ASDの子が学校生活で感じる「3つのしんどさ」 周りに伝わりにくい生きづらさの正体

星野歩
2026.04.15 14:35 2026.04.17 11:50

考える小学生

ASD(自閉スペクトラム症)の傾向がある子どもは、社会生活の中で「こだわりの強さ」や「感覚の偏り(感覚過敏・感覚鈍麻)」によるしんどさを抱えやすいといわれています。

子どもをサポートするにあたり、大人はその子がどのような場面で、どんな「しんどさ」を感じやすいのかを知ることが大切です。本記事では、ASDのある子どもが生きづらさを感じやすい場面について解説します。

※本稿は、星野歩著『3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD (自閉スペクトラム症) ・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から一部抜粋、編集したものです。

子どもが社会生活で味わう「しんどさ」

学校の教室、机と椅子と黒板

ASD傾向のあるお子さんは、その特徴である「コミュニケーション(社会性)の難しさ」「こだわりの強さ」「感覚の偏り(感覚過敏・感覚鈍麻)」が、そのまま日常生活のしんどさに直結しています。 

幼少期よりも小学生・中学生へと成長して、社会生活を送るようになってからのほうが多くの困りごとが発生し、しんどさを感じる場面が増えてくる子どもも多くいます。具体的には、次のようなしんどさです。

1 こだわりによるしんどさ

落ち込む小学生の女の子

こだわりでは、自分の興味・関心がきわめて狭いことが特徴です。

たとえば、電車のおもちゃで遊んでいれば何時間でも集中していられるけれど、そのおもちゃがないと泣き叫んで手がつけられないほど暴れてしまうというようなケースです。ほかにたくさんのおもちゃがあっても、「電車のおもちゃ」でなければダメなのです。それから、毎日のルーティンやマイルールは絶対に崩したくないお子さんも多いです。「朝は7時45分に家の玄関を出て登校する」と決めているのに、忘れ物やトイレ、悪天候などの突発的な事情で1分でも遅れると、もう学校に行きたくなくなる(行けなくなる)といったケースです。「臨機応変」や「適当」といった対応ができないため、社会生活を送るうえで、多くの困難が生じます。

2 社会性の困難によるしんどさ

ふてぶてしい表情でケンカ寸前の小学生男子

状況や人の心を察知することが難しいため、人との距離感がとりにくいという特性がしんどさにつながります。要するに、人間関係のしんどさです。

たとえば、ASD のお子さんは、「人と話すのが苦手」とよくいわれます。文字どおり、人とコミュニケーションをとりづらいためほとんど話さない子がいる一方で、たくさん話しすぎてしまう子も多くいます。話しすぎてしまう子は、自分の興味があることについて相手の反応は気にせず一方的に話したり、相手からの質問には答えず話したいことだけを話すため、会話のキャッチボールが成り立ちにくいのです。

幼児期や小学校低学年のうちは、ほかの子どもたちも幼いので問題にならないのですが、成長してコミュニケーションが複雑化してくると人間関係をうまく保つのが難しくなります。

自分が話すとなぜか周りの人が離れていく、いつもトラブルが起きる、といった失敗経験が積み重なってしまい、高学年になる頃には人とかかわらないようになるお子さんが増えます。

もちろん本人に悪気はないのですが、相手の心中を察することができないため、どうしても自分中心のスタンスになってしまうのです。とりわけ、コミュニケーションが複雑化しがちな女の子の集団社会では、しばしば困難が見られます。大人顔負けに本音と建て前を使い分けたり、言語だけでなく目くばせや身振り、雰囲気など言語外の表現でやり取りしあったりする女子の集団では、孤立することが多くなってしまうのです。

