「伸びる子は教室に入った瞬間わかる」そろばんの先生が指摘する、親の距離感と子どもの成長の関係性

nobico編集部

そろばん教室の先生として、長年にわたり多くの子どもたちの成長を見つめてきた、全国珠算教育連盟理事長の鈴木宗一先生。鈴木先生によると、「この子は伸びる」と感じる子どもには、親の関わり方に共通点があるといいます。

そろばん指導の現場から見えた親子関係の今についてお話いただきました。

(取材・文:nobico編集部)

「失敗させたくない親」が増えている?

─子どもの成長と保護者の関わり方には、どのような関係がありますか。

子どもたちを見ていると、やはり保護者の影響はとても大きいと感じますね。
特に、お母さんとお子さんの距離感は気になるところです。

中には、子どもとの距離がかなり近くて、おそらく何でも口を出しているんだろうな、と感じる親御さんもいます。そういう場合、お子さんは力を伸ばすのに時間がかかることが多いです。

逆に、教室に入った瞬間から「ああ、この子いいな」と思うお子さんは、親御さんがすごくいい距離感でいるんです。つかず離れず、子どもを決してむやみに叱らないですね。それでいて、子どもの学習内容はしっかり把握していて、「あなたのやることに関心を持っているよ」という姿勢は崩さないんです。結果の良し悪しには触れず、「今日はどうだった?」という声かけをしていますね。

─保護者の関わり方に変化を感じる場面はありますか。

そろばんには検定試験や競技大会など、さまざまな機会があって、その都度子どもたちに案内はするんですが、最近は親御さんが参加を止めるケースも増えています。というのも、「失敗体験をさせたくない」という思いがあるようなんです。

大会に出て思うような結果が出なかったり、順位が下の方だったりすると、それを「失敗」と捉えてしまう親御さんがいるんですね。私たちとしては、むしろ学びの良い機会と考えているのですが。

一方で、距離感の良い親御さんは、子どもにどんどん挑戦させますし、結果に関わらずしっかり褒めています。「チャレンジしたことで上達したね」といった声かけをされている印象です。

そろばんもスポーツと同じで、負けたりうまくいかなかったりする経験があるからこそ、次の目標が見えてきますし、大きな成長にもつながるんです。ただ最近は、そうした失敗を避けようとする保護者が少し増えているように感じていて、そこは気になっていますね。

─保護者と教室の関係性にも、変化はありますか?

「お金は出すけど口は出さない」というスタンスの親御さんは、昔に比べると少なくなっている印象です。

以前は、「すべて先生にお任せします」という保護者が多かったんですが、最近は「うちの子はこういうタイプなので、こうしてほしい」と具体的に要望を伝えられたり、「こういう場合はどうしたらいいですか」と、熱心に質問される保護者が増えている印象です。

ですから、子どもと保護者の距離感と同じように、保護者と私たち指導者との距離感も、少し変化してきていると感じます。

何を、どのように褒めるかが大切

─子どもの力を伸ばすために、親はどのような関わり方を心がけたらいいでしょうか?

モチベーションを上げるためには、やはり「褒めること」が大切です。重要なのは、「何を、どのように褒めるか」だと思いますね。

例えば、検定試験の練習で思うように点数が取れなかったとしても、一生懸命に間違い直しをして、最後までやり切る子はしっかり褒めます。逆に、いい点数を取っていても、少しの間違いをそのまま放っておく子には注意します。表に出ている数字だけで評価しないことが大切ですね。

ただ結果がいいから褒める、というだけでは、子ども自身も全然面白くないんですよね。なので、勉強に限らず、その子自身も気づいていないような行動や姿勢に目を向けて褒めてあげると、より良いと思います。

実際に、教室に通っている5歳くらいの子で、帰るときに毎回きちんと椅子を机に入れる子がいるんです。「えらいね」と声をかけると、とても喜んで、ほかの椅子まで全部整えてくれるんですよ(笑)。