子どもの「みんな言ってる」は信じないほうがいい?親子が持つ物差しのズレ
「みんなこう言っている」「みんなスマホを使っている」 子どもからそんなことを言われる事はありませんか?
子どもと大人では、物事を認識する「物差し」が全く異なります。子どもにとっての“みんな”は、大人から見るとほんの数人の親しい友達を指していることも珍しくありません。
しかし気をつけたいのは、こうした「物差しのズレ」は、子どもだけでなく親の側にもあるということです。
親子のコミュニケーションのために知っておきたい、子どもと大人それぞれの「物差しのズレ」を、子育て共育アドバイザーで、学習塾の塾長も務める野本一真先生の著書よりご紹介します。
※本稿は、野本一真著『スマホの与え方・使い方の教科書』(産業能率大学出版部)より一部抜粋、編集したものです。
「みんなが言っている」の“みんな“とは誰?
あなたは子どもと話をしているとき、「みんなが言っている」という言葉をよく耳にしませんか? この“みんな“とは誰のことでしょうか? 何人いるのでしょう?具体的な名前は? つい聞き流してしまいがちですが、こうした確認はとても重要なことです。
私が生徒からよく聞くのは、「“みんな“公立高校に行くので、公立高校がいいかなと思います」というセリフです。詳しく尋ねると、「みんな=自分の親しい友達数人」だったりします。大人からすると、その“みんな“は範囲が狭すぎないか? と感じますよね。
時代や地域によっても異なると思いますが、今の私立高校は少子化にあらがおうと、特色ある教育や面倒見、進学実績をウリにしています。また、都道府県により名称は多少異なりますが、私立高校進学に際して、国や地方自治体が授業料を助成する「私学助成金」の助成額が増えたことも追い風となり、私立高校を第一志望にする中学生は急激に増えています。その年によって違いますが、塾生の半分が私立第一志望という年もあったぐらいです。
つまり、子どもと大人では、物事を測る物差しが異なるのです。子どもは狭いコミュニティの中での出来事を、あたかも世間の常識であるかのように捉えてしまっていることもあります。子どもにとっての“みんな“は、大人にとっては内輪の数人、というのも珍しくありません。
こうしたことは大人同士の会話でも起こり得るものですが、「みんながそう言っている」、「みんなが使っている」と子どもが口にしたときに、流されてしまわないように注意したいところです。
同様に、子どもが「〇〇君もそうだよ」などと口にしたからといって、そのまま受け入れず、それが事実なのかどうかを確認してみてください。本人に悪気がないことも多いものですが、それが事実ではなく、子どもの勝手な思い込みや、「〇〇君もそうだといいな」といった本人の願望を言葉にしていることもあります。
同じ事象を目にしても、子どもと大人では別々の物差しを使って認識しています。子どもが口にすることを鵜う吞のみにしてしまうのは、リスクに対する備えが甘くなると思いましょう。
だからといって大人の物差しで評価しない
あなたは、自分の子どもに「もう中学生(高校生)だから〇〇しなさい」などと声をかけることはありませんか? では、何を期待して、このような言葉をかけていますか。
子どもの1年と大人の1年では、時間の進み具合が全く違います。子どもはカラカラに乾いたスポンジのようなもので、日々の行動、経験、自分に向けられる言葉・態度など、さまざまな要因を吸収しながら、日々変化していきます。
塾を営む私が特に実感することは、中学の3年間を見ても、成長は子どもによりそれぞれです。半年でまるで別人になったかのような変化を遂げる生徒もいれば、3年かけて緩やかに成長する生徒もいます。
つまり、「中学生(高校生)だからこれができて当たり前」というのは、大人が勝手に持っている物差しでしかありません。大人の物差し、そして他者との比較で「これができた」、「これができない」と子どもを評価するのは適切ではありません。
比べるのは、これまでと今日の違い。過去のその子自身と比較して、何ができるようになったのかを考えましょう。これを意識すると、自分の持つ物差しや、ほかの子どもと比較して落胆するようなこともありません。親自身の心の重荷も、少しだけ軽くなると思いますよ。
1つ、私の生徒の実例をご紹介します。生徒C君はスマホのオンラインゲームを楽しみつつも、彼なりに時間を区切って勉強に取り組んでおり、中3の1学期の通知表結果は、決して悪いものではありませんでした。むしろ、中2のときよりも、5教科で「4」も伸びていたほどです。
しかし、家での学習時間や勉強への取り組み姿勢は、お母さんが理想とする「中3受験生の勉強姿勢」とはかけ離れたものでした。お母さんは何度も「スマホばっかり触ってないで、もっと勉強しなさい」などと注意しましたが、C君の態度には変化が見られず、とうとう頭にきて、強引にスマホを取り上げたそうです。
お母さんは、スマホを取り上げさえすれば勉強すると思っていましたが、実際は違いました。スマホを取り上げたら、今度は今まで見ていなかったテレビを見たり、漫画を読んだり、ソファでぼんやり過ごしたり……。メリハリをつけて勉強していたときよりも、かえって学習量が減ってしまいました。それもそのはず。彼にとって娯楽であるスマホがなくなることで、別の娯楽へ移動しただけでした。
世間一般の「中3受験生」のイメージと比べるのではなく、中2のC君と比べてどこがどう伸びたかを見ていれば、「スマホを触ってばかり」ではないと気づいたのではないでしょうか。大人の持つ物差しに無理やり当てはめようとした結果、C君のお母さんには、スマホが悪者のように見えてしまったのかもしれませんね。
高校進学後、このお母さんはこういった態度を改善し、良好な親子関係を構築。C君は進学したいと思った大学に進学しました。
「視覚化」して認識を共有する
「あなたはゲームしてばかり」
「いつもスマホを触ってる」
子どもに注意をするとき、こんなふうに言っていませんか? 私たちは往々にして“いつも“や“ばかり“という言葉を使ってしまいがちです。でも、言われた子どもは「“いつも“じゃないよ!」と反論していませんか?
