クマに出遭ってしまったら?「万が一」に命を守るための正しい対処法

山﨑晃司,山中正実
2026.09.03 09:32 2026.09.03 11:50

熊/クマ

ハイキングやキャンプで気になるのが、クマとの遭遇です。もし目の前にクマが現れたら、どうすればいいのでしょうか? 「一刻も早くその場を去りたい」と思うかもしれませんが、実はクマから逃げるときに、走るのはNG。クマとの距離によっても、とるべき行動は変わります。

子どもにもしっかり伝えておきたい、クマとの距離に応じた対処法について、山中正実先生の解説をご紹介します。

※本稿は、山﨑晃司(編著)『クマに出遭ってしまったら?』(PHP研究所)より一部抜粋、編集したものです。

クマとの距離が離れているとき

クマとの距離が100m前後かそれ以上に離れている場合、クマが気づいていないようなら、ゆっくり静かにその場を離れるべきでしょう。人の存在に気づかないまま、クマが自分の方向に近づいてきているようなら、ゆっくり大きく腕を振るなどしてこちらに人がいることを知らせます。それでも気づかないようなら、静かに優しく声をかけてみましょう。人がいることに気がつけば、ほとんどの場合、クマのほうから逃げていくはずです。

【POINT】
●遠くにクマを見つけたら、ゆっくり静かにその場を離れる。
● クマが近づいてきていたら、大きく腕を振るなどして刺激しないように人の存在を知らせる。

クマとの距離が近いとき

クマとの距離が50m前後かそれ以内と迫っているとき、まずは落ち着いてください。決して大きな声を出してはいけません。急に動いたりしてもいけません。クマを驚かせたり興奮させたりしないように細心の注意をはらいましょう。その場に複数の人がいるときは、バラバラに逃げたりせず必ず集まりましょう。クマのようすをよく見ながらゆっくりとあとずさりして距離をあけます。

絶対にしてはならないのは、走って逃げることです。走って逃げると、クマの追跡行動を誘発し追いかけてくる危険性が高くなります。

クマが立ち上がるのは、攻撃態勢になったわけではありません。高い視点からきょろきょろとあたりを見回したり、鼻を上げてにおいを嗅いで、何者がいるのかと確かめようとしています。ゆっくりと大きく腕を振り、静かに声をかけ、人がいることを知らせましょう。人だと気づけば普通はクマのほうから逃げていきます。

【POINT】
●大きな声を出したり、急に動いたり、走って逃げたりしてはいけない。
●クマのようすを見ながらゆっくりあとずさりして距離をとる。
●複数人いるときは必ずまとまって行動する。

【執筆者】
山中正実(やまなか・まさみ)
北海道大学大学院獣医学研究院野生動物学教室 客員研究員
1959年生まれ。山口県周南市出身。北海道大学でヒグマ研究グループに所属し、知床をはじめ北海道内各地でヒグマや海獣類の生態調査を行なう。1987年以来、知床の自然環境の保全管理にあたる知床財団の設立から関わり、統括研究員・事務局長として同財団の中枢を担った。また、知床世界自然遺産の登録にいたる活動を主導した。2012年から2018年には、知床博物館館長としても勤務。博士(人間科学)。

山﨑晃司

山﨑晃司

茨城県自然博物館館長。東京農業大学名誉教授。
1961年東京都調布市出身。 森林動物生態学が専門。東京農工大学連合大学院博士(農学)。ザンビア国立公園局野生動物調査官、東京都高尾自然科学博物館学芸員、茨城県自然博物館首席学芸員、東京農業大学地域環境科学部教授を経て、茨城県自然博物館館長。元日本クマネットワーク代表、元International Association for Bear Research and Management 理事、IUCNクマ専門家委員会委員、東京都自然環境保全審議会鳥獣部会長、千葉県環境審議会鳥獣部会長、環境省鳥獣保護管理プランナーなどを務める。著書に『日本のクマ』(東京大学出版会・共編著)、『ツキノワグマ すぐそこにいる野生動物』(東京大学出版会)、『ムーン・ベアも月を見ている』(フライの雑誌社)、『クマとともに』(東京大学出版会・共著)など。

クマに出遭ってしまったら?

山﨑晃司(編著)『クマに出遭ってしまったら?』(PHP研究所)

クマに出遭ったら、どうすればよいのか。日本のクマ専門家たちが、クマに出遭わない工夫からクマに襲われたときの防御法までを解説。