長文を読めない子が増えている? 難読症だった医学博士が語る「読む力が学力の土台」である理由
スマホやゲームの普及により、「子どもが全く本を読まない」「教科書がすらすら読めない」といった悩みを抱える家庭も少なくありません。
けれど、学校の授業は“文章が読めること”を前提に進んでいきます。
文章が上手に読めないと、問題の意味がつかめずに、すべての教科でつまずいてしまうことも。
あらゆる学びの土台となる「読む力」は、「自分らしい読み方」に出会うことで、どんな子でも伸ばすことができるといいます。
かつて「難読症」だった医学博士の加藤俊徳先生が語る、読む力の本当の大切さと、その伸ばし方とは?著書より抜粋してご紹介します。
※本稿は、加藤俊徳 (著)『難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方』(大和書房)より一部抜粋、編集したものです。
読む力は、「すべての学力に通じる土台」
スマホやタブレット、ゲーム機器などの普及によって、子どもの読書離れが進んでいると言われる昨今。
「うちの子、ぜんぜん本を読まない」
と思っているお母さん、お父さんは少なくないでしょう。
そのように思い悩む理由は、いま話題になっている「子どもの読解力低下」と無関係ではないでしょう。
活字に触れる機会が減ったことで、「長文を読む力」「語彙力」「行間を読む力」などが低下していると言われています。
実際に、「読書」というのは、脳の各部位を広く主体的に働かせる行為のため、発達にとても良い影響を与えます。
また、読書量の多さと学力の関係性もさまざまな調査により明らかになっていますので、親御さんが不安になるのも無理はありません。
私は小児科医として、また脳科学の専門家として、日々、困りごとを抱えた子どもたちを診察しています。
最近はその外来でも、多くの「文章が読めない」という訴えを耳にするようになりました。
特に、学校生活において、
● 音読をすると、つっかえたり、読み飛ばしたり、間違えたりしてしまう
●計算問題はできるのに、文章問題になると、とたんに意味がわからなくなる
● 問題文が長くなると、めんどうに感じて、読むのをあきらめてしまう
という話をよく聞きます。このような悩みを持つお子さんは、やはり“活字が苦手で普段から本を読まない“というご家庭が多いようです。
もちろん、読書をすれば学業すべてがまかなえるわけではありません。
ただ、今の学校教育の授業は教科書がベース。
誰かが「読み方」を教えてくれるわけでもないのに、“文章が読める前提“で授業が始まります。
それまで本に慣れ親しんでこなかった現代の子どもたちが、読めない文章の並んだ教科書に興味を持てないのも当たり前です。
文章が読めなければ、当然、テストの問題文を読んでも「何を問われているか」が理解できません。
問題を解くことができず、成績は伸び悩んでしまうでしょう。
活字が苦手というだけで、国語だけでなく、算数や理科、社会などすべての教科において、他の子と差がついてしまうのです。
そうすると、「文章を読めないこと」が、勉強嫌いや学校自体への苦手意識にもつながりかねません。
さらに将来、書類の内容を正しく読んだり、自分に必要な情報を取捨選択したり、上司からの指示を的確に把握したりするのにも、「読む力(読解力)」は必要です。
このように「読む力」は、すべての教科や学校生活、社会生活を送るうえで重要な土台となるのです。
この土台を10歳頃までに築いたかどうか。たったそれだけで、その後の学力や生きる力に差がついていきます。
昔は本が読めなかったのに、今では本を書いている私
……と、偉そうに「読む力」の大切さを語っていますが、それをいちばん実感しているのは、誰でもない私自身。
今でこそ180冊以上の本を執筆している私ですが、実は幼い頃、まったくと言っていいほど本が読めませんでした。
4歳から書道をやっていたおかげで一文字一文字を読むことはできたのですが、熟語や文章になると詰まってしまい、読み進めることができません(のちにこれが「難読症」という脳機能の問題であったと知ります)。
特に、国語の授業は読み物ばかりなので、始まった瞬間から終わりが待ち遠しく、時計を見てカウントダウンをしていたものです。
読めないものは、面白くない。この気持ちは痛いほどよくわかります。
また、計算ドリルの問題文も読めなかったので、母に手伝ってもらっていました。
「これは足し算するんだよ」
「これは引き算だね」
などと読んでもらいながら進めるので、1ページ進めるのにものすごく時間がかかっていた、というのが記憶に残っています。
そんな調子ですから、小学校の低学年のうちはまったく勉強に興味がなく、元気なのは体育と図工の時間だけ。
成績もさんざんで、ずいぶんと母や祖母に苦労と心配をかけました。
しかし、そんな「本が読めない代表」のような私が、その後の経験や工夫によって“自分なりの読み方“を見つけたことで、人生が変わりました。
難しいテキストも理解できるようになったことで、医学部にも合格し、それから一つの科目も追試・再試を受けることなく26歳で医学部を卒業し、博士課程の研究論文はまったく指導を受けることなく自前で構築し、医学博士となりました。
そして、30歳のときには2つの脳科学分野の研究論文を世界的な学術誌に発表できました。また、大学を卒業して小児科領域ではない放射線医学分野で3年目にトップジャーナルに発表できたのです。
脳科学者になった今思うのは、本を読むのが苦手だったおかげで試行錯誤し、 脳を鍛えながら、自分なりの読み方を見つけることができた、ということです。
本や教科書を読めるようになる道は一つではなく、子どもの個性の分だけあるのです。
いま「本や教科書が上手に読めない」という場合は、その子の個性に合った、最適な方法にまだ出会えていないだけ。
「自分らしい読み方」を見つけられれば、どんな子でも「読む力」は伸びます。
では、どうしたらその子に合った読み方を見つけられるのでしょうか?
その子の「個性」とは、つまり「脳の特性」のことを言います。
その特性は、観察力がある、聞くことが得意、体を動かすことが好き、おしゃべりが上手など、普段の行動やふるまいに現れます。
実は、本を読むときも、この特性を活かし、脳はさまざまなネットワークを駆使して情報を処理していることがわかっています。
ですから、まずは親御さんが脳のしくみを知り、お子さんの脳の特性をつかむこと。
そして、本への入り口になるような、お子さんの興味の矛先を見つけること。
その2つに合った本に誘導してあげることで、「自分らしい読み方」への道が開けていくはずです。
本は、読む力を育てる「最高の脳育教材」なのです。
加藤俊徳 (著)『難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方』(大和書房)
10歳までに「学力の土台」をつくる!
一生モノの読解メソッド
お子さんに、こんな特徴はありませんか?
● 音読をすると、つっかえたり、読み飛ばしたり、間違える
● 計算問題はできるのに、文章問題になると意味がわからなくなる
● 問題文が長くなると、読むのをあきらめてしまう
活字が苦手。たったそれだけで、国語だけでなく、算数や理科、社会などすべての教科において、他の子と差がついてしまう。
さらに、テストの問題文を読んでも「何を問われているか」が理解できず、問題が解けない……。
読む力は、「すべての学力に通じる土台」。
この土台を10歳頃までに築いたかどうかで、子どものその後の学力や生きる力に差がつく――。
そこで本書では、活字が苦手な「難読症」を克服した脳科学者が、短い一文から読む力を育てる「本の読み方」をご紹介します。
