親が「体験」を与えても子どもの反応が悪い理由とは? 自発性を育てる戦略的「ほったらかし教育」
愛する我が子のことを思ってあれこれと手をやく親御さん達。一方で、共働き家庭では「うちはそれほど手を掛けられていないけど大丈夫かな……」と、後ろめたさを感じる親御さんもいるようです。
“手のやきすぎ” は子どもの自立を妨げるとも言われる中、いったいどのようにしていくのか正解なのでしょうか?『自分から学べる子になる戦略的ほったらかし教育』(ディスカバー・トゥエンティワン)で、子育ての新常識を提唱する 岩田かおりさんに話を聞きました。(聞き手・構成/一般社団法人Raise・宮本さおり)
管理してもお世話をしても、子どもの自発的な意志は育たない
タイトルに「ほったらかし」と書いていますが、親が何も手をかけなくても子どもが勝手に育って行くという夢のようなメソッドではありません。
ですが「戦略的にほったらかしにする」という所に価値があるということを伝えています。私はこれまでに7,000人以上のお母さんたちに話を聞いてきましたが、不安を抱えている親御さんほど、ある状況に陥っている人が多くいました。
1つ目は司令官スタイルで、子どものことを細部まで管理するタイプの親御さんです。親の側でいろいろな想定をし、その通りに行動させようとします。このタイプの親御さんは子どもが失敗してしまった時に「言われた通りにやらないからダメなのよ」と注意する人が多いです。
2つ目は、メイドスタイル。献身的に子どものお世話をするタイプです。
子どもの言動や顔色を常に見ており、不都合が起きそうな時には先回りして我が子が転ばないようにしていきます。
そして、この2つの合わせ技で子どもに接する方も見受けられました。しかし、残念ながらこういう子育てをしていると、子どもは詰め込む勉強も、自発的に探究する学びにも関心が向かなくなります。
親は大枠を決め、その中で子どもが自由に動く
「すべてを子どもに任せてしまえばいい」「放任でOK」というわけではありません。
戦略的ほったらかし教育とは、子どもが自然に学びたくなる家庭環境を親がつくったうえで、子どもを放任することです。
子どもに選択肢を持たせて、意思決定を任せていきます。例えば家族で出かける海水浴を思い浮かべてみてください。大海原を前に「どこまででも泳いでいいよ」とお子さんに伝えるとどうなるでしょうか。
「やった~!」とお子さんは喜んで海に飛び込むかもしれませんが、サメが生息するエリアに行ってしまったり、引き返す体力を残すことも忘れて泳いでしまい、溺れてしまう可能性もあります。
「ここまでなら自由に泳いでいいよ」という範囲を親の方である程度決めることが必要です。「戦略的ほったらかし」とは、大枠は決めるけれども、その中では子どもを自由に泳がせましょうということです。
環境を整えて自由に泳がせられるようになると、親は子育てがラクになりますし、机の上での勉強も、探究的な学びにも自発的に取り組む力が身につきます。
子どもの発達段階に合っていないのに、体験だけ与えると…
最近は「与えすぎてしまう」親御さんも見かけます。探究心を育てようと、あれこれと体験的な学びをさせる方です。しかし、子どもは段階的に発達していきます。いくらよいものを与えても、そこ子の発達段階に合っていなければあまり意味を持ちません。
ある時、こんな保護者の方がいました。小学6年生のお子さんが新しいことにチャレンジする気がほとんどなくて心配だということでした。「本人が望まないのに、いろいろな体験を与えすぎてしまったのかも」と、悔やまれているようでした。
心理学者エリク・ホーンブルガー・エリクソンは、人間の発達段階には8つの段階があると説いています。例えば、0歳~1歳半の発達課題は「基本的信頼」の段階で、愛着形成が重要なタイミングだと言っています。この時期に周囲の人との信頼関係を築くことを飛ばして他の事に力を入れると何かしらのエラーが起きてしまいます。事例で出した家庭の場合、もちろん親はよかれと思っていろいろなことを与えてきたのですが、それがお子さんの発達段階にそぐわなかった可能性がありました。
いろいろな体験を与えることは 無意味ではありませんが、多ければ多いほど良い訳ではありません。最も大切だと思っているのは子どもが自らやりたくなる環境を整えることです。
ここで一つ、わが家が実際にやっている子どもが自ら勉強に向かう「仕掛け」を紹介します。
宿題やる、やらない問題も自分で始める”仕掛け”で乗り切る
宿題をやらせるのに苦労しているという家庭が多くありますが、わが家では、「やらせる」のではなく自分からやるように仕掛けを作っていきました。宿題をする時間になったら飴や頂き物のちょっと上等なクッキーなどを机に出して「おやついる人~」と、子どもたちを誘います。
そして、おやつの後は、勉強タイム。私も何かしらの勉強をするようにしていました。これは読書でも構いません。親が勉強する姿を見ると、子どもも「あ、今は勉強タイムなのか」と察して、自分の宿題をするようになりました。
部屋の明かりを味方につけていました。照明にはゆったりした気持ちにさせてくれる暖色系の色味と、本の文字などがはっきり見える寒色系の色味があります。勉強タイムは暖色系の照明から寒色系に照明に切り替えます。
気持ちの切り替えに照明はとても役に立つ仕掛けでした。このために、わが家では色味の切り替えができる照明に取り替えたほどです。
照明の交換は数万円でできます。たった数万円の投資で子どもは自発的に勉強ができるようになり、親のガミガミする時間が減るのですから、こんないいことはありません。
わが家ではこの時、スイッチを押すのも子どもたちにお願いしていました。
私は「勉強しなさい」とは言いません。
「そろそろ勉強タイムだね。スイッチ押してやぁ~」
と、伝えるだけです。
これを繰り返した結果、「スイッチを押す=勉強タイム」という認識が子どもたちの中に定着しました。結果、子どもたちは私が「宿題をしなさい!」と言わずとも、勉強に向かうようになりました。
親があれこれと直接声をかけてやらせるよりも、本人が考えられるようにする問いや、仕掛けをちりばめていけば、自分からやる子に育ちます。
今回お伝えしたやり方はあくまでも参考です。ご自身の家庭にあったやり方にアレンジして実践してみてください。