「やさしい子育て」はなぜ毒になる? 親の先回りが子どもの思考力を奪う理由

西岡壱誠

遅刻しないように朝起こす、忘れ物がないように学校の準備を親がする…いずれも「子どもを困らせたくない」というやさしさから生まれる親の行動です。

しかしその行動は、子どもにとって本当にプラスなのでしょうか。
「やさしいだけ」の子育てが、実は子どもから奪っているものとは?
東大生作家の西岡壱誠さんの著書より、過干渉になりやすい子育ての落とし穴について解説します。

※本稿は、西岡壱誠 (著) 『怒りすぎたあとからでも始められる子どもの地頭が育つ後悔しない子育て』(総合法令出版)より一部抜粋、編集したものです。

毒になる「やさしいだけ」子育て

現代の子育てには、あやうい“常識”が、浸透しています。

それは、子どものために「してあげる」が、親の役目だとみなされていることです。

●朝、起きられなければ親が起こしてあげる
●学校に行きたくないと言ってくれば、親が学校へ連絡を入れてあげる
●志望校の情報を比較し、「どれがいい?」と選択肢を差し出してあげる

極端な例でいえば、大学の願書や総合型選抜の志望理由書も親が代筆してあげることや、お笑いの養成所(芸人になる前の学校)の説明会に心配だから親が同席してあげることもあります。そのような子どもの負担を減らすための、過剰な「してあげる」子育ては、珍しくありません。

もちろん、子どもが困っているときに手を差し伸べることは大切ですし、親が関心をもっている証でもあります。

しかし日常的に繰り返されると、どうなるでしょうか。

親の先回りが奪っているもの

親が先回りしてあれこれ手を貸すことは、いっけんすると親心からのやさしさや気づかいの表れですが、「してあげる」は、子どもが自分で考え、判断し、行動する機会を奪い取ってしまいます。

子どもが失敗したり困ったりするたびに、親がすぐに介入して問題を解決してしまうと、「自分でどうにかする必要がない」と無意識に学んでしまうのです。

子どもは、自分で考えることをせずに、指示待ちの姿勢が身につきます。目の前の問題に対して自分で答えを見つける経験が不足するため、いざ自分で決断をしなければならない場面では、どうすればいいのか判断ができず、動けなくなってしまいます。

また、親の先回りは「失敗や苦労は避けるべきものである」と子どもに感じさせてしまいます。失敗を経験し、そこから学ぶプロセスを体験しないままでは、困難に直面したときに乗り越えられずにあきらめてしまいます。問題を自分のものとして受け止め、乗り越える「主体性」や「責任感」が育ちにくくなるのです。

では、よくある親の先回りから、どのような子どもになりやすいかを考えてみましょう。これらはあくまで仮説であり、すべてのケースに当てはまるわけではありませんが、傾向として考えられることだと思います。

●部屋が汚れていると「また散らかして!」と怒りつつ、最終的に親が掃除をする
→ 子どもは、「散らかしても結局、誰かが片づけてくれる」と思い込むのではないでしょうか。自分の部屋だから、責任は自分にあるとは考えずに、「怒られさえすれば済む」「放っておけば誰かが、なんとかしてくれる」という他人任せの考えが、染みついていく可能性があります。

●忘れ物に気づいて、ランドセルにこっそり入れておく
→ 自分が気づかなくても、最後は誰かが助けてくれるとインプットされてしまいます。失敗を経験しないことで、「気をつけよう」「準備しよう」「確認しよう」という意識が育たずに、気づかないままでいても、なんとかなる受け身の姿勢が、強まっていく可能性があります。

●朝食をつくったあとに、「早く食べないと遅刻するよ」と何度も繰り返す
→ 時間管理や次の行動も親が管理するものだ、と誤認してしまいます。自分で時計を見て行動を調整する機会が奪われるため、時間感覚や自立的な行動習慣が育ちにくくなり、年齢が上がっても依存的な行動様式が続き、身支度・準備・管理といった生活スキルが弱くなる可能性があります。

これらはすべて、親の善意や愛情から生まれる行動です。

ですが、積み重なれば結果として、子どもが「自分で考え、決めて、動く」力を伸ばす機会を減らしてしまうリスクがあります。

子どもが、「自分で考えて動くべき場面」に出くわしたときに、親がいないと手も足も出ないことになってしまいます。自分で考える回路が育っていないためです。

これは、勉強にも当てはまります。

「勉強しなさい」と言われないとしない子どもたち

この記事の画像(1枚)

宿題のスケジュールを親が決め、提出物の締めきりも親が管理して、使う教材や通う塾すら親が選ぶ。そんな環境では、子どもは「学習を他人ごと」としてとらえるようになります。

勉強するのは自分のためではなく、
「親の指示だからやる」
「怒られるからやる」
「言われたからやる」
になってしまうのです。

親の「してあげる」行動は、短期的には子どもの負担を軽減し、問題をすぐに解決しているように見えますが、長期的には子どもの“考える力”や“動く習慣”を奪っています。つまり、子どもの経験値を親が肩代わりしていることになります。

手助けするな、と言っているわけではありません。

私が伝えたいことは、問題に直面したときにすぐ助けるのではなく、「まずは本人に考えさせる」「自分で判断し、行動する時間を残す」こと。親の役割は、問題の答えを与えることではなく、考えるプロセスを支えることです。

【Think!】「自分で考える力」で、子どもは人生をきり拓いていける

怒りすぎたあとからでも始められる 子どもの地頭が育つ後悔しない子育て

西岡 壱誠 (著) 『怒りすぎたあとからでも始められる子どもの地頭が育つ後悔しない子育て』(総合法令出版)

子どもの個性や可能性、自己肯定感を奪わないために親にできること
もう、怒ったあとに落ち込まない
親子で地頭がよくなる子育ての思考法

「叱らない」「ほったらかす」「褒める」……子育ての正攻法に悩むすべての親へ。
罪悪感を抱いたら、この本を開いてみてください。