子どもの「本が読めない」には3段階ある わが子の“現在地”と読む力の伸ばし方
近年、文章を読むのが苦手な子が増えているといいます。
「読めない」と一言でいっても、「字はわかるけど、文章がすらすら読めない」「音読でつっかえたり、読み飛ばしてしまう」など、その悩みはさまざまです。
実は、本を読む力の土台となるのは、目ではなく「聞く力」。
この力が十分に育っていないと、文章をスムーズに読むことが難しくなるのだそうです。
子どもの“読めない”を3つの段階わけた解説を、医学博士の加藤俊徳先生の著書よりご紹介します。
※本稿は、加藤俊徳 (著)『難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方』(大和書房)より一部抜粋、編集したものです。
本を読む力のベースは、脳の「聞く力」
皆それぞれに違う脳の使い方をして本を読んでいる……と説明しましたが、文章を読むための最低限のベースとなる脳番地は存在します。
それは、聞く力を司る「聴覚系脳番地」です。
人間は、目で文字を認識したあと、それを音に変換し、意味として理解しています。
皆さんも、文章を読むと、それが脳の中で音として流れてこないでしょうか?
この内なる声を「内言語」といいます。 文章を読み、この内言語を脳内で聞き取るとき、実は「聴覚系脳番地」が働いているのです。
実際、本を読むときは、頭の中で自分の「音読」の声を聞いているように自覚している人も多いと思います。
本を読むのに聴覚の力が必要だなんて驚いてしまうかもしれませんが、この聴覚系脳番地の「聞く力」や「文字を音にする力」が土台となって、子どもの本を読む力はできあがっていくのです。
赤ちゃんの時代から「読み聞かせ」をすることが、成長してからの読解力につながるというのは、脳科学的にも理にかなっているというわけですね。
そして、この「聞く力」という土台が育たないと、読む力も伸びていかず「うまく読めない」という悩みが生じることも……。
次から詳しく見ていきましょう。
「本が読めない」レベルには3段階ある
幼児〜小学校低学年の子どもの脳は、字に興味を持ち、ひらがなを習い始め、「言葉」を獲得していく発達段階です。
この時期の子どもの脳を伸ばすには、「本を読む」ことが効果的であるというのは言うまでもありません。
ただ、書かれている文を見て「読める」という状態は、一口に言ってもさまざまな段階があります(文字が正しく読める、文章の内容が理解できる……など)。
それと同様に、子どもたちからの「読めない」「苦手」「わからない」という訴えにも、さまざまな理由や段階があるのです。
日頃クリニックで接している子どもたちの様子と、教育現場の方々から聞いた話を総合すると、子どもの「本が読めない」は次の3段階に分けられるようです。
文字と音が結びつかなくて「スラスラ読めない」
文字を読むためには、目で文字の形を認識したあと、脳の中で、それが表す「音」と結びつける必要があります。
「あ」=「a」と発音する、という具合です。
この「文字情報を音に変換すること」が苦手なお子さんは、書いてある文字を見ても、それに対する音が浮かばず、頭の中で音声化するのに苦労してしまいます。
たとえば、「た」「ま」「ご」という文字を見たときに、「タマゴ」という音や映像が頭に浮かんでこない……という状態。
この場合、普段のおしゃべりは何の問題もなくできるのに、音読となるとスラスラ読めない……というパターンになりがちです
この段階のお子さんは、先ほど説明した聴覚系脳番地の働きがまだ弱い状態です。こう話すと親御さんは、すぐにでも文字を読む練習をしたいと思われるかもしれませんが、まずは耳に届く「言葉」に触れる機会を意識して設けてあげてください。自分が知っている「言葉」と、それを表す「文字」が結びつくことで、だんだんと「文字が読める」ようになっていきます。
そのためにも、まずは「聞いてわかる言葉」をどんどん増やしましょう。
また、文字を読めるようになる始めのころの脳は、一つひとつの文字を音に換える「練習」をしている段階です。
まだ一つずつの文字を確認しながら「た・ま・ご……」と読んでいるので、脳は思っている以上にエネルギーも集中力も使っています。
まずは二文字、次は三文字と、単語を読む時間をゆっくり積み重ねましょう。
文字を目で追えなくて「読み飛ばす、読み間違える」
