AI時代は「好かれる子」が強い!優秀なだけでは活躍できない決定的な理由
AI時代が進む中で、これからますます価値が高まるといわれているのが、「この人と一緒に働きたい」と思われる力です。子どもたちはこれから、どんなコミュニケーション能力を身につけるべきなのでしょうか。
フューチャリスト・友村晋さんの著書より、分断が進むAI社会に必要な能力「ソーシャルスキル―人と人をつなぐ力」についてご紹介します。
※本稿は、『わが子に教える AI時代に必要な7つの能力』(友村晋/日経BP)から一部抜粋・編集したものです。
「ソーシャルスキル―人と人をつなぐ力」の定義
相手の気持ちや立場を理解して、上手にコミュニケーションを取る能力のこと。この人と一緒に働きたいと思われる能力、または人と人をつなぎ、不特定多数の人がいるチームをまとめる能力のこと。
好かれる人の価値がますます高まる
これからの社会でソーシャルスキルが必要な理由は大きく2つあります。
1つ目は、AIの力で人間の能力のコモディティー化(一般大衆化)が進みます。
そうすると、先ほどのスピークアップとは別の視点で、社会人としての付加価値が高まるのが、「人に好かれる人」です。
ちょっと拍子抜けしましたか? でも、考えてみてください。誰かと一緒に働くとき、もし能力や技術がコモディティー化して同じようなレベルの人たちの中から一緒に働きたい人を選びなさい、と言われたらどうしますか?
そうです。好感を持てる人を選びますよね。わざわざ苦手なタイプや嫌いなタイプを選ぶ人は少ないでしょう。
なにしろ僕たち人間はAIやロボットと違って感情があります。ですから、コミュニケーションがうまくて人に好かれる人、一緒にいて楽しい人が、人材としての価値を高めるんです。
起業家でエンジェル投資家のけんすう(古川健介)さんが、AIエンジニアで起業家、SF作家、そして参院議員でもある安野貴博さんとの対談の中で、次のように言っています。
「AIの登場で『性格がいい人』の価値が上がった、ということです。『この人と働きたい』という要素がより重要になってきた反面、『仕事はできるけれど性格が悪い人』は、急速に消えていっていますね」(『チームみらい・安野貴博× けんすう対談 「AI時代を楽しく生きられる人」の条件とは?』THE21ONLINE)
全く同感です。これまでは「あの人は性格は悪いけれども、この仕事に対する技能が高いので、我慢してお願いするしかない」と判断してきましたが、その仕事がAIによって代替、もしくはAIを使えば誰でもできる仕事へと変わったとき、無理して「性格が悪いあの人」に頼む必要がなくなるんですね。
つまり、これからは人に好かれるソーシャルスキルの高い人が人材としての価値を高めることができるんです。
分断が進む社会
そしてソーシャルスキルがこれからますます重要になる2つ目の理由は、社会の分断がますます進み、その分断をつなぎ合わせるちょうつがいのような人の価値が高まっていくからです。
職場でも仕事の分業が進んだり、働き方が多様化してきたりして分断が進んでいますが、分断が進んでいるのは職場だけではありませんよね。私生活においても同じマンションの人と挨拶しなくなっていたり、収入格差が大きくなれば「あの人たちとは住んでいる世界が違う」って接触する機会がなくなったりしていませんか?
子どもを持つようになった皆さんは、そういえば近頃の世の中は自分が幼かった頃に比べて人と人との距離が遠くなったな、と感じる瞬間がありませんか?
