「勉強しなさい」とは言わなかった…娘が19歳で大学を飛び級卒業、武田久美子さんの子育て【後編】
前編では、武田久美子さんに、異国の地・アメリカで娘さんを育てるなかで大切にしてきた子育て観について伺いました。しかし、子育ては決して順風満帆だったわけではありません。離婚を経験し、娘さんは思春期を迎えます。そして、その先にはメディカルスクール合格という大きな目標が待っていました。
親として反抗期をどう受け止め、どのように娘さんの挑戦を支えてきたのか。今だからこそ語れる思いを聞きました。(取材・文/吉澤恵理)
反抗期は「とうとう来たな」、小さなことではぶつからなかった
離婚を経て、娘さんは思春期を迎えます。反抗期にどう向き合ったのか、武田さんに伺いました。
――離婚を経験された後、娘さんは思春期を迎えます。反抗期には、どのように向き合っていましたか。
武田:反抗期は、「とうとう来たな」という感じでしたね。
当時、周りのお母さんたちからは、「反抗期の子どもは宇宙人だと思ったほうがいいよ」とよく言われました。
本当にその通りで、それまで素直だった子が、まるで別人になったように感じるんです。
「太るから食べない」と言ったり、それまで聞いたことがないような口答えをしたり(笑)。
だから、小さなことはいちいちぶつからず、「今はそういう時期なんだ」と受け止めるようにしていました。
それでも「善悪の区別」だけは譲らなかった
小さなことでは衝突を避ける一方で、武田さんが譲らなかったことがありました。
武田:でも、何でも反抗期だからと見逃すことはしませんでした。
人としてやってはいけないこと、人を傷つけること、善悪の区別だけは親が教えなければいけないと思っていました。
あまりにも行き過ぎたときには、本気で叱りました。
取っ組み合いになって、「プロレスみたいだったね」と後から笑って話せるような親子げんかもありました。
子どもを大切に育てることと、子どもの顔色ばかりうかがうことは違います。
社会に出たときに困らないよう、親が言うべきことはきちんと伝える。それも親の役目だと思っています。
ただ、一度叱って娘が「ごめんなさい」と謝ったら、それ以上は引きずりませんでした。
「二度と同じことをしないようにね」と伝えたら、その話は終わりです。
親も子どもも、お互いに前を向くことが大切だと思っています。
「勉強しなさい」とは、ほとんど言わなかった
娘さんは19歳で大学を飛び級卒業しています。勉強について、親としてどう関わってきたのでしょうか。
――娘さんは19歳で大学を飛び級卒業されています。勉強については、親としてどのように関わってこられたのでしょうか。「勉強しなさい」と声をかけることはありましたか。
武田:「勉強しなさい」と言ったことは、ほとんどありませんでした。
正直なところ、どれくらい勉強しているのかも、あまり分からなかったんです(笑)。
今は机に向かうだけではなく、iPadで勉強することも多いので、ベッドの中でずっとiPadを見ていることもありました。
最初は「何をしているのかな」と思っていましたが、後から聞くと勉強していたんですよね(笑)。
だから、親が「勉強しなさい」と言わなくても、自分で必要だと思えばちゃんとやるんだな、と感じました。
アメリカの医学部受験は、点数だけでは決まらない
娘さんが目指したのはメディカルスクールでした。アメリカの医学部受験は、日本とは大きく異なるといいます。
――娘さんは、その後メディカルスクールを目指されました。アメリカの医学部受験は、日本とは大きく異なると聞きますが、どのような点が違うのでしょうか。
武田:日本は学力試験のイメージが強いですが、アメリカは勉強だけできればいいというわけではありません。
娘は大学を飛び級で卒業したあと、クリニックでインターンとして経験を積みながら、ボランティア活動も続けていました。
その合間にMCAT(医学部進学適性試験)の勉強もしていましたから、本当に毎日忙しかったと思います。
医学部を目指す学生は、医師の先生から推薦状を書いていただいたり、「なぜ医師になりたいのか」という思いをまとめたパーソナルステートメント(志望理由書)を作成したりします。
試験の点数だけではなく、人間性やこれまで積み重ねてきた経験も総合的に評価されるので、何年もかけて準備を進める受験なんです。
合格の知らせに「よく頑張ったね」
長い準備期間を、母としてどのような気持ちで見守っていたのでしょうか。
――一番近くで娘さんの努力を見守っていて、どのようなお気持ちでしたか。
武田:娘が決めた目標ですから、「きっと自分で努力するだろう」と信じていました。
もちろん親として心配はありましたが、私ができることは、安心して頑張れる環境を整えてあげることくらいでした。
だから、メディカルスクールに合格したときは、本当にうれしかったですね。
「ものすごい競争率の中、本当によく頑張ったね」、その気持ちに尽きます。
結果だけではなく、そこへたどり着くまでの努力をずっと見てきたので、親として本当に誇らしかったです。
大学進学後、「別人だな」と思うほど変わった
反抗期を越えた先で、親子の関係はどう変わったのでしょうか。
――大学へ進学されてから、娘さんとの関係に変化はありましたか。
武田:大学へ進学してからは、本当に変わりました。
今では私の体調を気遣ってくれたり、「ありがとう」と自然に言ってくれたりします。
「反抗期のあの頃とは、本当に別人だな」と思います(笑)。
大変だった思い出も、親子げんかも、今では全部笑い話になっています。
娘と歩んできた時間は、私にとって何ものにも代えがたい宝物です。
子育てには必ず終わりが来る
最後に、いま子育てに奮闘している保護者へのメッセージを伺いました。
――最後に、今まさに子育てに奮闘しているお母さん、お父さんへメッセージをお願いします。
武田:子育てをしていると、「この大変さはいつまで続くんだろう」と思うことがありますよね。
反抗期も、「この子は大丈夫なのかな」と心配になることがあると思います。
でも、大丈夫です。
子どもは親が思っている以上に成長します。
親が全部やってあげるのではなく、必要なときに支え、信じて見守ることも、とても大切です。
そして、子育てには必ず終わりが来ます。
今は毎日が慌ただしく、「早く楽になりたい」と思うこともあるかもしれません。でも、振り返ると本当にあっという間なんです。
だからこそ、一日一日を大切に、お子さんと過ごす今しかない時間を楽しんでほしいと思います。