中学受験の社会、低学年から先取りするべき?旅行とニュースで「好き」を育てる方法

「3年生から塾で社会を始めないと遅れる?」「先取りして都道府県を覚えさせるべき?」など、低学年からの社会の学習方法に悩む保護者は少なくありません。しかし、低学年で1時間かけて覚える知識も、5年生になればわずか数分で理解できるようになります。
低学年の今だからこそ大切にしたいのは、家族での旅行や博物館巡り、日々のニュースについての会話です。実際の体験がどのように高学年の中学受験学習に結びついていくのか、具体例を交えて解説します。
塾生の半数が難関校に合格する話題の進学塾「エルカミノ」。15年間講師を務めた著者の実体験をもとに、子どもを伸ばす親の関わり方や指導法をご紹介します。
※本稿は、大前真由美 (著)『中学受験塾 エルカミノがわかる本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部抜粋、編集したものです。
土台をつくる低学年の社会
知識より興味を育てる時期
エルカミノでは低学年に社会の授業を行っていません。低学年のうちに先取り学習をしておけば、高学年で暗記が楽になるのではないかと思われるかもしれません。しかしエルカミノでは、低学年は問題集や参考書を使って学習する段階ではないと考えています。
社会は「覚えることが勉強」と思われがちです。しかし、近年の中学受験では、社会は単なる暗記教科ではなくなっています。事実の背景にある原因を考える力、つまり思考力を試される教科となっているのです。そのため、この時期に穴埋め形式のドリル演習に取り組むのは適切ではないと考えています。「社会は事実を覚え、知識を増やす教科だ」という認識を持ってほしくないのです。

低学年では、好きなことや興味を持ったことを追求する時間を大切にしてほしいと考えています。たとえば、国旗、世界遺産、歴史漫画、百人一首など、どんなテーマでもかまいません。そこから社会に興味を持ってくれれば十分です。このような考えに共感し、後述する体験学習に力を入れていこうというご家庭であれば、エルカミノの方針に合っているのではないでしょうか。
大手塾の多くは3年生から社会の授業をスタートさせていますが、エルカミノは3年生で社会の知識を覚えるより、その時間を算数や国語にあてたほうがよいと考えています。3年生が1時間かけて覚える知識は、5年生なら数分で覚えられるからです。
体験学習のすすめ

保護者会でお伝えしていることのひとつに、低学年のうちは旅行や体験を優先してほしい、というアドバイスがあります。なぜかというと、いろいろな場所へ出かけて見て、触れて、体験することが他の教科の学びとも共通するからです。
たとえば国語の授業では、低学年向けに世界遺産について学ぶ機会を設けています。世界遺産には、社会的要素や理科的要素が含まれており、学びを広げるきっかけになるからです。実際に世界遺産について学ぶと、それをきっかけに現地を訪れるご家庭も多くいらっしゃいます。体験を通じて得た知識は長く記憶に残り、やがて歴史や地理を学ぶ際に体験が結びつき、より深い理解へとつながります。
長期休暇を利用して旅行や観光の計画を立てる際には、世界遺産を訪れることを検討してみてはいかがでしょうか。たとえば富岡製糸場では、歴史を学ぶだけでなく、蚕の学習もできます。関東在住のご家庭であれば、日帰りで出かけられます。また、法隆寺や中尊寺の見学もおすすめです。低学年のうちは外観の美しさしか記憶に残らないかもしれませんが、小学5年生の歴史で聖徳太子や奥州藤原氏を学習する際に、見学した記憶と結びつき、深い理解につながります。
さらに、週末には博物館を訪れるのもよいでしょう。さまざまな資料や展示を通じて、手軽に体験学習をすることができます。
時間に余裕のある低学年のうちに、旅行や体験を楽しみましょう。それは後の学習に役立つだけでなく、家族の団らんや、かけがえのない思い出にもなるはずです。
低学年で覚えておくこと

社会の受験内容を先取りする必要はないと述べてきましたが、何もしなくてよいわけではありません。3年生までの保護者会では、4年生で本格的な受験勉強が始まるまでに覚えておいてほしいことをお伝えしています。それは、都道府県や県庁所在地、いくつかの平野や川の名前です。これらは市販の地図や都道府県パズルなどを使って確認できます。
また、歴史漫画を購入することもおすすめしています。少しでも興味を持ってくれれば、高学年での社会の学習に役立つでしょう。ただし、興味を示さない場合は、無理に読ませる必要はありません。強制せず、子どもが自然に興味を持つのを見守ってあげてください。
興味の幅を広げる

中学受験では、小学校教育を超えた範囲が出題されます。それに備えるためには、低学年のうちから体験を積むことに加え、家庭で興味の幅を広げる工夫をすることが大切です。
たとえば、親子で地図パズルにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。子どもたちは、自分が行ったことのある都道府県はすぐに覚えます。地図パズルを行う際には、特産物も関連づけて覚えると、より学びが深まります。
また、テレビを活用するのもよい方法です。たとえば、「歴史探偵」という番組では白村江の戦いを取り上げた回がありました。江とは入江のこと。番組では、日本・百済軍が唐・新羅連合軍に敗れた理由が、映像を通じてわかりやすく解説されていました。唐・新羅連合軍は入江のぬかるみでも動ける装備をしていた一方で、日本・百済軍は装備が貧弱で、ぬかるみに足を取られて動きが取れず、戦いに敗れたのです。
この戦いの後、対馬や北九州に防人が配置され、水城や山城が築かれ、近江大津宮への遷都など、国防政策が強化されました。
防人という言葉を知っている生徒は多いですが、その背景や経緯を知ることで歴史を物語として記憶することができます。ちなみに2020年度の逗子開成中学校や2024年度の頌栄女子学院中学校の入学試験では、この白村江の戦いに関する出題がされていました
さらに、ニュースにも関心を持ってほしいところです。ニュースを一緒に見ながら意見交換をすることは、思考力を育むよい機会になります。また、小学生新聞を定期購読するのもおすすめです。保護者も一緒に読んで、ニュースと同じように意見交換を楽しんでください。子どもが意見を言わない場合は、質問をして発言を促してみましょう。気になる記事があれば、一緒に調べてみるのもいいですね。
このように、身近なものを入り口にして、興味を深めていくことで、社会の原理原則に少しずつ触れていくことができます。気になった内容は、図鑑や写真集、インターネットなどを活用して、ひとつずつ確認していくとよいでしょう。
大前真由美 (著)『中学受験塾 エルカミノがわかる本』ディスカヴァー・トゥエンティワン
首都圏に14教室を構え、塾生の半数が御三家をはじめとする難関中学に合格するという、驚異的な実績を誇る塾、エルカミノ。
本書は、そのエルカミノで約15年間講師を務めた著者が、塾の内側から見た教育の実態を初めて明かした一冊です。





























