宮沢氷魚さん「絵本に重ねた家族の思い出」危なっかしかった弟、母の読み聞かせの声

nobico編集部

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『すすめ、ウミガメ』は、真夜中の浜辺で生まれたウミガメのトゥーラが、弟を助けるために勇気ある一歩を踏み出す物語です。レイチェル・ブライトさんとジム・フィールドさんによる動物絵本シリーズの第7弾で、日本語版の翻訳を俳優の宮沢氷魚さんが担当しました。

宮沢さんが絵本の翻訳を手がけるのは、『ほしがりやのクジラ』に続き2作目。本作に描かれるきょうだいの関係は、宮沢さん自身の記憶とも重なるものだったといいます。

インタビュー後編となる本稿では、きょうだいとの関係、留学で踏み出した一歩、絵本にまつわる思い出について聞きました。

タイニーに重なった、きょうだいとの記憶

――今作は、トゥーラと弟のタイニーの物語です。宮沢さんにも弟さんがいらっしゃいますが、ご自身に重ねて読んだ部分はありますか。

【宮沢】いろいろと思い出しました。弟はマイペースなところがあって、作中のタイニーのように逆の方向に行ってしまい、「どこに行ったんだろう」となったこととか(笑)。

きょうだいの関係性で言うと、弟や妹は、兄の姿を見て、自分の力量よりも高いところを目指してしまったり、少し無理をしてしまったりするものです。上の兄弟の真似をしたがって、結構危なっかしかったりするじゃないですか。そういうところを常に気にかけながら、自分も生活していたなということを思い出しました。

――そのことをごきょうだいに伝えたりはされましたか。

【宮沢】いえ、伝えていないです。これを機に伝えてみようかな(笑)。

勇気を出して踏み出した、アメリカ留学

――トゥーラのように、宮沢さんご自身が勇気を出した経験はありますか。

【宮沢】高校を卒業して、アメリカの大学に留学した時は、結構勇気を出したなと思います。

僕はアメリカで生まれていますし、家族もいるので、完全に未知の世界ではありませんでした。それでも、住んだことのない場所に行き、新しい友達を作り、新しい環境で何かを学ぶことは、当時の僕にとってはかなり勇気のいることでした。

若さゆえの勢いもあったと思います。今の自分だったら、もしかしたらできなかったかもしれない、とも思いますね。

――勇気を出して留学してみた結果、どうでしたか。

【宮沢】楽しかったです。行ってよかったと思いますし、まったく後悔はありません。もちろん、何度も帰りたいと思ったことはありました。

でも、その時に出会った人たち、学んだこと、見てきた景色は、今の自分を作ってくれた気がします。あの時に勇気を出していなかったら、今の僕は全然違う自分になっていたとも思います。

この先も、勇気を出すチャンスがあるなら、当時のことを思い出して、一歩踏み出していければいいなと思います。



――作中では、トゥーラの勇気ある行動に、ほかの動物たちも影響を受けていく様子が描かれています。宮沢さんも、周囲から影響を受けた経験はありますか。

【宮沢】それは日々感じています。大作や難しい作品に挑んでいる同業者の姿、魅力的な作品に出演している仲間を見ると、すごく勇気をもらいます。どんな作品でも、そこに飛び込んでいくことには勇気がいると思うんです。

僕自身も何かに挑む時、一人だとやっぱり怖いです。そういう時にそばにいてくれるマネージャーさんやスタッフさん、家族、仲間の姿勢を見て、「僕もやらなきゃ」と思います。日々、周りの人たちからパワーをもらっていますね。

絵本は、親と子の記憶の中に残っていく

――以前のインタビューで、絵本は処分せずに持っておいてほしいとお話しされていました。今でも大切にしている絵本はありますか。

【宮沢】子どもの頃に読んでもらっていた絵本は、親が取っておいてくれて、今でも実家に残っています。『はらぺこあおむし』や『セサミストリート』、『ぐりとぐら』などですね。

絵本のいいところは、時間が経った時に、読み聞かせをしていた親の記憶にも、子どもの記憶にも残っているところだと思います。いろいろな人の記憶の中に、その絵本が残っていくんです。

僕自身も、子どもの頃に母に絵本を読んでもらっていた時の声や体温を、今でもうっすらと覚えています。そういう記憶は、これからもずっと残っていくのだと思います。

だから『すすめ、ウミガメ』も、前作の『ほしがりやのクジラ』も、皆さんの記憶の中と本棚の中に、長く残してもらえたら嬉しいです。読んでもらっていた人が、自分の子どもにも読んであげる。そういう形で受け継がれていったら嬉しいですね。

「小さな勇気」でも、大きな景色が見えてくる

――これから『すすめ、ウミガメ』を読む方に、メッセージをお願いします。

【宮沢】この作品は勇気を与えてくれる作品です。

ただ、僕自身も30代になって思うのですが、勇気を与えてくれるものは、自分がいい状態の時にはプラスになります。でも、自分がしんどい時やつらい時に「勇気を出しなよ」と言われても、なかなか出せないじゃないですか。「今は無理」「今は苦しい」と感じている方もたくさんいると思います。

この本は、もちろん勇気を与えてくれる作品です。でもそれは、大きな勇気だけではありません。小さな一歩、本当に小さな勇気でも、最後には大きな景色につながっていくことを、優しく寄り添いながら伝えてくれる作品だと思います。

誰が読んでも楽しめる本になっていますし、ぜひお子さんとも一緒に、この作品を共有していただけたら嬉しいです。

『すすめ、ウミガメ』
『すすめ、ウミガメ』(トゥーヴァージンズ)
文:レイチェル・ブライト,絵:ジム・フィールド,訳:宮沢氷魚

ベストセラー『ライオンのこころ』の大人気動物絵本シリーズ、第7弾!
『ほしがりやのクジラ』につづき俳優 宮沢氷魚さんが翻訳を担当。

真夜中の浜辺で生まれたウミガメたち。
動物たちの声援の中、海を目指してレースが始まります。
一番年上のトゥーラが先頭切ってゴールしようとしたそのとき、弟の姿が見えないことに気がつきます。危険な陸の方に向かっている弟を見つけたトゥーラ、危険をかえりみず行動をおこします。

小さなウミガメの姿が周りの動物たちの心を動かして......勝敗よりも大切なこと、どんなに小さな存在であっても、世界を変えるような力があることを伝える物語。