勉強より絵に夢中な僕を「放置」してくれた両親。絵本『しりとりマン』作者が語る見守る子育て

おおのこうへい

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「子どもの頃は勉強が全然できなかった」と語る、絵本『しりとりマン』(PHP研究所)の作者・おおのこうへいさん。
しかしそれは勉強を避けていたのではなく、大好きな絵に没頭していたから。好きなことに向き合い、努力を重ねてきたすべての経験が、現在の絵本づくりや仕事へと繋がっています。
好きなことを貫いた少年時代から、美大受験、仕事での工夫、ご両親の温かい見守りについて伺いました。

「絵しかできなかった」少年時代と、片道2時間の通学で育まれた想像力

――絵本作家として活躍されているおおのさんですが、どのような子ども時代をすごされていましたか?

僕は本当に絵が好きというか、絵しかできなかったんです。勉強は全然できませんでしたし、言い訳をさせてもらうと絵を描いていたのでやらなかったんですよね。

野球チームに入っても補欠だったので、試合中は一人で地面に絵を描いているような子どもでした。中学のときも「行く高校がない」と言われるくらいで、都立で一番低いところも厳しいと言われたんです。

――そこから、どのようにして絵の道へ進まれたのですか?

羽田の都立高校に「美術コース」が新設されたんです。

学科試験がなく、作文とデッサンと面接の推薦で入れると聞いて、「じゃあそこじゃないか」と。放課後に美術の先生にデッサンを教えてもらって入学しました。

八王子から羽田まで毎日片道2時間かけて通っていたのですが、中央線で寝たりマンガを読んだり、一人でボケーッと色々なことを考えたりしていました。そうやって一人で考え事をする時間が、意外と想像力の母になっていたのかなと思います。あわただしく生きているだけではそうはいかないので、人と違う経験ができて良かったですね。

――高校生活はいかがでしたか?

当時は勉強ができないやつらが集結していて、本当に面白かったです。たとえば数学の中間テストでは、サイン・コサイン・タンジェントなんて全然覚えていないんです。でも、テストの裏に「校長先生の顔を描きなさい」という問題があって、頑張って描くと30点もらえたり(笑)。

高校に入るとみんな絵を描くので、「もっと上手くなろう」と思って頑張りました。その後、当時は、実技重視の東京藝術大学を目指すことにして、一浪して進学しました。

「結果オーライ上等」――下積みとスイングがあるからこそ結果がついてくる

――ご自身のこれまでの人と違う歩みを振り返って、どう思われますか?

人から「結果オーライ」と言われることもあるのですが、僕は「結果オーライ上等」だと思っているんです。

たとえばプロ野球の選手が目をつぶって振ったバットにたまたま球が当たってホームランになったとします。周りは「たまたまだから結果オーライだ」と言うかもしれないですが、そもそもホームランを打てるスイングや技術がないとたまたま当たったとしてもスタンドまで飛ばないですよね。結果オーライを起こすにも、それまでの下積みや努力があるからこそできるんだと思うんです。

――勉強が苦手だった経験は、ご自身の仕事や作品づくりに繋がっていますか?

会社に入ったとき、すっごく頭が良くて専門用語や英語を使って話す人がいたのですが、「頭がいいのは分かるけれど伝わらないな」と思ったんです。自分は勉強ができなかったからこそ、誰にでも伝わる言葉遣いや「みんなが分かるライン」を知っていて選ぶことができる。それは、絵本でも難しい言葉を使わず、端的に分かりやすく伝える部分にすごく応用が利いています。

コピーライター、デザイナー、CMプランナーと色々な役割をやってきた経験や、CMの秒数という枠の中で起承転結を考えることも、絵本のページ構成とよく似ています。

やってきたことや好きなことをバラバラに捉えず、「前向きに捉えて繋げようとする」ことが大切だなと。いきなりポッと頼まれてもできないですし、やってきた下積みがあったからこそ今に繋がって良かったなと思っています。

子どものやりたいことを尊重し、自由に放置してくれた親の存在

――ご両親は、子ども時代のおおのさんにどのように接してくれていたのでしょうか?

父親も母親も僕のやりたいことを尊重してくれて、良い意味で「放置」してくれました。勉強しなさいとは言われつつも、全然勉強しない僕をよくここまで放置できたなと思うくらい自由にさせてくれたんです。塾も僕が自分から行きたいと言った美大予備校しか通っていません。

父親自身も50歳で会社を辞めてから自分の人生をすごく楽しそうに生きていて、「人生の後半はボーナスステージだと思えばいい」という姿を背中で教えてくれました。

――ご家庭の雰囲気も温かかったのですね。

昭和の夫婦スタイルなんですけど、母親が父親のブランディングをうまくやるんですよ。「こんなに美味しいご飯が食べられるのはお父さんが働いているからだよ」と言って威厳を作ったりして。

やりたいことを尊重して見守ってくれた親にはすごく感謝しています。テクノロジーが進化したとしても、絵本って子どもが成長する過程で必ず通る「いい意味で進化しない普遍的なメディア」ですよね。普遍的で大事なものを届ける絵本という仕事を、細く長くずっと続けていきたいと思っています。

しりとりマン

おおのこうへい(作・絵)『しりとりマン』(PHP研究所)

しりとりの次の言葉を考えたり、ページをめくった先に現れるヒーローの姿を想像したり、自由な発想力を育む1冊! 大人数の読み聞かせにもぴったりです。