大事なのは「正解よりも意見」AI時代に生き残る子の決定的な違い

友村晋

「正解は答えられるのに、自分の意見を聞かれると言葉に詰まってしまう」…そんな子どもは少なくありません。AIが簡単に正解を教えてくれる時代だからこそ、自分の考えを持ち、それを伝える力の重要性が高まっています。

フューチャリスト・友村晋さんの著書より、情報も人も個性を失うAI社会に必要な能力「スピークアップ―意見を言う力」についてご紹介します。


※本稿は、『わが子に教える AI時代に必要な7つの能力』(友村晋/日経BP)から一部抜粋・編集したものです。

「スピークアップ―意見を言う力」の定義

立場や年齢、空気に左右されることなく、自分の考えや違和感を堂々と人前で話せる能力のこと。

意見がない人はいないに等しい

スピークアップとは僕たち日本人には聞き慣れない言葉ですが、英語圏ではとても頻繁に使われる言葉です。学校やビジネスシーンでよく使われ、意味は2つあります。1つは「もうちょっと大きな声で話して」で、もう1つは「君の意見を教えて」です。

ここで取り上げたいのは、後者の意味でのスピークアップです。

日本の学校では、先生が生徒を指すときは「この問題の正解は何かな?」と質問していることが多いですよね。

一方、例えばアメリカでは先生が生徒を指すときは、正解を求めているよりも「君の意見が聞きたい」と指示されていることが多いんです。そしてその時に投げかけられる言葉こそが「スピークアップ」なんです。

僕は、これからの時代には日本において、スピークアップの重要性がどんどん高まると考えています。その理由はシンプルです。

これからの時代は、単なる正解については生成AIが答えてくれます。しかし生成AIの回答は、少々荒っぽく言ってしまえば、世の中に出回っている2次情報や3次情報のパッチワークにすぎません。そのため、いずれの正解も似たりよったりになってきます。

このことを情報のコモディティー化(一般大衆化)と呼びます。このように情報が一般大衆化すると、生成AIを利用している人たちが出す正解は無個性になってきます。誰が答えても同じじゃん、ということですね。「そこに、あなたはいるの?」となります。

エンジェル投資家で経営コンサルタントであり、京都大学の客員准教授を務めていた瀧本哲史は著書『君に友だちはいらない』(講談社)の中で、商品やサービスだけではなく、これからは人間もコモディティー化されると警告していました。

つまり、自分には意見がなくてみんなと同じだ、という人は、存在しないことと同じだというのです。ビジネスの世界であれば、その仕事や役割はあなたでなくても構わない、別の人でもいい、ということです。もっと言えば、「あなたじゃなくてAIでもいい」と判断されてしまうことが増えてしまうということですね。

ですから、「大多数の人たちの意見は□□ですが、私の考えは◯◯です」と言える人の方が社会人としての価値が高まるんです。

これは、名門のテキサス大学オースティン校にお子さんが入学したというお母さんから直接聞いた話ですが、彼女が大学の入学説明会に参加したとき、学長から次のような話があったというのです。

「わが校に入学したいのであれば、面接の時に、自分が他人とどれだけ違うユニークな人間であるのかを自分の言葉でしっかり説明してください」

これこそ、先ほど『君に友だちはいらない』の著者である瀧本哲史が指摘していた「人材がコモディティー化されていく」未来を見据えての発言だと言えるでしょう。日本よりも仕事現場でAI活用が進んでいるアメリカにある名門大学だからこそ、もうこれから先の時代は、自分が他人とどう違って、どんな強みを持っているのかをスピークアップできる人しか生き残れないことがわかっているのかもしれません。

もちろん、コモディティー化をすべて否定するわけではありません。実際、明治以降の日本の教育では人間のコモディティー化が進められ、その結果日本人の多くが同じ水準の教養を身に付けたことでその後の国の発展に寄与した面はあると思えるからです。

しかし、「失われた30年」と呼ばれる時代に入ると、その威力に陰りが見え始めたと言えないでしょうか? 個人的には、「自分の強みをスピークアップしまくって将来起業させるつもり!」ぐらいの育て方がちょうどよいと思っています。

大化の改新がなかったら日本はどうなっていた?

