活字嫌いの子に必要なのは「読書体験」ではない 本好きを育てる親子の「本体験」とは

加藤俊徳

子どもが本を好きになるために必要なのは、「読むこと」そのものではありません。
大切なのは、本に触れ、親しみを感じる「体験」です。

書店や図書館で本を眺めたり、読み聞かせをしたり…そんな何気ない時間の積み重ねが、「本って面白そう」という気持ちを育てていきます。

本記事では、子どもが自然と本に近づいていくための関わり方について、医学博士の加藤俊徳先生の著書よりご紹介します。

※本稿は、加藤俊徳 (著)『難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方』(大和書房)より一部抜粋、編集したものです。

最初は、本を読まなくてもいい。

子どもが本に興味を持ったり、読めるようになったりするために、親御さんが工夫できることはたくさんあります。
むしろ、子どもの関心が本に向くかどうかは、「お父さん・お母さんの導き次第」と言っても過言ではありません。
なぜなら、周りの環境によって変化しやすい子どもの脳へ最も影響を与えるのは、毎日一緒に暮らしている“家族”だからです。
ここからは「親御さんが子どものためにできること」を中心にお伝えしていきます。

「本や教科書がうまく読めない」お子さんは、たいてい活字があまり好きではありませんよね。
でも本や教科書が読めるようになるには、活字に対する苦手意識をなくすことが必要なので、まずは、活字に「慣れ親しむ」と同時に、本に「親近感を持つ経験」が大切です。

そこで私がおすすめするのは、親子で「書店」や「図書館」へ足を運ぶことです。

というのも、脳には、繰り返し触れる機会が多いとその対象に親しみを持ったり、好ましい感情を抱くようになったりするという特徴があります。

ですから最初は、本を買ったり借りたりしなくても大丈夫。
本を眺めたり、触ったりするだけで構いません。
とにかく本のある場所へ行って、いろいろな本の表紙を見たり、タイトルを読んだり、パラパラめくったり、棚へ片づけたりするだけでOK。
そんなことをしながら「本とは何か」を体感させてあげましょう。
まずは「読書体験」の前に、「本体験」を積むイメージです。

私も活字を読むのが苦手で、大人になるまで本がまったく読めませんでした。
ただ、幼い頃から書店に並ぶ数々の本や雑誌やマンガ、図書館の持つ独特の雰囲気は大好きです。
家には本棚と呼べるものはありませんでしたが、父が家を建てると言うので、自室の希望を聞かれて、壁一面の大きな本棚にしてもらいました。
学生時代には、読めないながらも書店に毎日通っては、本棚の背表紙を見比べたり、表紙やカバーを眺めたり、手に持って本の重さを感じてみたり……。
しまいには、書籍のある空間に憧れて、「本の街」と言われる神保町へ移り住んでしまったほどです。
思えば私も、あの頃にたくさんの「本体験」を積んだおかげで、本に対する「ファミリアリティ」(親しみ度・親和性)が上がったのだと思います。

子どもにとっても、たくさんの絵本や児童書が揃そろっている書店や図書館は、本体験を積むのにぴったりの場所。

普段は目にする機会の少ない巨大な絵本や、精巧な仕掛け絵本、懐かしの紙芝居なども、お子さんが本に興味を持つきっかけになるでしょう。
そして何より、本そのものに「触れる」ことが子どもの脳への刺激となります。
本の大きさ、厚み、紙の手触り、におい、光沢の具合など、さまざまな要素が、子どもの自発的な「読みたい」という気持ちを育てるのです。

このような本体験を経て、最初は親しみを持つだけだったところから、「中身も知りたい」「読んでみたい」という好奇心の伸びをお子さんに感じたら、ぜひ次は、自分で本を選ぶ「楽しさ」や「ワクワク感」を体験させてあげてください。

そのときに大切なのは、子どもがどんな本を選んでも否定しないこと。
そして、親が子どもに読ませたい本に誘導しないこと。
そうすれば、本を選ぶ時間そのものが、楽しい「読書体験」の入り口になっていくはずです。

本を通じた「親とのコミュニケーション」が、子どもの喜び

本に親しみを持つことができるようになったら、次はそれが読めるようになるために、親ができる働きかけの方法を見ていきましょう。

本を読むためのベースとなる脳の「聞く力」を育てたり、子どもの「言葉の世界」を広げてあげたりするためには、日常生活の中で親子の会話やコミュニケーションを増やすのが一番の近道です。
ただ、忙しい毎日を送っている親御さんの中には、「子どもと過ごす時間が多くとれない」「向き合って話すタイミングがない」という方も多いと思います。

実際、共働き世帯が非常に多いですし、一般的には朝8時頃に送り出してから、夕方6時ぐらいまで、お子さんには会えないご家庭がほとんどでしょう。

そうなると、子どもと触れ合う時間は、夕方6時頃から就寝する9時頃までの、3時間ほどしかないわけです。
しかも、その限られた時間の中で、食事やお風呂、宿題のチェックなどもしなくてはいけない……。
そう考えると、本当にお子さんと向き合っている時間は、平日だと30分程度しかない、という方も少なくないでしょう。