一つひとつの文字は認識できているし、単語も知っている。しかし、文章になるとつっかえたり、読み飛ばしたり、読み間違えたりしてしまう……。
そのような場合は、視覚系脳番地にまだ弱さがあり、目の動きが文字をうまく追えていない可能性があります。
よく見られるのは、句読点とは関係のないところで区切ってしまうケース。
たとえば、「きょうはいいてんきです」という文があった場合、「きょう はい いてんき です」など、単語や文節の途中で切って読んでしまうという状態です。
実は私たちが文章を読む際は、一つずつ順番に文字を見ているわけではありません。無意識のうちに単語や文節を一つのまとまりとして捉え、そのまとまりごとに、少しずつ視線をジャンプしながら読んでいるのです。
ですから、文章をパッと見て単語として捉えられるような「見る力」が育っていないと、視線の移動がスムーズに行われず、読み飛ばしや読み間違いが発生してしまいます。
そのような段階のお子さんは、単語や文節ごとに「/」(スラッシュ)を書き入れて読んでみましょう。
文の区切りがわかりやすくなり、視覚系脳番地の働きをサポートできます。
また、視覚系脳番地がまだ育っていない、この段階のお子さんは
「同じ行を何度も読んでしまう」
「どこを読んでいるのかわからなくなる」
ことも多いかもしれません。
そんなときは、指でなぞりながら読んだり、定規を当てながら読んだりするのがおすすめです。
「文章を目で追うこと」を外側からアシストしてあげると、グンと読みやすくなるので、ぜひ試してみてください。
文を音読できても「内容がつかめない」
最後は、音読の宿題や文を読むこと自体はできるのに、意味の理解が追いついていないという段階。
文章を読み終わったあとに、「何が書いてあった?」と質問しても、内容を答えられない場合は、このケースにあたります。
こうした子どもたちは、ただ字面を追っているだけ、目が文字の上を滑って「眺めるだけ」になっていることが多いのが特徴です。
音読をする場合でも、文字を単に音に換えているだけで、書かれている内容そのものは頭に入っていません。
つまり、読みきることや声を出すことに意識が行きすぎて、目から取り込んだ文字情報が、記憶系や理解系の脳番地とつながっていないのです。
大人は文章を読むとき、「理解しながら記憶していく」ことが自然とできていますが、子どもは脳番地同士のネットワークが未熟なので、内容を記憶してからでないと理解が進まないしくみになっています。
頭に入っていないと理解できない、ということです。この状態のお子さんは、学習面においても
「文章が長くなると、最初の内容を忘れてしまう」
「1文ごとの理解はできても、全体の構造がつかめない」
などのつまずきが起こりがちです。
読んだ内容をしっかり頭に入れる(=文字情報を記憶系や理解系の脳番地へ送る)ためには、あらかじめ観た映画のノベライズ作品を読むという手があります。一度観た映像を文字でおさらいするイメージです。
また、「ただ読む」だけでなく、お子さんへ内容について質問したり、親子で感想を話し合ったりするのも効果的です。
特におすすめなのは、読む前にあらかじめ「私も読みたいから、あとで感想を教えてね」とお子さんに伝えておく方法。
はじめから脳にアウトプット(話す)を意識させることで、インプット(読む)の精度がグンと増すはずです。
加藤俊徳 (著)『難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方』(大和書房)
10歳までに「学力の土台」をつくる!
一生モノの読解メソッド
お子さんに、こんな特徴はありませんか?
● 音読をすると、つっかえたり、読み飛ばしたり、間違える
● 計算問題はできるのに、文章問題になると意味がわからなくなる
● 問題文が長くなると、読むのをあきらめてしまう
活字が苦手。たったそれだけで、国語だけでなく、算数や理科、社会などすべての教科において、他の子と差がついてしまう。
さらに、テストの問題文を読んでも「何を問われているか」が理解できず、問題が解けない……。
読む力は、「すべての学力に通じる土台」。
この土台を10歳頃までに築いたかどうかで、子どものその後の学力や生きる力に差がつく――。
そこで本書では、活字が苦手な「難読症」を克服した脳科学者が、短い一文から読む力を育てる「本の読み方」をご紹介します。