この記事の画像(1枚)

こども家庭庁が公開しているレポートに『我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)』があります。このレポートの中に「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」かどうかのアンケート調査結果が掲載されています。

すると「そう思う」、つまり自分の考えをはっきり相手に伝えること(スピークアップ)ができると答えた割合は、アメリカが33.8%、ドイツが30.4%、フランスが30.9%、スウェーデンが30.3%といずれも30%を超えているのに対し、日本は17.9%しかいません。

この数字から、日本の学校教育では人前で自分の意見を言う訓練があまり行われていないと推測できます。先ほど言った通り、学校では正解を言う機会はあっても、正解のない問いに対して自分の意見を言う機会があまりないからですね。その結果、自分の考えを主張することが極端に苦手になっているのではないでしょうか。

僕の知人のお子さんがカナダから日本の公立高校に転校してきたときの印象的なエピソードがあります。

あるとき、歴史の授業で先生が生徒たちに、645年(諸説あり)に中大兄皇子や中臣鎌足が蘇我入鹿を暗殺した事件をなんといいますか?と質問しました。もちろん、正解は「大化の改新」もしくは「乙巳(いっし)の変」ですね。

ところがカナダ帰りである知人のお子さんは、逆に先生に質問したんです。

「その大化の改新は、当時の日本の社会をどんなふうに変えたのですか? もし、この出来事がなかったら今の日本はどうなっていたんですか?」

ところが先生はこのような質問にうまく答えられずにたじたじになったというんですよ。豪族が実権を握っていた当時、天皇を中心とする政治に戻すためのクーデターだったので、よく考えるとこの質問は非常に重要な質問ですし、意見を言い合うディスカッションのネタとしても最高です。

ちなみに、このお子さんの質問をChatGPTなどの生成AIに投げかけると、それなりに見事な回答が返ってきますよ。しかし、この先生には自分の考えがなかった、もしくは教師として自分の意見を言うのが不適切と思ったのかもしれませんね。先生をやり玉に挙げるのはちょっとかわいそうですが、これが大方の教育の現場かもしれない、と思いました。

既に世界中、至る所からスマートフォンやパソコンを介して、僕たちはいとも簡単に人類の英知からそれなりの正解を取り出すことができる時代です。

しかしその正解はコモディティー化されているので、誰が取り出しても似たりよったりでしょう。だから、その正解を取り出し、伝えてくれるのは誰でもいいわけです。学校教員である必要はありませんし、そもそも人である必要もありません。

ですから、これからの大学入試などでも、コモディティー化された正解を答えるだけの問題は減っていき、正解がない問題が増えてくるでしょう。だって、AIに聞けばいいんですから。だから、あなた独自の考えをスピークアップしてください、という問題を出し、合否を判定する問題が増えてくるでしょう(採点する側が大変にはなりますが)。

つまり、正解のない入試問題が増えていく社会に向かっているんです。

例えば、「第2次世界大戦が終結したのは何年ですか?」という問題ではなく、「第2次世界大戦でわが国が得たものと失ったものは何か、あなたの意見を述べよ」といった問題が増えてくるんです。

わが子に教える AI時代に必要な7つの能力

『わが子に教える AI時代に必要な7つの能力』(友村晋/日経BP)

AIの浸透で、フェイクが増え、技術が答えを教えてくれ、情報も人も個性を失い、分断が進み、先人の知恵が役に立たず、お金を稼ぎにくく、変化が激しい時代がやって来ます。本書はこの現実を直視し、親が家庭で教育できる実践的な方法を提示します。学校が変わるのを待つのではなく、親が扉を開く。そのために必要な視点と手順が、具体な例とともにわかりやすく示します。