担任も気づかなかった小5娘の孤立…「今日も楽しいこと何もなかった」という口癖の裏側

熱海康太
2026.10.08 11:07 2026.10.08 19:00

膝を抱えて落ち込む小学生

元公立学校教員として多くの子どもたちと向き合い、現在は一般社団法人日本未来教育研究機構代表理事を務める熱海康太氏は、「誰も悪気なく、けれど結果として一人を除いた形で会話が進んでいく状況は、大人にとっても対応の糸口を見つけにくい」と語ります。担任にも気づかれなかった小5娘の孤立に、母親が使った問いかけとは。(写真はすべてイメージです)

教室の中で、存在だけが少しずつ透明になっていった

はっきりとした暴言や暴力はないのに、なぜか会話の輪にだけ入れてもらえない。小学5年生の娘のこの状態は、担任にも長い間気づかれていませんでした。

誰かがはっきりと悪口を言っているわけでも、物を隠されているわけでもありません。ただ、教室の中で娘の存在だけが、少しずつ透明になっていくような、そんな状況が続いていたのです。

母親が異変を感じ始めたのは、娘が「今日も楽しいこと何もなかった」という言葉を、あまりにも頻繁に繰り返すようになったことがきっかけでした。何もなかったという言葉の裏に、何かが確かにあるはずだという直感を、母親は拭えずにいたのです。

参観日に教室の様子を見ても、娘は特に孤立しているようには見えません。周りの子と同じ班にいて、同じ活動をしています。それでも、会話に加わる回数だけが、他の子と比べて明らかに少ないことに、母親は気づいていきました。

誰かが娘に意地悪をしているわけでも、露骨に無視をしているわけでもない。ただ、娘が話に加わろうとするタイミングで、いつも会話が別の方向に流れていってしまう。そんな場面を、母親は何度も繰り返し目にすることになったのです。

この現象に名前をつけられないまま、母親はしばらくの間、自分の感じている違和感が正しいのかどうかさえ、確信を持てずにいたといいます。

攻撃のない孤立という形

サイレントいじめと呼ばれるこの状態は、明確な攻撃行動がないため、いじめの定義に当てはまりにくく、教師のアンケートでも発見が難しいという

熱海康太

熱海康太

  • X

大学卒業後、神奈川県の公立学校で教鞭を取る。 教育実践において厚木市教育委員会から表彰を受けるなど活躍。しかし、勘と根性に任せた指導法に限界を感じ、国立大学付属小学校で多くの教育論や教育実践を学ぶ。 学びを体系化することで、学級や学校は安定し、『先生の先生』を行うことも増えた。その後、教員や保護者、子どもたちのための本を執筆するようになる。 常に先端の教育理論や教育実践を研究している。