戦争を終わらせる仕事って? 子どもに伝えたい、平和をつくる3つの仕事

瀬谷ルミ子
2026.08.20 13:53 2026.09.01 11:50
ソマリア
ソマリアで若者や女性、警察や現地団体に争いの予防の方法を伝える。(2010年)
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戦争や紛争のニュースを見て、「どうして終わらないの?」「助けられる人はいない?」と子どもに聞かれたら、どう答えますか?

世界には、戦争を終わらせ、争いを繰り返さないために働く人たちがいます。外務省、国連、NGO――それぞれの立場だからこそできる「平和をつくる仕事」を、紛争地で25年以上活動してきた瀬谷ルミ子さん(平和活動を行うNGO団体「リアルズ」理事長)の体験とともに紹介します。

※本稿は、瀬谷ルミ子 (著)『ノンフィクション 戦争は終わらない? 武装解除・紛争予防の現場から』(Gakken)より一部抜粋、編集したものです。

平和を「つくる」という仕事

瀬谷ルミ子さんは、戦争を終わらせ、二度と起こさないようにするための、「平和をつくる」仕事をしています。その主な内容を三つ紹介します。

ソマリア
アフガニスタンの武装勢力からミサイルや武器を回収し、破壊する。(2003年)


武装解除

武装勢力と交渉して武器を手放させ、元兵士に職業訓練を行って社会に復帰させる。

シエラレオネの元兵士
シエラレオネで、道路工事の職業訓練を行った元兵士たち。(2002年)

 

退避支援
武装勢力に狙われ、命の危険がある人を国外へ逃がす手助けをする。文字通り「命をつなぐ」ための、緊急支援といえる。

アフガニスタンから脱出するジャーナリスト
リアルズの支援でアフガニスタンから脱出するジャーナリストが、緊急手配した飛行機に乗り込む瞬間。一刻を争う中、脱出できる手段と受け入れてくれる国を確保することが、命をつなぐための鍵になる。(2021年)

 

紛争予防
同じ場所で争いがくりかえされないように、平和を担う人を育て、地域づくりを行う。

シリア2025年
シリアでは、水という共通のニーズをきっかけに、対立する集団が協力して給水施設を復旧・管理するしくみをつくる。(2025年)
南スーダン2016年
南スーダンでは、対立する民族が共同で野菜を育てる事業を通じ、共存を実現。(2016年)

平和をつくる、さまざまな組織と仕事

平和をつくりたい、戦争を終わらせたい─そう思って実際に動いている人たちは、どんな仕事をしているのでしょうか。

ここでは、私が実際に経験した三つの組織での仕事を紹介します。

一つ目は、外務省などの政府機関です。自分の国を代表して他の国と話し合い、争いをふせいだり、経済的な協力関係をきずいたりすることが主な仕事です。

私がアフガニスタンの大使館で働いていたときは、大統領や各国の大臣たちと交渉して、何百億円もの支援の使い道を考えることもありました。

「自分の決断が、この国の行く末を左右するかもしれない」
やりがいと、夜もねむれないほどのプレッシャーの両方がありました。ただ、資金や政策を決める立場なので、現場から遠くなりがちで、自分の仕事が実際にどう役立っているか実感しにくいこともあります。

二つ目は、国連(国際連合)です。第二次世界大戦後、二度と世界規模の戦争を起こさないようにと1945年につくられ、今では世界のほぼすべての国にあたる193の国が加盟しています。大きな組織だからこそ動かせる資金やつながりがあります。

でも、加盟するすべての国の意見をまとめなければいけないので、それぞれの国の思惑がからむと、紛争地でこまっている人がいてもなかなか動けないことがあります。私もくやしさを感じたことがあります。それでも、世界中の国がつながっている場所は今のところ国連しかありません。

三つ目は、NGOです。政府でも国連でもない、市民がつくる団体で、私が理事長をつとめるリアルズもそのひとつです。医療、教育など、団体ごとに活動の目的を自由に決めて動けます。

外務省や国連ほど大きなお金を動かせることは少ないです。でも、紛争地の人々によりそいながら、その場その場の必要に合わせて身軽に動けることが、NGOの強みです。そして、国連や各国政府が動けない場面でも、民間の立場でNGOだからこそ動ける場合があります。

アフガニスタンなどで戦争や混乱が起きたとき、命の危険にさらされている人々を救うために、リアルズは独自に動くことを決めました。日本の人たちの寄付を力に、1,900人以上に安全な場所に逃げるための支援をしました。

「日本に自分たちを救おうとしている人がいる」
その事実が、命の危険の中で一歩ふみ出す勇気になったと現地の人たちは言っていました。

この三つの他にも、JICAという日本の支援機関では技術や人材などをとどけています。また、企業が現地の雇用をつくったり、ジャーナリストが紛争地で起きていることを伝えたり、平和に関わる仕事はいろんな形でつながっています。

どの仕事を選ぶにしても、わすれてほしくないことがあります。どんなに名の知れた組織にいても、目の前でこまっている人の力になれなければ、意味がありません。

どんな組織にいるかより、目の前の人と本気で向き合い、問題を解決できるかどうか。それが、いちばん大切なことだと私は思っています。

瀬谷ルミ子

平和活動を行うNGOの団体、リアルズの理事長。紛争解決と平和構築の第一人者として25年以上活動し、世界で高く評価される。


瀬谷ルミ子(著)『ノンフィクション 戦争は終わらない? 武装解除・紛争予防の現場から』(Gakken)
中東・アフリカで四半世紀にわたって活動を続ける瀬谷ルミ子さんの半生と活動を紹介する、児童向け読み物。現地の政治家や兵士、傷ついた地元民たちにどのように向き合い、平和を構築していったのか。武装解除、難民の退避支援、そして紛争の予防をどのように実現していくのかがわかる一冊です。
「いのる平和」から「つくる平和」に向かって、戦争を具体的に考え始めるためのノンフィクション。