娘の身体の成長が平均より早い…「思春期早発症」をあえて治療しなかった理由と親の葛藤
二次性徴が平均より2〜3年早く始まる「思春期早発症」。ふらいと先生こと小児科医・今西洋介先生の娘さんが思春期早発症と診断されたとき、娘さんはショックを受けて大泣きしたそうです。最終的にふらいと家が選んだのは、「すぐに治療を始めない」という選択でした。
思春期早発症とどう向き合うのか。親子の対話と葛藤の記録を、ふらいと家のママの目線で紹介します。
※本稿は、今西洋介著『うちの子発育が早いかなと思ったら読む本』(日東書院本社)より一部抜粋、編集したものです。
ふらいと家の思春期早発症。 治療について話すと長女は大泣き!
──ふらいと妻さん(大阪府・女性・39歳)
私は助産師で、夫が小児科・新生児科の医師。子どもの身体の変化についての知識があったので、長女の胸のふくらみと陰毛に気づいてすぐに、受診を決めました。何より心配だったのは、脳腫瘍です。受診したのは子ども病院で、検査は順調に進みました。心配した頭部MRI検査も機械の入口がカバの口になっていて、中ではアニメが流れていたので、長女にとっては楽しい時間になったようです。
検査の結果、脳腫瘍の可能性が否定され、親子で胸をなで下ろしました。私は、思春期早発症と診断されたからには治療をするものだと思っていました。最終身長と、それによる将来の妊娠・出産への影響が気になっていましたし、長女はもともと感覚過敏があり、ブラジャーや生理ナプキンの違和感に耐えられないのではないかという心配もありました。夫も、治療をしないという選択肢は考えていなかったようです。
ですが、治療について長女に話すと、大泣きしたのです。ちょうどテレビで大きな事故の報道を見ていたこともあり、自分と重ね合わせてナーバスになっていたのかもしれません。大人からすれば、命にかかわる病気じゃなかったと安堵するものでも、子どもにとっては「たいへんな病気になっちゃった!」とショックだったのでしょう。そんな長女の気持ちを尊重しながら、あらためて医師に治療について聞いたところ、最近の研究では、治療してもしなくても最終身長に差がないという説もあるのだとか。医師は、「治療はいまじゃなくて、あとからはじめることもできるよ」「生理が来てから考えてもいいんだよ」とも話してくれました。
それでも、長女から将来「どうしてあのとき治療をさせてくれなかったの」と言われたら……と悩みました。ですが、大事なのは娘の意思です。話し合った結果、ひとまずは治療をしないと決め、その後は2、3カ月に一度通院し、経過観察してもらいました。
生活面では案の定、ブラジャー探しに苦労しました。サイズが合わない、感覚過敏があるのでストラップが気になる、肌当たりがイヤ。何枚も試し、ようやく落ち着くものが1種類だけ見つかりました。ナプキンも同様です。4年生の後半に初経を迎えましたが、合うものを探してあれもこれもと試すうちに、家がナプキンだらけになりました。これもまた、ひとつだけ合うものに出会えました。体毛については、夏場に長女がタンクトップで出かけようとしたところ、わき毛が目立っていたので、さっと剃ってから送り出したことがあります。
気をつけていたのは、長女が自身の身体に否定的なイメージをもたないようにすることです。ですから、私から先回りして「お友だちに何か言われるかもね」と伝えたことはありません。大人からそう言われることで、かえって「私は何か言われるような身体なんだ」と意識させてしまう気がしたからです。そうではなく、もし心ないことを言われたなら、いつでも私たち親に相談できる空気を作っておくほうが大事だと考えました。次女が、「お姉ちゃん、ナイスバディだね!」と姉の胸のふくらみを肯定的に言うのには、救われましたね。長女も、うれしかったようです。
小学校の保健の授業で二次性徴について学んだとき、長女はほっとしたそうです。「自分だけじゃなく、みんなに思春期がきて身体が変化するんだ」と実感できて、安心したのでしょう。長女は、人より早く思春期を迎えました。でもそれは、決して特別な成長ではない。そのことを、親の私もあらためて教えられた気がしています。
今西洋介著『うちの子発育が早いかなと思ったら読む本』(日東書院本社)
思春期早発症のお子さんには次のような兆候が現れます。
□小学校の低学年(6~10歳)で身長が急激に伸びる
□小学校の低学年(6~10歳)で体毛が濃くなる
□小学校の低学年(6~10歳)で胸がふくらむ
□小学校の低学年(6~10歳)で声変わりの予兆がある
□小学校の低学年(6~10歳)で初経がくる
思春期早発症は、それ自体が命に関わる病気ではありません。
しかし、思春期早発症のことを「知らない」ばかりに治療の選択肢を失ってしまうと、後々の後悔につながることもあります。
また、まれに脳腫瘍などの重大な原因が潜んでいることもあり、放置はおすすめできません。
ただ、残念なことに、せっかく受診しても「発育は個人差です」「様子を見ましょう」と言われて、治療の機会を失ってしまうこともあるようです。
本書では、お子さんと家族のための「思春期早発症」の基礎的な知識と役立つ情報をお届けします。
お子さんの“早すぎる発育”に「あれ?」と思ったら、ぜひ本書をお読みください。
