戦争を終わらせるのは「偉い人」だけじゃない? 学校のもめごとでわかる社会を動かす仕組み
平和をつくるために必要なのは、トップ同士の話し合いだけではありません。対立する人たちをつなぐ「真ん中」と、地域で実際に動く「一番下」の存在があってこそ、社会は少しずつ変わっていきます。
学校のもめごとを例に、「三つの立場」が社会を動かす仕組みと、私たち自身にできることを考えます。
※本稿は、瀬谷ルミ子 (著)『ノンフィクション 戦争は終わらない? 武装解除・紛争予防の現場から』(Gakken)より一部抜粋、編集したものです。
三つの立場が、社会を動かす
戦争や争いを終わらせるには、三つの立場が必要です。ピラミッド型の、一番上、真ん中、一番下です。みなさんのまわりの問題や、日本の社会を変えるときにも同じことが当てはまります。
例えば、クラスで大きなもめごとが起きたとします。一番上の立場にいる校長先生や親は話し合って、ルールを決めます。
でも、どんな立派なルールをつくっても、クラスの子どもたちが「自分たちには関係ない」と感じていたら、もめごとはなくなりません。
一番下の立場では、クラスの子どもたち自身が動きます。でも、子どもたちだけががんばっても、それが学校のしくみに反映されなければ、限界があります。
真ん中の立場では、担任の先生や相談員が、校長先生とクラスをつなぎます。上で決まったことをわかりやすくクラスに伝え、クラスの声を上にとどけるのです。
これら三つの立場がかみあってはじめて、もめごとは解決していきます。
戦争と平和も、同じです。
一番上の立場で行われるのは、政府や国連による「公式な話し合い」です。大統領や首相が交渉のテーブルに着いて、停戦の合意を結ぶ。
ニュースに出てくるのは、たいていこの話です。でも、一番上の話し合いは、うまくいかないことが多いです。国のトップは自分を応援する人たちの手前、弱いすがたを見せにくいからです。
一番下の立場では、地域に住む人々―女性、若者、長老たちなど―が動きます。人数でいえば、三つの立場の中で一番多いのがここです。世界各地でリアルズが育成している人たちは、ここにあたります。
そして真ん中の立場は、リアルズのようなNGOや市民団体が担う役割です。この真ん中の立場が、上と下をつなぐ橋として次の三つの役目を果たします。
①対立する集団が表では言えない本音を話し合える場をつくり、表に出ない場所で、おたがいが「ここまでなら受け入れられる」という糸口をさぐること。そこで見つかった方法を、一番上の公式な話し合いにとどけます。上の交渉が行きづまっているとき、真ん中が準備してきた解決策が「助け舟」になるのです。
②上で何が起きているかわからず、あおられやすい住民に対して、わかりやすく伝え、落ち着いて考え行動できるように支援すること。
③地域の人たち自身が平和のために動ける力を育てること。その人たちの一部が、やがて真ん中や上の役割も担えるようになっていきます。
そして、もうひとつ。真ん中の立場には大きな強みがあります。一番上の話し合いが止まって動かないときも、一番下で緊張が高まっているときも、真ん中の立場は動き続けることができるのです。
上や下の状況に左右されず、静かに準備を続ける。そして、上が動き始めたタイミングで、すぐに反応することができるのです。
ニュースを見ていると、国のトップが話し合いをして、うまくいかないと「もう終わりだ」と感じることがありませんか?
でも、それはちがいます。一番上がうまくいかなくても、あきらめる必要がないのです。真ん中と一番下が動いていれば、平和の火は消えません。
そして、一番下を動かす力は―みなさん自身も、もっているのです。

瀬谷ルミ子(著)『ノンフィクション 戦争は終わらない? 武装解除・紛争予防の現場から』(Gakken)
中東・アフリカで四半世紀にわたって活動を続ける瀬谷ルミ子さんの半生と活動を紹介する、児童向け読み物。現地の政治家や兵士、傷ついた地元民たちにどのように向き合い、平和を構築していったのか。武装解除、難民の退避支援、そして紛争の予防をどのように実現していくのかがわかる一冊です。
「いのる平和」から「つくる平和」に向かって、戦争を具体的に考え始めるためのノンフィクション。






























