なのですが、日本ではこの時期に高校入試がやってきます。親御さんからしたら、当然テストの点数や、成績が気になるところでしょう。それは、親御さんが未来を予測する力を持っているからです。
未来のことを考えられるのは人間の大きな特徴だと言われています。他の生き物はどうかというと、今のことは考えられても、明日や明後日、5年後や10年後について考えることはできません。
こう話すと「いやいや、リスは予測しますよね、土に食料を隠して蓄えて、必要になったら食べるじゃないですか」という人が出てくるのですが、リスは未来を予測して埋めているわけではありません。リスはとりあえず、いつも行く縄張りの中で埋めているだけのため、埋めたところを忘れてしまい探せずにそのまま終わるということもあるのです。
このように、人間以外の生き物たちは計画的に見えていても、わりと行き当たりばったりです。中学生がこれと似た状況とまではいいませんが、この年齢の子どもたちもまだ未来を予測する力はそこまで育っていないのです。
最初のうちは中間テストや期末テストといったことに不慣れですし、今勉強をしないことがどういう結果に結びつくのか、どういうことになるのかという未来を考える想像力も乏しいのです。
テスト2週間前でも勉強をやらない子はどうしたらいい?

大抵の中学では、定期テストの2週間前から計画的に勉強をするように学校でも言われるはずです。のはずなのですが、なかなか勉強をやる様子が見られない子も一定数出てきます。親御さんもつい口を挟みたくなりますので、こんな相談をよく受けます。
「『勉強しないで大丈夫なの?大変なことになるよ!』『もうテスト二週間前だよ!』と、いくら言っても動こうとしません。どうしたらいいでしょう?」こうした相談に私は、一度お子さんの思うとおりにやらせてみて、転ばせるのも親の愛情ですよと伝えています。
「レジリエンス」という言葉をご存じでしょうか? もともとは物理学で「弾力性」や「元に戻る力」を表す言葉でしたが、その後、生態学や心理学、さらにはビジネスの分野でも広く使われるようになりました。
レジリエンスとは、「逆境から立ち直る力」や「しなやかな回復力」と訳されることが多い言葉です。
たとえば最近、日本や海外で大きな山火事がありました。山火事で一度野原が焼け尽くされても、土の中に残っていた種から芽が出て、自然が少しずつ再生していくという現象が見られます。
このような自然の復元力のことを、生態学では「レジリエンスがある」と表現します。
人間にも、この「レジリエンス」がとても大切です。
特に子どもたちにとっては、一度転んでまた立ち上がることや、失敗してももう一度チャレンジする経験が、レジリエンスを育てる大きなチャンスになります。
例えば、子どもが転ばないようにと、テストに向けての勉強のスケジューリングも全て親の方で整えてあげるという方がいますが、そうすると子どもは転んだ経験のないままで大きくなってしまいます。しかし、そのまま大人になって突然バタンと転ぶと、人生の大けがにつながってしまうことも出てきます。
子どものうちに擦り傷みたいな小さなケガを繰り返し、何度も立ち上がる経験をした方が、レジリエンスは育つのです。転ぶ経験も親から子に与えられる一つのプレゼントだと考えてみてください。
主導権を子どもに持たせることで気持ちが変わる

ではここから、先ほどの家庭のケースで見ていきましょう。
情報を整理すると、勉強をしないと「大変なことになる」と思っているのは誰でしょうか? これは親御さんの気持ちです。親はそれまでの自分の経験から「今から勉強をやらないと、テストで大変なことになる」と分かっているため、こう子どもに言ってしまいます。
ところが、言われた子どもの方は、ピンとは来ません。まだ失敗したという経験がないからです。「もう二週間前だよ!」などのようにテストまで日がないという事実だけを言われても、どうしていいのか分からず、「うっせーなぁ~」の返事になってしまいます。
ですから、まずは、自分の思ったようにやらせてみてください。自分のやり方で点数が取れていれば大丈夫ですし、取れずに落ち込んでいたとしたら、これはこれで、声をかけるチャンスが来たと捉えてください。
この時に、是非やめてほしいのが「だから勉強しなさいって言ったじゃない!」と叱責することです。
𠮟責で、自分はダメな子なんだという思いが残ってしまうと、その後も勉強へと向かうことが難しくなってしまいます。今回は残念だったことを一緒に受け止めつつ、次につながる声かけをしていくのが肝心です。具体的な声のかけ方は以下のステップで進めます。
①サポートしてほしいかを本人に聴く。
②サポートはいらないと言われたら、引いて見守る。
③助けを求めてきたら、求められたことで応援する。
まずは、本人の気持ちを聴いてください。今回、あえて「聴く」という字を使っていますが、この漢字には心を傾けて聴くという意味があります。親はサポートする用意があることを伝えつつ、どうしてほしいのかを聴いていきます。
この時に自分を主語として話す「Iメッセージ」を意識するとよりこちらの気持ちが伝わります。Iメッセージとは、「お父さんはあなたがテストで点数を取るには、もう少し早くから勉強を始めた方がいいと思う。」や、「お母さんが思うに、次に点数を取るために、間違えたところの解き直しをしたらどうかと思うんだけど、どうかな?」など、「私」を主語にして思いを伝える方法です。
こうすることで子どもは、意見の押しつけではなく「お母さんはそう思うんだね」と、自分とは別の意見として受け止めやすくなります。逆に、「解き直ししたら?」という言い方になると、反抗期の子としては、大人に命令されたという気持ちになり、それがいくら真っ当なアドバイスであっても反射的に拒否される場合も出てきます。
これまでに数多くの親子を見てきましたが、反抗期でも親子のコミュニケーションが円滑にできている家庭は、子どもの意見をよく聴いて、指示や命令ではない声かけができていました。親が決めるのではなく、子どもが主体となれるよう親が賢くなって導いてあげることを心がけてみてください。
けなげに生きぬくいきもの図鑑(馬場悠男 監修,岡幸子 著/実務教育出版)
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