人工衛星は「一機」か「一基」か?日本語の数え方が複雑になった意外な背景
「おはし1膳」「おすし1貫」「たらこ1腹」…いったいいくつあるの?と叫びたくなる日本語の数え方。子どもだけでなく、大人も頭を悩ますことが多いのではないでしょうか。
実は日本語には、500種類くらいの数え方があるのだそう。今回は、数え方を学べる絵本『ぽんぴきぱいのぽん』(エンブックス)の著者で、数え方研究の第一人者の飯田朝子先生に、日本語の数え方がここまで多い理由、そして大人も間違えがちな難しい数え方など、子どもに話したくなる面白い雑学を教えていただきました。
(取材・文:nobico編集部)
数え方が複雑なのは日本だけ? そのルーツは「稲作」にあり
──そもそも、なぜ日本語の数え方はこんなにも複雑なのでしょうか。
実は、こういう複雑な数え方(助数詞)を持っている言語は、日本語に限ったことではないんです。
典型的なのは中国語で、日本と同じく500種類くらいの数え方があります。だから「日本語だけが特別複雑だ」というわけではないんですよ。中国の方に聞いても、やっぱり覚えるのは大変だったし、子どもの頃は間違えると直されてきたと言います。
インドネシア語やベトナム語などにも色々な数え方があって、その言語文化によって「何を重視して数え分けるか」という基準が異なるんです。
──アジア圏の言語に数え方が多い傾向があるのでしょうか。
そうですね。一番豊富に発達しているのはアジアの言語です。これは「稲作地帯」と重なるとも言われています。
狩猟民族と違って、農耕民族がみんなで分け合わなきゃいけないのは「穀物」ですよね。一緒に汗を流して収穫したお米や作物を分配するとき、枡(ます)や袋を使ってきっちり測って分けないと、不公平が生じて争いになってしまいます。
そのため、単位やものの数え方に対して、昔から非常に神経質になっていたという文化的背景があると言われているんです。
大人も大混乱!「機」と、「基」の決定的な違い
──大人も勘違いしやすい、使い分けが難しい数え方はありますか?
私が大学で教えている学生たち(就職活動中の世代など)を見ていて、みんながよく混乱しているなと思うのが、飛行機の「機」と、基づくの「基」の使い分けです。
どちらも「き」と読むので音が同じですが、明確なルールがあるんです。
まず、機械の「機」を使う「一機」は、「人間が乗っていなくても、空中を浮遊して移動するもの」を指します。飛行機やパラグライダー、気球、最近だとドローンもこの「機」で数えます。
──精密機械なら、何でも「一機」と数えていいわけではないんですね。
そうなんです。飛ばない精密機械、たとえばパソコンや自動販売機は「一台」ですよね。「飛ぶ」という性質があるものにだけ、この「機」が使われます。
一方で、基本の「基」を使う「一基」は、機械でなくても「その場所にしっかりと据えられている(設置されている)もの」に使います。公園のベンチや、道路の信号機、原子力発電所なども「基」です。
──据えられているものですか。
ここで大人が一番引っかかるのが「人工衛星」です。
人工衛星は宇宙を飛んでいるから飛行機の「機」だと思われがちですが、実は「基」を使って「人工衛星一基」と数えるのが正解です。なぜなら、あれは宇宙空間の『軌道』という場所にしっかり据え置かれている、という特徴の方が優先されるからなんですね。
──難しい! 誰が決めたんだと言いたくなります。
泣きそうになりますよね(笑)。大人でも迷う、使い分けが難しいポイントなんです。
でも、この仕組みを知っていると面白いですよね。「これってなんでこの数え方なんだろう?」と一歩踏み込んで調べてみると、ものの捉え方が見えてきます。ぜひ、ここで知った知識を、お子さんに披露してみてください(笑)。
飯田朝子(作), 武者小路晶子(絵) 『ぽんぴきぱいのぽん』(エンブックス)
「数えかた」が楽しく学べる物語絵本
「まほうようちえん」に入園した子どもたちが学んだのは、食べものや生きものを出す「ぽんぴきぱい」の魔法。
この魔法の言葉をうまく使いこなすには、きちんと「数えかた」のルールを覚えないといけません。例えば、きゅうりを1本出したいときは「ぽん」、かえるを2匹出したいときは「ひき」と、間違えずに数えることが大切です。
ところが帰り道、こっそり魔法を試してしまった子どもたちの前に、思ってもみない生き物が現れて大ピンチ!……
知的好奇心が芽生える4歳ごろのお子さんにおすすめです。読んでいるうちに、いつのまにか数えかたマスターに!
































