夏休みの間違った努力で算数の成績が下がる?「ドリルを一通り解く」学習法がNGな理由

「ドリルを一通り解いて、間違えた問題だけをあとからやり直す」。一見、正しく見えるこの学習法ですが、多くの受験生を見てきた中学受験のプロである迫田学さんは、「このやり方ではむしろ『間違えるクセ』がついてしまう」と指摘します。
代わりにどういった学習をすると良いのでしょうか?
中学受験生におすすめの勉強法を、『中学入試 計算のスペシャルルール』(かんき出版)の著者でもある迫田さんに解説していただきました。
秋の過去問演習で「不必要な遠回り」をしないために

夏休みに入ると「とにかく勉強量を確保しなければ」と焦り、応用問題の克服や記述対策など、配点が高く目立つ課題に目が行きがちです。
しかし、秋以降に伸び悩むお子さんの多くは、実は応用力不足ではなく「計算の土台が固まっていないこと」が原因になっています。
とくに6年生は、9月からの過去問演習に入ると、もう一度基礎に戻る時間は取れません。計算ミスによる失点を繰り返すと、本当の弱点が見えなくなり、演習を進めているはずが基礎のやり直しに戻るという不必要な遠回り(二度手間)が生じてしまいます。
算数において計算力はすべての学習を支える基礎工事です。本格的な演習期に入る前に、計算を安心して任せられるレベルに仕上げておくことが、秋からの学習をスムーズに進める鍵となります。
「ドリルを一通り解く」が間違えるクセをつくる?
ここで、日頃の家庭学習を振り返ってみてください。
「ドリルを一通り解いて丸付けをし、間違えた問題だけをあとからやり直す」
一見すると真面目な学習法ですが、実はこれが知らず知らずのうちに「間違えるクセ」を身につけさせてしまうことがあります。
なぜなら、「あとで直せばいい」という前提で解いていると、子どもの脳は無意識に「一度で正確に解き切らなくていい」と学習してしまうからです。1問ずつ切り離して考える習慣がつくと、本番のように「最初から最後まで一度で正確に解き切る」という意識が育ちません。
テストや入試ではやり直しの時間はありません。普段から「あとで直せる」という意識で解いていると、本番でも集中力が甘くなり、「ミスをしても仕方ない」という解き方が習慣化してしまうのです。
一生懸命ドリルに向き合っているのにミスが減らない場合、サボっているのではなく「間違えてもいい解き方のフォーム」が定着しているのかもしれません。受験生はもちろん、低〜中学年のうちからこの「間違えるクセ」を家庭内で修正しておくことが大切です。
一発で正解する脳をつくる「2つのルール」
では、どうすれば「一発で正解する正しいフォーム」を身につけられるでしょうか。 効果的なのが「4問連動・一発勝負ルール」です。
1.1問間違えたら、ブロック(4問)ごとすべてやり直し

ノートの上に「4問で1つのブロック」という枠を設定します。もし3問目や4問目でたった1箇所でもミスが見つかったら、そのブロックの4問すべてを新しいページに書き直し、1問目から完全にやり直させます。
「最後まで気を抜くと最初からやり直しになる」という緊張感を持つことで、子どもは1問目の最初の一行から「絶対に間違えてはいけない」という高い集中力を発揮するようになります。
2. 「制限時間」を設定し、力技から「効率化」へ舵を切らせる

必ずタイマーをセットし、「時間を1秒でも過ぎたら不合格」というルールを設定します。
時間を意識することで、子どもは「ひたすら筆算を繰り返す」という力任せの解き方を諦め、「いかにラクに、速く正確に処理できるか」という計算の工夫(スペシャルルール)を探す脳へとアップデートされます。
模試では気づけない、入試問題が仕掛ける「時間泥棒の罠」

「塾の公開模試の計算問題ならいつもノーミスだから大丈夫」という油断も禁物です。塾の模試と実際の入試問題とでは、計算の設計が根本から異なります。
模試の計算問題は基本に忠実で、筆算を重ねる力技でも時間内に正解できる優しい設計です。そのため、自分の計算フォームがいかに非効率かに気づくことができません。
しかし、入試問題の計算は「言われた通りの手順で筆算を繰り返せば、それだけで5〜10分を消費してしまう」ように意図的に作られた『時間泥棒のトラップ』です。
求められているのは筆算のスピードではなく、式を見て「この数字を組み合わせれば一瞬で綺麗に整数化できるな」と解き方を見抜く力です。入試における計算とは、単なる計算力ではなく「複雑な仕組みを、工夫によっていかに美しく簡素化できるか」を試す高度な知能ゲームなのです。
中学入試が本当に試している大切な力

中学校側が算数の計算問題で見ているのは、単に「筆算を繰り返すだけの姿」ではありません。制限時間の中でプレッシャーに負けず、工夫してミスなく正確に解き切る「構造を見抜く力」や「リスク管理の力」を試しています。
秋からの過去問演習を100%活用するためにも、この夏休みは絶好の機会です。応用問題への焦りを一度脇に置き、親子で「1問のミスも許さない厳格なルール」のもとで最強の土台を完成させてあげてください。
確固たる土台と工夫の武器を手にして、自信を持って秋からの本番へ送り出してあげましょう。
迫田学著『中学入試 計算のスペシャルルール』 (かんき出版)
中学入試算数の土台となる計算力をつけるための1冊。
「正しい解き方」を言語化した「計算のスペシャルルール」を示し、すべての問題に正しい解き方の思考プロセス、途中式、約分まで省略せずに載せています。































