子どもは試合の振り返りで伸びる! スポーツ心理学者が教える“成長を引き出す親の言葉”

川合俊一(監修), 山城稔(著)
2026.08.12 13:39 2026.08.26 11:50

バレーボール

スポーツでは「心・技・体」という言葉がよく使われます。特に小学生の時期は、身体能力や技量だけでなく、自分の気持ちを整え、前向きに挑戦する力を育てることが大切です。

ビーチバレー選手を含む多くのアスリートのメンタルトレーニングにも携わる、法政大学文学部心理学科教授の荒井弘和さんは、子どもの心を育てるためには、親の声かけや関わり方が重要だと話します。バレーボールチームに入団したばかりの小学3年生の息子を持つ父親も、荒井さんの言葉から、試合前後の声かけや振り返りの大切さを学びます。

子どもの成長を引き出すために、親ができる声かけとは? 休日は小学生男子バレーの指導を行うライターの山城稔さんによるインタビューを、書籍『子どもがバレーボールを始めたら読む本』より抜粋してお届けします。


※本稿は、『子どもがバレーボールを始めたら読む本<11人の賢者に聞いた100の習慣>』(川合俊一(監修), 山城稔(著)/ベースボール・マガジン社)から一部抜粋・編集したものです。

試合の前に気をつけること

親の話を聞く子ども

筆者:試合の前などに、気をつけなければならないことはありますか? 例えば「明日の試合は大事だ。絶対に勝てよ」とプレッシャーをかけちゃいけないとか(笑)。

荒井:むしろ私が教えてほしいぐらいですよ(笑)。私の娘たちはダンスをしていますが、発表会の前日に、私からアドバイスをすることはありません。「緊張する」などと言うときは「去年の発表会は楽しそうにやってたよね」「3年前の発表会が始まる直前の表情は、とても良かったと感じたよ」みたなことは言います。

筆者:過去の良かった経験を振り返る?

荒井:そうですね。それは「自己効力感」につながると思っています。自己効力感を高めるには、成功体験を積み重ねることが大事なんです。で、親がそこに関与できるのは、過去の成功体験を一緒に振り返ってあげることかな、と。

父親:なるほど。後々になって振り返るためにも、親は子どもの活動を、いつも見ておいたほうがいいのでしょうか?

荒井:難しい質問ですね。ちなみに私は、仕事でダンスを見に行けないこともあるのですが、それはそれでかまわないと思っています。

父親:え、そうなんですか。どうして?

荒井:子どもたちは「見にきて」と言うんですよ。だけど、私としては、親がいるときといないときで、子どもがどう感じるか、どう考えるか、その違いを知りたいと思いまして。

筆者:実験してるみたいな感じですね(笑)。

荒井:そうですね、まさに実験です。あえて一歩引いて、客観的に捉えようとするのも大事かなと。「お父さんがいてくれたほうが安心する」と言うなら「そうなんだ。それはなんでだろう?」みたいな質問をして、振り返りをしたりするんです。そのためにも、「あえて行かないときを挟む」という感じですかね。

振り返りによって、体験を素通りさせず、経験にする

ママパパと子ども

筆者:試合前の振り返りって、めちゃくちゃ大事ですよね?

荒井:そうですね。うまくいったときのことを明確にしておいたほうがいいですからね。それにはやはり、日頃から振り返っておくことが大事だと思うんです。

例えば、練習で調子が良かったときも「今日は調子が良かった!」で終わらず、「何が良かったのか」「試合前にどんなことがあったのか」「どんなことを考えていたのか」「どんな感覚だったのか」みたいなことを親が問いかけてあげて、振り返りを手伝ってあげる。

そうすることによって、試合の前でも「明日もあのときみたいな心構えで行けばいいんじゃない?」などと話せますよね。試合のときだけでなく、そうした振り返りをしておくことは、やはり成長につながるのかなと思います。

筆者:なるほど。小学生の場合、「一人で振り返りなさい」と言っても、何を振り返っていいかわからない子もいますからね。うちのチームの選手は「バレーノート」を書いていますが、内容はめちゃくちゃですよ(笑)。

荒井:成功体験にしても失敗体験にしても、体験した後に振り返ることが大切です。スポーツ心理学では、「体験を素通りさせず経験にする」のが大事だと言われます。

筆者:それ、めちゃくちゃよくわかります。体験をくり返しても、ただやってるだけだと、積み上がって行かないんですよね。積み上がるのに時間がかかる。

荒井:はい。せっかくの体験が流れていってしまうのは、もったいないですよね。場数をこなしていれば良くなる、というものではない。ちゃんと積み重なっていくようにサポートするのも、親御さんの大事な役割かもしれませんね。例えば、私が見に行けなかったときは、ビデオで見ながら「このときどんな感じだったの?」などと問いかけて引き出しています。

筆者:そのままだと単なる体験ですが、引き出して、再認識することで経験になる。そして、経験を積み重ねることで成長していくわけですね。

山城稔

  • HP

編集者・ライター。1966年9月13日生まれ、神奈川県川崎市生まれ。法政二高バレー部時代に春高準優勝、インターハイ優勝、国体優勝を経験。法政大学卒業後、出版プロダクションに勤務。編集長を務めた後、(株)BE-millionを設立。前職も含め700冊ほどの本に携わる。休日は小学生バレーの男子チームで指導を行う。仕事、家庭生活、バレー指導、それぞれの反省と学びを、相互的、相乗的に人生に生かし、感謝の心で高め合うよう努めている。

川合俊一

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1963年2月3日、新潟県生まれ。中学生のころからバレーボールをはじめ、明大中野高校を卒業後、日本体育大学へ進学。センタープレーヤーとして活躍し、大学4年時にロサンゼルス五輪出場。富士写真フイルム社へ入社後も全日本の中心選手としてチームをけん引。ソウル五輪にも出場を果たす。全日本の主将も務めた。インドア引退後は日本人初のプロビーチバレーボール選手として世界ツアーに参戦。その後はスポーツキャスターや解説者として幅広く活躍。現在は日本バレーボール協会会長、日本ビーチバレーボール連盟名誉会長などを務め、日本バレーボールの発展・普及に尽力している。

子どもがバレーボールを始めたら読む本<11人の賢者に聞いた100の習慣>

子どもがバレーボールを始めたら読む本<11人の賢者に聞いた100の習慣>』(川合俊一(監修), 山城稔(著)/ベースボール・マガジン社)

バレーボールを始めた小学生、中学生の親御さんが、子どもたちを支えるにあたり知りたいこと、疑問に思っていることを、「賢者」たちに尋ねていく一冊。
体のこと、食事のこと、用具のことなどテーマ別に、その道のプロフェッショナルから深い知識を得ていく本です。
ライターの山城稔さんが川合俊一さん監修の下、11人の「賢者」のところへ行き、親御さんの迷いや悩みを解決するヒントを探ります。
親しみやすい会話文で、大事なことがしっかり理解できます。