「死にたい」と言われたらどうする? 見逃してはいけない思春期のSOSと、親が最初にすべきこと

星野歩
2026.04.15 14:36 2026.04.27 11:50

雨の中傘をさす高校生

「もう死にたい」「自分なんていなくなればいい」もし、わが子がそんな言葉を口にしたら、親はどうすればいいのでしょうか。

「何を大げさな」と思う方もいるかもしれませんが、子どもは大人が想像する以上に深く傷つき、追い詰められている可能性があります。とくに発達特性のある子どもは、その生きづらさから悩みが深刻化していくこともあります。

本記事では、子どもが発する危険なサインの見極め方と、親が最初にとるべき対応について、医師の星野歩先生の解説を紹介します。

※本稿は、星野歩著『3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD (自閉スペクトラム症) ・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋、編集したものです。

もしわが子が死にたいと言ったら サインを見逃さない

外をながめる女子中学生

子どもが成長して思春期に入る頃になると、悩みが深刻化してくることがあります。学校や塾、部活での人間関係、SNS での悩み、勉強がうまくいかない、自分自身のコンプレックス……大人から見ればたいした悩みに思えなくても、本人は真剣です。とりわけASD のお子さんは成長するにつれ、自分の特性やそれに伴う生きづらさを自覚するようになり、悩みは深まります。

もしお子さんが「もう死にたい」「自分なんかいなくなればいいんだ」「〇〇を殺したい、刺したい」などと言ったら、あるいは食欲がなくなったり学校に行けなくなったりしたら、それはきわめて深刻で重大なサインです。

「うちの子はまた大げさなことを言って」「親をおどかしてるだけなんですよ」と取り合おうとしない親御さんもいますが、この重大なサインを決して見逃してはいけません。この年頃の子どもは、どこに行くにも手を引いていた、幼い頃のわが子とは違います。体も心も成長し、万が一にも死ぬと決めたら、本当に遂行してしまう行動力も実行力もついています。実際に、痛ましい事件が多発する年頃でもあることは、みなさんもご存じのとおりです。

ですから、このようなサインを発するということは、「しんどい、助けて!」と親に助けを求める必死のSOS なのです。お子さんは非常に危うい状態であり、いわば生死の狭間にいるのです。

では、そんなサインに気づいたら、いったいどうすればいいのでしょうか。

まずはサインをしっかりと受け止めて、「何があったの?」とおだやかに話を聞いてあげてください。そうは言っても思春期ですから、何もかも率直に打ち明けてくれることは少ないかもしれません。

そんなときは、本人の心身の負担を減らしてあげましょう。学校や塾、部活をしばらく休ませる、苦手な行事も無理に参加させない、宿題を減らしてもらう、厳しい叱責を避けてもらうなど、医師や学校の先生に相談して配慮してもらうことも大切です。

それから、心療内科にかかって薬を出してもらったり、転校や転部など、思いきって環境をガラッと変えたりするのも効果的でしょう。

緊急事態ですから、一刻も早く手を打つことが肝心です。わが子が心安らげる選択肢をたくさん用意してあげましょう。

親はよかれと思ってついやってしまいがちなのですが、悩みを早く解決しようと親が独断で動いたり、登校や部活の再開を迫ったりするなど、わが子を追いつめるようなことは厳禁です。

もう十分に追いつめられた状態なのですから、大切なのは「ゆるめる」こと。「あなたが生きているだけでいい。お母さん(お父さん)は、あなたが元気でいてくれるだけでうれしい」ということを毎日子どもに伝えましょう。

考えてみれば、わが子が生まれたときと同じですね。何はなくとも、元気に生まれてくれればいい――これが大前提で、すべての原点のはずなのですが、やっぱり欲が出て、「どうして学校に行かないの?」「テスト勉強しなくちゃダメでしょ」とあれこれ言ってしまうわけです。

思春期のイメージ

親も人間ですから場合によっては、あれこれどころか心にもないことを言ってしまうことすらあります。

たとえば、不登校も長引くと親もしんどくなってきます。学校に行かせたい、でも行けない――そんな状況が続きますから、いら立ちが募り、つい「あんたなんて産まなきゃよかった」と言ってしまう親御さんもいるわけです。でも、そこでなんとか立ち止まって原点を思い出してください。

親としての愚痴は医師や専門スタッフにこぼすことにして、わが子には毎朝、「おはよう。

今日も元気に起きてきてくれてありがとう」と声をかけてみませんか? わが子だけでな
く、自分自身にも言い聞かせることで、つねに原点に返ることができます。

元気でいてくれればいいんだよ。

ぼちぼちでいいんだよ。

そんな心持ちで、ただそばにいて他愛もない話をしたり、一緒においしいものを食べりして、とにかく親自身がゆったりとした気持ちで子どもが元気を取り戻していくまで見守ってあげましょう。

もしかしたら、かなり時間がかかるかもしれません。ですが、時間がかかるということは、それだけ子どもが深く傷ついている証ですから、あせらず、そしてあせらせることなく、待ってあげましょう。

SOS サインを出したら親は必ず対応してくれる。ぼちぼちでいいとのんびり見守ってくれる――そんな親に対する安心感・信頼感に支えられて、子どもはまた一歩、踏み出していけるのです。

星野歩

医師。地方病院の小児科にて、主に発達障害児・者の診断、治療、リハビリテーションに携わり、20年間でのべ3000人以上の診療に従事。
プライベートでは2児の母親。長男は小学生の時に知的な遅れのない自閉スペクトラム症と診断されるが、周囲との違いに悩みながらも、現在は成人し、某病院で働く勤務医となる。
自身の子育てと、医師として多くの発達障害児やその家族と向き合ってきた経験から、子も親も「ラク」になる子育てであってほしいという想いから、初の著書となる『ASD ・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を執筆。

3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD (自閉スペクトラム症) ・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法

星野歩著『3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD (自閉スペクトラム症) ・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

いま、ASD(自閉スペクトラム症)と診断される子どもは約100人に3人にのぼるといわれています。グレーゾーンの子どもも含めると、もっと多いでしょう。
わが子の個性をどう受け止め、どう伸ばしていけばいいのか。
多くの方が、正解のない問いに対して一人で悩み、疲弊しています。

本書の著者は、20年以上にわたり、のべ3000人の発達障害児の診療に携わってきた医師・星野歩さん。
著者自身もかつては、幼少期にASD(自閉スペクトラム症)と診断された長男の子育てに悩み、葛藤した一人の母親でした。

医師としての診察と、母としての苦悩。
その両方を経験した著者だからこそたどり着いたのは、「親のマインドセット(捉え方)を変えれば、子どもは特性を伸ばし、親子ともにラクに生きられるようになる」ということ。
本書では、著者が大切にしてきた、ありのままの特性を活かすための具体的な接し方を、医師の視点でわかりやすく解説します。