「学校に戻らなきゃ」と焦る前に。不登校の子どもに必要な居場所とは
「学校に戻らなければ」と焦るあまり、親も子どもも苦しくなってしまうことは少なくありません。しかし、本当に大切なのは、学校に戻ることだけではなく、子どもが安心して人とかかわれる居場所を見つけることです。フリースクールや学習支援センターなど学校以外の選択肢も視野に入れながら、子どもに合った環境を考えるポイントを紹介します。
※本稿は、植木希恵 (著)『不登校・行き渋り…タイプ別でわかる 「学校に行きたくない」と言われたときの親のかかわり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部抜粋、編集したものです。
環境を変えることを考えてみる
学校は行けるに越したことはないが…
私は個別指導塾を経営していますが、学校と同じようなカリキュラムや資源を用意することは到底できません。走り回れる校庭もないし、理科や家庭科、技術などの備品は高価なものや管理が必要なものも多く、そろえることができません。もちろんプールも、安全責任の観点から連れていってあげることができません。
そう考えると、学校という場所は価値のある資源がそろっているといえます。
学校は、系統立った学問から人間関係、社会のルールまでたくさんのデータを取り入れられる場所です。それらの、いわば「資源」を日本国に住む者の権利として享受するためにも、学校は行けるに越したことはないと私は考えています。
もちろん、一時的に学校に行けない時期があってもいいと思います。ただ、いつか社会に出るのであれば、どこかの段階で学校に行けるようになっておいたほうがいいと私は考えています。
学校には、大人も子どももいろいろな人がいます。先生たちは、いわば「これから出会う大人図鑑」。同じ人間であっても、たくさんのバリエーションがあると知ることで、その共通項や大まかな特徴、反対にそれぞれの違いを見つけるのが上手になります。
もちろん、いろいろな人がいれば、いろいろなことが起こるわけですが、人間は経験を積めば積むほど、そのときどきの状況に応じてどう対応すればいいのか、どのように考えればいいのかがわかるようになります。このように、あることに関してある程度データが集まった状態を「慣れた」と呼ぶのだと思います。
私は「学校に行けなくてもいい」と思っている子に、この20年間会ったことがありません。学校というのはコミュニティの象徴で、「家族以外の人とかかわること」の典型例です。
なので、学校でなくても、それに代わるどこかには自分のペースで行きたい、行ったほうがいいと、どの子も思っています。学校という場所とのマッチングがうまくいけば、ほとんどの子は学校に行きはじめますし、その次の社会人としての生活にも何かしらの形で入っていくことができています。
保護者のみなさんも、学校に行くことにこだわっているというよりは、学校でうまくやれないことで、将来社会からはみ出てしまってうまく生きられない子どもの姿をうっすらと思い浮かべて不安になり、焦り、なんとか子どもを動かそうとして失敗する、そして余計にこじらせるという状況に陥っているのではないでしょうか。
そう考えたら、もう少し高い視座で子どもを見て、学校ではないコミュニティでなんとかやっていくことを考えていくほうが建設的ですし、傷ついたりこじれたりすることも減るのではないかと思います。
今日学校に行くかどうかよりも、「今のこの子に少しでも合う社会的かかわりや、コミュニケーションができるところがどこかにないだろうか」という目線で考えるということです。
学校以外の選択肢は多いほうがいい
子どもが不登校になったときに、「学校に戻る」とか「不登校が短くすむ」という考え方や目標は、結局、子どもの選択肢が「学校に戻る」一択になっている状態です。
地域の学校に行くことだけにこだわっていると、本末転倒になってしまうこともあります。元の学校に戻ることにこだわりすぎてしまって、子どもがふさぎ込んで部屋から出られなくなったり、昼夜逆転になったりしたら、そちらのほうが影響が大きいですし、不登校が長期化してしまうこともあります。
そのため、まずは前述したように外的要因となるストレスを減らし、それでも難しいときは環境を変えるという方向で動くことをおすすめします。
不登校になると、地元の顔見知りと会うのを嫌がるようになる子も多くいます。よく知っている友だちや、全然知らない人は大丈夫でも、自分のことをたいして知らないのに何か言ってきそうな人たちが集まる地元の学校を怖いと感じるのです。そうすると、まず「顔見知りが怖い」をなんとかするところからはじめないといけません。
もちろん、そこからはじめて、少しずつ地元の学校に戻れる子もいます。けれど、地域を変えてフリースクールや公的援助機関に行くことで、多少人が怖いと感じても、会える人を増やしていった結果、子どもが主体的に次の進路を選ぶことができた例を私はたくさん見てきました。
植木希恵(著)『不登校・行き渋り…タイプ別でわかる 「学校に行きたくない」と言われたときの親のかかわり方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
本当にその子に合った、不登校・行き渋りへの向き合い方がみつかる。
――予約の取れない「不登校・発達障害個別指導教師」が教える、親子がラクになる「こころの距離感」のつくり方。