その貴重な30分、お子さんとどう接するかというときに、つい「何かをして遊ばなきゃ」「たくさん話をしなきゃ」と、あれこれ考えてしまうものですが、そんなときこそおすすめなのが「本」です。
親と子の間に「本」というアイテムがあるだけで、たとえわずかな時間でも、とても深く、質の高いコミュニケーションをとることができます。

本の使い方としていちばんのおすすめは、やはり「読み聞かせ」です。
幼児の頃は読み聞かせをしていても、小学校に入ったら自分で読ませるというご家庭も多いかもしれません。
しかし、小学生になっても大人に読み聞かせをしてもらうのは、子どもにとって嬉しいものです。
可能であれば、無理のない範囲で、読み聞かせを続けてあげてほしいと思います。

何より子どもは、お母さんやお父さんの声が大好き。
家族のぬくもりを感じながら、お話を読んでもらったり、ページを一緒にめくったりすることは、一生心に残る宝物です。
実際、幼い頃に読んでもらった本の影響は大きいもの。
大人になってもずっと記憶に残っている……という人も多いのではないでしょうか(私もその一人です)。
読み聞かせを通じて、本の中の豊かな世界を親子で旅した思い出は、いつまでも子どもの心の中で生き続け、成長の支えとなってくれるはずです。

もちろん、脳科学的にも読み聞かせの効果は絶大。
絵や文字を見ながら(=視覚系脳番地で情報を補足しながら)お話を聞けると、人物や風景、心情などが想像しやすく、物語がより深く味わえるので、聞くこと(=聴覚系脳番地を働かせること)自体が楽しくなります。
脳は「楽しい」と感じるときにどんどん活性化するので、読み聞かせのたびに、子どもの脳では「視覚系脳番地」と「聴覚系脳番地」がぐんぐん育っているということになります。
まさに「読む力」の土台を作っているようなものなのです。

そうは言っても、いつまでも親が読み聞かせをしていては、自分の力で本を読む習慣を作りにくくなってしまうのでは……と不安に思う方もいるかもしれませんね。
しかし、そこは心配いりません。
子どもが望むうちは、読み聞かせを通じて「本は面白い」「読むことは楽しい」という記憶を脳にひたすらインプットすることが大切。
逆に、子どもが一人で本を眺めているからといって放っておくことや、文字が読めるようになったから「自分で読めるでしょ」と読み聞かせをやめることのほうが、読書離れにつながってしまうことがわかっています。

ひとり読みに自信がつき、「自分で読むから、もう大丈夫」と言い出すまで、大人による読み聞かせの習慣は続けることをおすすめします。
読み聞かせの一番大事なポイントは、両親がその本の内容を面白いと感じていることが子どもに伝わることです。
読み聞かせた本の一文が印象的なら、親が暗唱して口にしてみることです。
一文を面白いと思えば、子どもは、おのずとその一文にまつわることも知りたくなるわけです。
もちろん、強制する必要はありません。親の好奇心が伝わることのほうが大事なのです。

そして、一般的な「読み聞かせ」以外にも、本を使ったコミュニケーションの方法はまだまだたくさんあります。
子どもが嬉しいと感じるのは、本を読むことそれ自体というより、本をツールに親子で会話をしたり、自分の体験を親と共有したりすることです。

いくつか例を挙げておくので、ぜひ親子時間の参考にしてください。

● 間違い探し本や絵探し本などを、一緒にワイワイやりながら眺める
●「ママに読んで聞かせてくれる?」とお願いし、時には子どもに読んでもらう
● 子どもが園や学校で読んだ本について、どんな内容だったかインタビューする
● 親子それぞれがお気に入りの本を選び、おすすめするPOPや帯を作る
● 親が“幼い頃に好きだった本“を、子どもにプレゼンする
● 親子で同じ本を読み、面白かったところをお互いに発表する
● 家にある本を集めて、ジャンル別や作者別など書店のように並べ替える
● 折り紙や料理の本を一緒に読み、子どもと実際に作ってみる

まずは週に1回でもいいので、こうした親子の時間を設けてみましょう。
本とのかかわりが親子のコミュニケーションになり、脳の発達を促す時間にもなるはずです。

難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方

加藤俊徳 (著)『難読症を克服した脳科学者が教える 子どもの読解力が伸びる 本の読み方』(大和書房)

10歳までに「学力の土台」をつくる!
一生モノの読解メソッド

お子さんに、こんな特徴はありませんか?
● 音読をすると、つっかえたり、読み飛ばしたり、間違える
● 計算問題はできるのに、文章問題になると意味がわからなくなる
● 問題文が長くなると、読むのをあきらめてしまう

活字が苦手。たったそれだけで、国語だけでなく、算数や理科、社会などすべての教科において、他の子と差がついてしまう。
さらに、テストの問題文を読んでも「何を問われているか」が理解できず、問題が解けない……。
読む力は、「すべての学力に通じる土台」。
この土台を10歳頃までに築いたかどうかで、子どものその後の学力や生きる力に差がつく――。

そこで本書では、活字が苦手な「難読症」を克服した脳科学者が、短い一文から読む力を育てる「本の読み方」をご紹介します。