僕自身はそのことをとても感じているんです。僕が小学生だった頃は、近所の公園などで悪さをすれば、近所のおじさんに叱られましたし、逆にごく自然に近所の家でおやつやご飯をご馳走になったりしていました。その地域に不審な人物が侵入してくれば、地域の人たちが警戒してくれました。
もっと前の世代の人たちの時代にはより地域内の付き合いが濃厚だったようです。例えばビートたけしさんはテレビで、自分が子どもの頃は映画『ALWAYS 三丁目の夕日』(原作は西岸良平氏の漫画『三丁目の夕日』)で描かれたように、近所の人が勝手に家に上がり込んでその家の人たちと一緒にテレビでプロレスや野球を観戦したり、そのまま夕食をご馳走になったりし合うのが当たり前だった、と言っていました。僕の子ども時代でも、子どもたちはご近所さんたちで一緒に育てていたようなものでした。
ところが現代は、隣の住人がどんな人で何をしているのかも知らない、ということも意外なことではないでしょう。では、なぜこのような分断が進んでしまったのでしょうか。理由は1つではなさそうですね。
まず、文明が進化したことで、人生の選択肢が増えましたよね。商品やサービス、ライフスタイルなど、あらゆる選択肢が増えました。働き方も正社員だけでなく、フリーランスや派遣、パート、アルバイトなど様々な立場の人たちが職場にいます。就業形態も通勤だけでなくフレキシブルやリモート、メンバーシップ型、ジョブ型、プロジェクト型、ハイブリッド型があります。職業も1つとは限らず副業や複業といった言葉も使われるようになりました。
食事の内容でも選択肢が増えています。大ざっぱな捉え方ですが、昔の日本は米を中心とした和食を食べていましたが、いつしか中華やイタリアン、エスニックなどと選択肢が増えています。さらにベジタリアンやファストフード、グルテンフリーかそうでないかとまだ枝分かれも続きます。
そして自分はパスタ派だ、あるいは断固として米派だ、いいやパン派もいるぞ、と特色が出てきます。
しかし、このように選択肢が増えただけではそう簡単に分断にはつながりません。多様性が進んだだけにすぎませんよね。お互いを尊重すれば済む話です。
フィルターバブルとエコーチェンバー
ところが、ここからが重要で、選択肢が増えた現代に、さらにテクノロジーが分断を加速させる要因の1つとして登場します。具体的にはインターネットの登場により、フィルターバブルに取り込まれる機会が増えてしまいます。
フィルターバブルとは、AIからの提案や検索エンジン・SNSのアルゴリズムが、ユーザーの好みに基づく情報を表示し続け、その結果、自分にとって都合のいい情報ばかりを見るようになってしまう現象です。結果として、異なる視点や多様な意見に触れる機会が減り、情報の偏りが生じてしまうんです。
その結果、米派の人たちは米がどれだけ優れた食品でそれ以外の炭水化物がどれだけ体に悪いかという情報の泡に包まれる(フィルターバブル)ことになります。一方でパスタ派の人たちは、パスタに好意的な情報の泡に包まれることになるんです。こうして米派の人たちとパスタ派の人たちはお互いを愚かだと見下すようになり、ここで初めて、分断が生じ始めます。
このフィルターバブルという概念を提唱したインターネット活動家イーライ・パリサー氏は、特にSNSが社会の分断の大きな原因になっていると警鐘を鳴らしています。
実際、SNSは新型コロナワクチンで起きた分断やアメリカのトランプ大統領を支持するかしないかでの分断も生じさせたと言われます。
また、フィルターバブルと同時に引き起こされる現象にエコーチェンバーというものがあります。ぜひセットで覚えてください。
エコーチェンバーとは、同じような考えや価値観を持つ人々が集まり、似た意見ばかりが共有されると、あたかもその意見が多数派だと勘違いしてしまう現象です。
このエコーチェンバーもまた、分断を加速させる可能性があると思っています。例えば、たまたま移民の人が犯罪を犯したというニュースに接して、これはけしからん、だから移民政策には反対だ、というようなSNS投稿をしたとします。するとその投稿にコメントやリプライが付いて、移民の犯罪に関するニュースや議論でタイムラインがにぎやかになってきます。
このように、自分の意見に賛同したり共感したりした人たちの投稿ばかりが跳ね返ってくる(エコーチェンバー)ことで、だんだん自分の意見が世の中でも主流になっているんだと錯覚し始めてしまうんです。
時々僕の講演会に来てくれる人の中に、友村さんのユーチューブを全部見ています!と挨拶をしてくれる人がいます。とてもありがたいことですが、それは危険なことでもあります。僕と似たような考え方の人のユーチューブ動画がお薦めに上がってくる頻度が増え、エコーチェンバー現象に陥ってしまう恐れがあるからです。だから僕のユーチューブを見たら、僕と反対意見の人のユーチューブや書籍にもしっかりアンテナを張りましょう。
『わが子に教える AI時代に必要な7つの能力』(友村晋/日経BP)
AIの浸透で、フェイクが増え、技術が答えを教えてくれ、情報も人も個性を失い、分断が進み、先人の知恵が役に立たず、お金を稼ぎにくく、変化が激しい時代がやって来ます。本書はこの現実を直視し、親が家庭で教育できる実践的な方法を提示します。学校が変わるのを待つのではなく、親が扉を開く。そのために必要な視点と手順が、具体な例とともにわかりやすく示します。
