「ゲームしながら動画をみたくなる子」の脳が求めているものは? 京大教授が解説
ゲームをしていたと思ったら、同時に動画も見始める。子どもがそんな「ながら作業」をしたくなるのには、実は人間の脳のしくみが関係しているそうです。
小学生の素朴な疑問に、京大の先生が発達心理学の視点からこたえる ふしぎなこころの世界 より、「二つのことを同時にやりたくなる理由」を紹介します。
※本稿は、森口佑介 (著)『ふしぎなこころの世界』(Gakken)より一部抜粋、編集したものです。
Q.ついつい動画を観ながらゲーム。二つのことを同時にやりたくなるのはなぜ?
A.脳はいつだって新しいしげきを求めているから。
人間の脳は新しい情報や楽しいことが大好きなんだ。
ゲームをしながら動画を観たくなってしまうのは、両方とも楽しくて「どっちもやりたい!」って気持ちになるからかもしれないね。
たとえばゲームで少し待ち時間ができたとき、「ちょっとたいくつだな……お、動画でも観よう!」って思ったりしないかな? それは、脳が新しいしげきや、楽しいことを求めているからなんだ。
おもしろい動画を観るとワクワクしたり笑ったりできるでしょ? 脳はそういうワクワクを感じると「やった! もっとほしい!」って喜ぶしくみがあるんだよ。
だから、つい目うつりしてしまうのも、ある意味自然なことなんだね。
それに、現代にはたくさんの楽しいコンテンツがあふれているから、「一つだけじゃもったいない! 同時に楽しんじゃおう!」と思いやすいのもあるね。
二つのことに「注意」はできないわけ
ところで、わたしたちが何かに集中するとき、脳の中では「注意」という働きが使われているんだ。
注意というのは心理学の専門用語で、きみの頭の中で「これに集中しよう!」とスポットライトを当てるような働きのことだよ。たとえばゲームをしているとき、ゲームに夢中になると、ほかのことは見えなくなるよね。
でも注意にはかぎりがあって、一度にたくさんのことには強く向けられないんだ。
そもそも、わたしたちの脳は、一度に複数のことをするのが苦手なんだ。だから、同時に二つのことをしているつもりでも、実は注意のスポットライトを、すばやく行ったり来たりさせているだけなんだよ。
この切りかえには、時間がかかるし、エネルギーも使う。だから二つのことを同時にやろうとすると、どちらも少しずつうまくできなくなったり、ミスしやすくなったりするんだ。
たとえば、「ゲームをしっかり遊びたい」という気持ちと、「動画も楽しみたい」という気持ちが同時にあると、脳はどっちを優先しようかまよってしまって、集中するのがむずかしくなる。
気が散るのは、人間の本能!?
今の時代、スマートフォンやタブレットなど、いろんな情報がシャワーのように、つねにふりそそいでいるよね。
ゲームをしていても、スマホから音がしたり、だれかからメッセージがとどいたりすると、どうしても気になってしまう。
わたしたちの脳は「何か大事なことが起きたかも!」と感じると、今やっていることを中断してでもそちらを見るようにできている。
昔の人間で考えてみると、森で食べ物をとっているときに、とつぜんガサガサッと物音がしたら「猛獣かも! にげなきゃ!」って注意を向けて身を守ることが大切だったはずだよね。
こんなふうに、外からのしげきに反応して注意を向けることは、もともと生きのびるために大切な能力だったんだ。
だから現代のわたしたちも、スマホの通知音がしたら、脳は「もしかしたら大事なお知らせかも?」って、つい反応してしまうんだ。
だけど現代では、その「大事なことかも!」と思わせる合図があちこちにありすぎるんだ。
スマホの通知音、カレンダーのアラーム、テレビのはでな映像や音楽―どれもこれも、わたしたちの注意を引こうとしてくる。
だからいつも何かに気を取られてしまって、一つのことにじっくり集中するのが、前よりむずかしくなっているんだ。
「ながら作業」をやりすぎるとどうなるの?
研究では、いつもたくさんのことを同時にやっている人は、どうでもいいことにも注意がそれやすくなる、ってことがわかってるよ。
さらに、同時にいろんなことをしている子どもや若者は、注意が続かなくなったり、勉強の成績が下がったりすることがある、といわれているんだ。
二つのことを同時にやってしまう理由、わかったかな?
それは、人間の注意のしくみと、現代の情報たっぷりなかんきょうが関係しているんだ。
大事なのは、「自分がやりたいことに集中する力」と「周りのゆうわくに負けにくくする工夫」を少しずつ身につけることかもしれないね。
もちろん楽しい動画やゲームを両方いっぺんに楽しみたい気持ちはとてもよくわかるよ。
でもどうしても二つのことをやりたくなっちゃうときは、一度深こきゅうして「今、本当にやりたいのはどっちかな?」って自分に聞いてみてね。
森口佑介 (著)『ふしぎなこころの世界』(Gakken)
小学生100人に聞いた 心の「なぜ?」に 京大の先生がこたえる本!!
「やらなければいけないことを、つい後まわしにしてしまうのはなぜ?」
「クレーンゲームを、ついやりたくなるのはなぜ?」
「ついつい動画を観ながらゲーム。二つのことを同時にやりたくなるのはなぜ?」
「おばけはいないはずなのに、おばけがこわい! なぜ?」
「赤ちゃん時代の記憶がないのはなぜ?」
小学生100人へのアンケートで集めたリアルな「心のなぜ?」に、京都大学大学院・森口佑介先生が発達心理学の見地からこたえます。
ふしぎとついやってしまう、わかっているのにやめられない…そんな心のクセを知って、自分の心や気持ちとうまくつきあうためのヒントが満載の一冊です。
語りかけるようなやさしい文章で読みやすいのに、内容は本格的。
第一線で活躍する研究者がおくる、知的好奇心を育てる新しい児童書です。