“いつも“も“ばかり“も「常時」という意味で使っていると思いますが、深刻な依存症でもない限り、24時間ずっとゲームをしているとか、食事中も入浴中もすべてにおいてスマホを触っているということはないでしょう。
つまり、“いつも“も“ばかり“も、非常に感覚的な言葉として使われています。そうです。これも大人の物差しで長短が決められているのです。そして、子どもは子どもの物差しで「“いつも“じゃない」と反発するわけです。
互いに異なる物差しを持って言い合いをしても、溝は深くなるばかりです。ルールをつくるときは、この親子の認識の違いをすり合わせる必要があります。ここで効果を発揮するのが、視覚化です。
ここでいう視覚化とは、ゲームで遊んだ時間やスマホの利用時間をグラフなどに表すことです。グラフは帯グラフが便利です。100 円ショップで売っている簡単なスケジュール帳などでも構いません。
子どもと一緒に、スマホの「スクリーンタイム」を見ながら、帯グラフに記入してみてください。1日にどれくらいの時間をスマホやオンラインゲームに費やしているのかはっきりします。また、全体量だけでなく、「この時間帯が最も長時間スマホを使っている」といった行動特性も明確になります。
私も、「大体」、「まぁまぁ」、「少し」といった言葉を使う生徒には、具体化や視覚化を提案します。視覚化することで、「あれ?そこまで心配するほどもないか」と、親がホッとすることもありますが、大抵は「こんなに使っていたのか」と感じることが多いでしょう。
例えば、子どもが1日2時間オンラインゲームで遊んでいたとしましょう。2時間を「長い」と捉えるか「短い」と捉えるかは、測る物差しによって異なります。
しかし、大事なことは「2時間」という利用実態を知ることです。「今日は1日2時間オンラインゲームで遊んだ」という事実を親子で共有したうえで、「2時間ゲームをするのは、どうだろう? 学校の課題をする時間はとれている?」などと話し合ってください。
すると、「学校の課題をする時間を確保したいから、オンラインゲームで遊べるのは1日1時間まで」となるかもしれないし、「平日は1時間を限度にするけれど、土日は2時間まで遊んでもよい」といった着地点が見いだせるかもしれません。
野本一真著『スマホの与え方・使い方の教科書』(産業能率大学出版部)
<あなたは子どもにスマホを安易に渡していませんか?>
子どものスマホ保有率は、この10年間で急上昇しました。それに伴い、子育ての新たな悩みとなったのが「スマホ問題」です。
小学校高学年、中学生、高校生のお子さんをお持ちの方、こんな悩みはありませんか?
「スマホのルールをつくりたいけれど、どうやって決めればいいのだろう?」
「ルールはつくったけれど、子どもが抜け道を探り、守られていない」
スマホは便利な道具です。しかし、親が正しい知識を持つことなく与えてしまうと、SNSトラブル、ゲーム依存、高額課金、睡眠不足、過剰な推し活・投げ銭など、大切な子どもの安全を脅かすものになってしまいます。
本書では、「子育て共育アドバイザー/学習塾塾長」である著者が、インターネットのしくみ、スマホが与える子どもへの影響、具体的なスマホルールのつくり方、ルールを守るために必須の親子関係構築のための「子育て共育7つの法則」をお届けします。