その結果、意地悪されたり、だまされたりすることも増えて、人間不信に陥り、学校に行けない、もう生きていけないと思いつめてしまうケースもあります。

3 感覚の偏り( 感覚過敏・感覚鈍麻)によるしんどさ

教室で頭を抱えて辛そうな小学生の女の子

感覚過敏・感覚鈍麻も、ASDの生きづらさの大きな特徴です。

まず、「感覚過敏」について。たとえば、

□ちょっと友達に触れられるのもイヤ。制服の詰襟の肌ざわりが気持ち悪くて、制服が着
られない(触覚)
□給食準備中の匂いがつらい(嗅覚)
□休み時間の騒がしさや音楽の時間の合唱が耐えられない(聴覚)
□好き嫌いでなく、どうしても〇〇が食べられない(味覚)
□教室内のさまざまな掲示物などが目に入って気が散る。蛍光灯の光がまぶしくてスーパーに入れない。太陽がまぶしくて、外に出るのが嫌(視覚)

と挙げればきりがありません。

ほかにも、

□スピードを出すのが怖くて自転車に乗れない
□階段を下りるのをひどく怖がる
□犬の吠え声が怖くて通学路が通れない
□エアタオルの音が恐くて、外のトイレが使えない

といったものもあります。いずれも多くの人たちは感じないものばかりですが、日常生活を送るのに大きな困難が生じます。

このしんどさは感覚過敏によるものだけではありません。感覚をうまく感じられない「感覚鈍麻」もASDの特徴の1つです。

たとえば、自分が痛みをあまり感じないため友達を強い力で叩いてしまう、足の裏の感覚がよくわからないため、誰かの足を踏んでいても気がつかない、などです。対人関係のトラブルにつながることもあり、見過ごせない特性です。

このような感覚過敏・鈍麻の原因は、おそらく脳の構造上の偏りによるものだといわれています〔注〕。つまり、先天的なものなので、本人のせいではありません。

〔注〕自閉症との関連が指摘されている遺伝子は数多くありますが、Neurexin、Neuroliginというシナプスどうしを結合させる分子をコードする遺伝子は、自閉症との相関が特に強いといわれています。

また、大脳皮質の中でも、前頭葉に位置する内側前頭前皮質の神経回路が、自閉症の社会性の異常と関係しているということもわかってきました。ASDの前頭前野におけるシナプスの結合不全やミエリン鞘(神経細胞をみる絶縁体で、信号伝達を効率化する役割を持つ)の形成異常が感覚過敏などの状と関連している可能性が報告されています。

POINT:お子さんの「しんどさ」の原因は変えられるものではありません。親が知って、合わせていきましょう。

星野歩

医師。地方病院の小児科にて、主に発達障害児・者の診断、治療、リハビリテーションに携わり、20年間でのべ3000人以上の診療に従事。
プライベートでは2児の母親。長男は小学生の時に知的な遅れのない自閉スペクトラム症と診断されるが、周囲との違いに悩みながらも、現在は成人し、某病院で働く勤務医となる。
自身の子育てと、医師として多くの発達障害児やその家族と向き合ってきた経験から、子も親も「ラク」になる子育てであってほしいという想いから、初の著書となる『ASD ・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を執筆。

3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD (自閉スペクトラム症) ・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法

星野歩著『3000人の発達障害の子を診察してきた医師が教える ASD (自閉スペクトラム症) ・グレーゾーンの子どもをありのまま育てる方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

いま、ASD(自閉スペクトラム症)と診断される子どもは約100人に3人にのぼるといわれています。グレーゾーンの子どもも含めると、もっと多いでしょう。
わが子の個性をどう受け止め、どう伸ばしていけばいいのか。
多くの方が、正解のない問いに対して一人で悩み、疲弊しています。

本書の著者は、20年以上にわたり、のべ3000人の発達障害児の診療に携わってきた医師・星野歩さん。
著者自身もかつては、幼少期にASD(自閉スペクトラム症)と診断された長男の子育てに悩み、葛藤した一人の母親でした。

医師としての診察と、母としての苦悩。
その両方を経験した著者だからこそたどり着いたのは、「親のマインドセット(捉え方)を変えれば、子どもは特性を伸ばし、親子ともにラクに生きられるようになる」ということ。
本書では、著者が大切にしてきた、ありのままの特性を活かすための具体的な接し方を、医師の視点でわかりやすく解説します。