親が突然戦場へ行くことになったら? 子どもに伝えたい、憲法が守る「当たり前」の自由
ある日突然、国から「戦場へ行け」と命じられる。
そんな出来事は、遠い昔の話のように感じるかもしれません。
しかし実際に、国家の命令によって人々が戦場へ送られ、望まない労働を強いられていた時代がありました。今、私たちが自分の生き方を自分で選べるのは、決して当たり前ではありません。その自由を守っているのが、日本国憲法の第18条です。
子どもにもきちんと伝えたい、憲法と自由の関係について、『ピンチを救うぼくらの憲法』よりご紹介します。
※本稿は、木村草太(監修)『12歳までに知っておきたい ピンチを救うぼくらの憲法』(Gakken)より一部抜粋、編集したものです。
【憲法がないとピンチ】戦時中のように親が兵隊に取られたらどうしよう
望まない労働を国から強制されたら?
ある日、突然Aさんの家に役人が来て、Aさんの親に
「明日からは遠い山奥で肉体労働をしろ」
「来年からは、戦地で兵隊として働け」
などの命令が言い渡され、やりたくなかった仕事をさせられたり、親が兵隊として出兵させられたりする……ということが起こったら、どうでしょうか。
自分のものであるはずの自分の身体が、自分以外の人や組織の思うとおりに動かされるということになってしまいます。
国民を兵隊として勤務させる「徴兵制」が可能になる?
現在の日本でも、罪を犯した人は、定められた期間を刑務所で過ごしたり、刑務所内の作業所で労働をさせられたりすることがあります。これらは犯した罪に対する刑罰として、また、罪を犯した人を立ち直らせることを目的として行われています。
しかし、昔の大日本帝国憲法では兵役は臣民(天皇に従う当時の国民のこと)の義務と定められていました。また、奴隷的な拘束や意に反する苦役を禁じる規定はなく、逆に人権への制限は日本国憲法より大きく認められていました。ですから、国家は命令一つで人々を戦場に送ることができてしまいますし、犯罪行為をしていない人でも、奴隷のような扱いをしたり、その人が望まない、大変でつらい労働をさせたりしていました。
【憲法があれば解決】兵役や本人が望まない労働は国が強制できない!
徴兵制を導入することはできない
憲法第18条は、犯罪による処罰の場合を除いて、意に反する、つまり本人が望んでいない苦役に就かせることはできないと定めています。
この条文があることで、日本では国家などの組織が理由なく国民に対して厳しい労働を命じることは認められていません。一定の年齢になった国民を兵隊として強制的に働かせる徴兵制は「意に反する苦役」にあたるため、憲法に違反すると解釈されています。
ただ世界の中には、さまざまな事情で徴兵制を取り入れている国もあります。かつては日本でも徴兵制が実施されていました。男性は20歳になると強制的に兵隊として軍隊に3年間勤務しなくてはなりませんでしたが、現在の日本には、徴兵制はありません。
憲法第34条 抑留・拘禁の要件、不法拘禁に対する保障
また、憲法第34条では、正当な理由なしに、突然取り押さえられたり、留置場などで監禁されたりすることはないと定められています。この条文は第18条と同じく、国民の自由権のうち、「身体の自由(生命・身体の自由)」に関わるものです。
自分のものである身体が、正当な理由なしに、国家などの組織の思うまま(捕まえられる、強制的に望まない仕事をさせられるなど)にされないという点で共通しています。これらの条文により、自分の意思に反して厳しい労働をさせられることはないのです。
【ぼくらの憲法 第18条 奴隷的拘束及び苦役からの自由】
強制的に国民を兵隊として働かせる徴兵制は、憲法違反と解釈されています。よって本人が望まない労働を国家が強制することはできません。
木村草太(監修)『12歳までに知っておきたい ピンチを救うぼくらの憲法』(Gakken)
いじめや理不尽なルール、戦争と平和――。
子どもたちのまわりに潜むたくさんの「ピンチ」を救う味方、それが「憲法」である。
「憲法」と聞くと、むずかしい言葉が並ぶ、自分とは関係のない遠い世界のものだと思うかもしれない。憲法は、みんなが毎日を楽しく、自分らしく過ごすために欠かせない、もっとも身近で大切な「約束」なのだ。
本書は、テレビでもおなじみの憲法学者・木村草太先生が監修。
「もしもこの世に憲法がなかったら、どんなピンチが起きるのか?」
という視点から、憲法の役割をやさしく解き明かす。
