「非認知能力」は子どもの人生を左右する? 40年の追跡調査が出した答え

自制心や粘り強さ、学習意欲といった「非認知能力」が、子どもの将来の収入や犯罪率、学歴にまで大きな影響を及ぼすことが明らかになりました。
本記事では、島根太郎さんの著書『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』から、アメリカで40年以上にわたって行われた「ペリー就学前教育プロジェクト」の結果をご紹介します。
※本稿は島根太郎著『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』(講談社)より一部抜粋、編集したものです。
非認知能力が子どもの将来を左右する

教育の世界で非認知能力が注目されるようになったのは、1962年にアメリカで追跡調
査がスタートした「ペリー就学前教育プロジェクト」の結果が大きな反響を呼んでからのことです(参照『幼児教育の経済学』ジェームズ・J・ヘックマン著、古草秀子訳、東洋経済新報社、2015年)。
「ペリー就学前プロジェクト」は、1962年から67年の間、アメリカ・ミシガン州に住む低所得者層家庭の3〜4歳児の子どもたちを対象にして実施されました。123名の子どもたちを二つのグループに分け、就学前教育を施す子どもと施さない子どもを比較。就学前教育を受ける子どもたちは毎日2時間半ずつプレスクールに通って遊び中心の授業を受け、週に一度は先生が各家庭を訪れて90分間にわたり自主性を伸ばす教育を行い、親向けのグループミーティングも実施しました。さらに研究チームは子どもたちが成人して以降、現在にいたるまで、長期間の追跡調査を実施しています。
ミシガン州で始まったこの教育プロジェクトの目的は、当時、深刻な社会問題となっていた教育格差の解消でした。のちにノーベル経済学賞を受賞することになるジェームズ・J・ヘックマン教授らの研究チームは、低所得層のアフリカ系アメリカ人の3〜4歳児を対象に、就学前教育によってその後の人生にどのような違いが生まれるのかを追跡調査していったのです。
特筆すべきは、この調査が非常に長期にわたって継続されていること、そして、予想もしなかった発見をもたらしたことです。
当初、研究者たちは就学前の教育を行うことによって、子どもたちの認知能力(学力や知識)が高まり、その結果として教育格差を解消できるのではないかと考えていました。実際、子どもたちはプロジェクト開始から数年間、学力テストで高い成績を収めていたです。
ところが、その効果は時間とともに薄れ、9歳になる頃には就学前教育プロジェクトを行ったグループと実施していないグループの認知能力的な差は顕著ではなくなっていきました。しかし、別の側面で、大きな差が現れ始めたのです。
それは学習意欲や労働意欲、自制心、困難に立ち向かう粘り強さといった、数値では測れない力の差でした。現在は「非認知能力」と呼ばれているこれらの力が、就学前教育プロジェクトに参加した子どもたちの中にしっかりと根付いていたのです。
しかも、追跡調査によってその効果は大人になってからの人生にも大きな影響を与えていることがわかりました。例えば、40歳時点までに逮捕歴がある割合は、プロジェクトに参加しなかったグループに対し、参加したグループは半分以下、月収2000ドル以上の割合は、参加しなかったグループが7%だったのに対し、参加したグループは29%でした。また、高校の卒業率もプロジェクトに参加したグループのほうが21ポイント高い結果となりました。
この研究が教えてくれるのは、非認知能力の育成がその後の人生を大きく左右するということ。何かに挑戦する意欲、苦境に耐える忍耐力といった力は、長い時間をかけてじわじわとポジティブな効果を発揮するということです。
「ペリー就学前教育プロジェクト」の研究成果は、教育への投資、特に非認知能力を育む教育の重要性を、科学的に証明してくれました。
そして、非認知能力を育むことができるのは就学前だけではありません。幼少期はもちろん、小中学生の時期もまた、子どもたちが多くのものを吸収できる大切な時間です。実際、私たちの学童保育の現場でも、日々子どもたちの驚くべき成長を目の当たりにしています。大切なのは、それぞれの発達段階に応じて、子どもたちの非認知能力を育んでいくこと。そうすることで、彼らは自分の人生を切り開いていく力を身につけていけるのです。
『子どもの人生が変わる放課後時間の使い方』(島根太郎/講談社)
小学生の1年間の学校生活1200時間に対し、放課後の時間は1600時間。
この未来の貴重な「資産」となる時間を、塾や習い事だけで埋めていませんか? なんてもったいない!!
1600時間を「未来への投資をする時間」と考えると、小学生のうちにまず優先してやるべきことは、学校や塾の勉強での認知能力の向上ではなく、社会につながるための人間力=非認知能力をいかに育むか。
この人間力は、自立した個を確立のための自己肯定感、粘り強くものごとを進める力などの「自分軸」と他者とかかわるためのコミュニケーション力などの「社会軸」の二軸からなります。
と言っても難しく考える必要はありません。
基本は子どもたちのやりたい気持ちを信じて、周りの大人たちはそれをサポートすること。
民間保育園・学童を広く展開する著者が、多くの子どもたちと接し、キッズコーチと子どもたちのかかわりを通じて学んできたヒントを明かします。
むしろ、忙しい保護者にこそおすすめの楽しみながらできる子育ての提案です。






























