恐竜絵本なのに主役は小さなケモノ?6歳がドハマりした白亜紀の物語【絵本レビュー】

中野セコリ(nobico編集部)

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nobico編集部員が、おすすめの絵本をご紹介します。
今回は6歳の息子と一緒に、『よるのはくあき』を読みました。

今回読んだ絵本はこちら

よるのはくあき』(PHP研究所)

かわさきしゅんいち (作・絵) /木村由莉(監修)

白亜紀時代、哺乳類は何をしていた?

白亜紀といえば、言わずと知れた恐竜の黄金時代。
私は男児を育てる中でその知識を得たのですが、ティラノサウルスやヴェロキラプトルといった格好いい人気恐竜たちは、だいたいこの白亜紀の出身のようです。もちろん、息子の最推しであるモササウルスも白亜紀生まれ。

そんな恐竜たちの全盛期である白亜紀に、私たちのご先祖様である哺乳類は、一体どんな暮らしをしていたのでしょう?

きっと「どうか見つかりませんように」と祈りながら、巨大な爬虫類たちの足元をビクビクと逃げ回っていたことでしょう。白亜紀において、われわれ哺乳類は超がつくほどの脇役だったはず。

しかし驚いたことに、そんな白亜紀の片隅にいた名もなき小さな「ケモノ」が、まさかまさかの、恐竜絵本の主人公になっているではありませんか!

興味を惹かれ、さっそく息子と一緒にその絵本を開いてみることにしました。

小さなケモノが夜の白亜紀を駆け巡る

おそろしい恐竜たちが我が物顔で闊歩する白亜紀。 ご先祖のケモノは、ビクビクしながら涙目で生きていたはず。

と思いきや、絵本の最初のセリフにいきなり驚かされました。

「おそろしい でっかい きょうりゅうたち、あいつら みんな ねむってる。
ぼくは よるのせかいの おうさまだ」

おお、思っていたのと違う。「おうさまだ」とは、まあまあ調子に乗っているではありませんか。 しかし、このくらいの図太さがないと、過酷な白亜紀は生き延びられなかったのかもしれません。
「はぁ?王様?こんな小さいのにか~?」と、6歳の息子もこのセリフを気に入って(?)いる様子です。

夜行性の小さなケモノは、食べ物を求めて、恐竜たちが寝静まった夜の世界を冒険します。 最初は静かに、恐竜を警戒しながら歩いていたケモノ。しかし、ぐっすり眠る恐竜たちの姿を見るうちに、徐々にその態度は慢心へと変わっていきます。

トリケラトプスの横を走ってみたり、ティラノサウルスの顔に乗ってみたりと、なかなかやりたい放題です。

「そんなに自由にしていて大丈夫?」と思わないでもないですが、ケモノは生き生きとして実に楽しそう。木々のざわめきや、心地いい夜の風を全身で満喫しているのが伝わってきます。

「ばれたら怖いけど、見つからなければこんなに楽しいことはない」といったところでしょうか。隣で聞いている息子も、思わず「怖!」と声をあげていましたか、表情はハラハラ以上にワクワクしている様子でした。

しかし、調子に乗って大胆になりすぎると、見つかってはいけないヤツに見つかってしまうのが世の常です。

誰もいない暗い森の中、ガサガサと大きな音を立てて走り回るケモノ。 そして、やっと見つけた木の実を手にしたその瞬間、ケモノがついに出会ってしまった「恐ろしい相手」とは?

この後のパニック恐竜映画のような展開は、ぜひ絵本を開いて楽しんでいただきたいです。

主人公を見失う面白さ

この絵本で特に印象的だったのが、生き物たちの「サイズ感」。 ずっしりと質量たっぷりの恐竜たちに対して、主人公であるケモノは、まるで米粒のように小さく描かれています。そのため、大きな恐竜が登場するたびに、私たち読者はケモノの姿を見失ってしまうのです。

物語の途中で主人公の行方が分からなくなる絵本も、なかなか珍しいのではないでしょうか(「ウォーリーをさがせ!」はさておき)。
「あれ?ケモノどこ行った?」「このページ、本当にケモノいる?」 と、子どもと一緒に探しながらページをめくるのも楽しかったです。また、ケモノの大きさと比較してみる恐竜の巨大さや迫力も、この絵本の見どころと言えるでしょう。

これまで、「食うか食われるか」の恐竜の世界にいまいち感情移入できなかった私も、この絵本ではケモノの目線で白亜紀を楽しむことができました。もしかしたら、主人公が哺乳類のご先祖様であるという親近感も大きかったかもしれません。

恐竜好きキッズはもちろん、恐竜の魅力にまだピンときていない親御さんにもお勧めできる一冊です。

よるのはくあき

かわさきしゅんいち (作・絵) 木村由莉(監修)『よるのはくあき』(PHP研究所)

とっぷりと日がくれて、“はくあき”の夜がやってきた。1匹のちいさなケモノが目をさます。
「夜はおはよう。ぼくだけおはよう」
恐竜たちが寝ている間、たべもの探しに森の中。
真っ暗な世界、おそろしい恐竜たちは、寝息を立てながら夢の中。
おやすみ、トリケラトプス。おやすみ、ティラノサウルス。
おやすみで、いいんだよね……?

講談社絵本賞などを受賞した『クジラがしんだら』(文:江口絵理、童心社)や『ゆびでたどる進化の絵本』(文・監修:三上智之、KADOKAWA)、国立科学博物館「大絶滅展」のキービジュアルなどで注目の、かわさきしゅんいち氏による最新作!