防衛大に進学する生徒も…3.11被災地の多賀城高校の「災害科学科」で学ぶこと

高橋徹
2026.06.27 23:33 2026.06.28 07:00

防衛大の進学する生徒も...3.11の被災地の多賀城高校の「災害科学科」とは?の画像4

未曾有の被害をもたらした2011年の東日本大震災。その被災市町村のひとつ宮城県多賀城市にある宮城県多賀城高校では、東日本大震災の教訓を生かすべく2016年に災害科学科が新たに設置されました。

兵庫県舞子高校に次ぎ、日本で2例目として設置された防災専門の学科では、どういった授業や取り組みを行っているか、そして、どのような防災人材を育んでいるのか、同校災害科学科科長の石山俊太先生にお話を伺いました。

防災や減災の視点を落とし込んだ授業を展開

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――災害科学科の設置のいきさつについて教えてください

経緯としては、やはり東日本大震災の被害などの事実、そしてそこから得た教訓というものを次世代に伝承していくということを主な目的として宮城県の主導で設置されました。

防災専門の学科としては兵庫県にある舞子高校さんの環境防災科に次ぐ全国2例目となっています。その舞子高校さんをはじめ、東北大学の国際災害科学研究所さんなどからのアドバイスをいただきながら設置に至ったという流れになりますね。

また、多賀城高校に設置された理由としては、多賀城市が公共交通の便に優れ、仙台市内や他県の大学・研究機関などと連携しやすいことや、市内にある陸上自衛隊多賀城駐屯地や、隣の塩竈市に本部を置く海上保安庁宮城海上保安部(海保第二管区)などとも連携や協力をして、助言がもらえる体制をつくりやすいことなどがあったと聞いています。

学科の設立の目標としては、ここにある人と暮らしを守るというところを大きなテーマとしています。あとは防災だけに関わらずさまざまな組織でリーダーシップを発揮できる人材の育成ということを目指しているところです。

――災害科学科の概要について教えてください

まず、多賀城高校では、災害科学科だけではなく、高校全体として防災教育に取り組んでいるところが高校全体の大きな特色となっています。

普通科の授業にも「くらしと安全」「情報と災害」といった本校独自に設定された科目が組み込まれており、被災地の高校として、防災や減災の視点を積極的に取り入れたカリキュラムになっています。

さらに、災害科学科では、理系科目を中心に普通科の学習内容を防災や減災、環境などの視点を取り入れて学習する授業を、例えば、物理だと波の話など出てきますが、長周期振動や建物の強度といった話も入れ込みながら行ったりしています。また、専門科目として、過去の災害などから見られる諸問題を題材に、自然科学や社会学的な視点でアプローチする授業などを展開しています。

実際に現地で見聞きし、災害を自分ごととして捉える

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――通常の授業の他に、災害科学科独自の取り組みを教えてください

災害科学科では、被災地の現地を実際に訪れてフィールドワークを行う巡検活動を行っています。1年時には、七ヶ浜、栗駒・気仙沼、石巻・女川、浦戸諸島などに、実際に出向いて現地の被災した現場を見たり、被災した方のお話を聞いたり、もしくは研究者の方に解説をいただいたりということを行っています。

やはり資料だけでは、規模感がわからなかったり、実際の被害としてどういうものがあったのかというのがよくわからないところがあります。実際に現地に行って、現場を見て、現地の人に聞く、そうすることによって、どういった災害だったのか、どういった現象だったのかということを、自分ごととして捉えられるようになります。

2年時になると、日本を代表する研究機関等で最先端科学等に関する知見を深める「つくば研修」を実施しています。そして、総合的な探究の時間を課題研究の授業として、防災・減災や、伝承活動など、災害に関わるかもしれない課題を自分で見つけて、その解決を探究するというグループ研究を行っています。

――課題解決のグループ研究の事例を教えてください

一例として、本校では伝承活動の一環で、「津波伝承まち歩き」という活動を行っているのですが、その中で生徒が実際現地に来た人しか「津波伝承まち歩き」を体験できないということと、実際に津波の怖さを話しただけではなかなか伝わりづらいということを感じてました。

それを課題として捉えた生徒たちが、実際の津波が浸水していく時間と高さをシミュレーションして、一人称視点でどのように水位が上がっていくかや、実際の場所と重ねながら体験できる3Dモデルを作成しました。

これは非常に高く評価され、世界的な研究活動発表会のひとつである「グローバル・リンク・シンガポール2024」に参加し、「3Dモデルを活用した災害伝承」についてプレゼンテーションを行い、日本で起こった震災の脅威を伝え、防災・減災の重要性を発信してきました。

ここでの学びを機に、さらなる学びや、スペシャリスト人材へ

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――地域との連携にも力を入れているそうですね

多賀城市の総合防災訓練において本校の活動内容を展示させていただいたりですとか、地区での防災教室の方に生徒がボランティアとして派遣されて活動を一緒にしたりしていますね。

あとは地域の企業さんとの協力というところでは、イオンさんの「ぼうさい教室」のイベントで、一般の来場者に対して被災時の対応や、地震などの自然災害への備えについてみんなで考えてもらう機会を提供する防災ワークショップを実施したこともあります。

「まなぼうさい」というイベントでは、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」に関する防災ワークショップを仙台管区気象台さんと共同で実施。小さいお子さんやそのご家族などに防災・減災・伝災への意識醸成に貢献しました。

また、JR東日本さんとは、地震発災時、津波からの避難ということで実際に電車を使って、実物の電車でそこから避難をするというような訓練に参加させていただいたり、訓練に関する意見交換会を持たせていただいたりということもはしています。

こういった取り組みには、生徒の課題研究を進めていく上でこちらからお声がけさせていただくこともありますが、幸いなことに、多賀城高校の災害科学科でぜひお願いしたいとお声掛けいただくことが多いですね。地域での認知度みたいなものもだいぶ浸透しているようには思っております。

――卒業した生徒さんたちはどういった進路に進まれているのですか?

基本的に多賀城高校自体が進学校ですので、大学進学が一番多いのですが、ここで学んだことをきっかけにさらに専門的な知識を深められるような学校、学部、学科を進路に選ぶ生徒は多いですね。

防衛大学校に進学した生徒もおりますし、防災教育自体を学びたいと教育大学に進学した生徒や、あとは工学系に進んで建築とかインフラ整備、耐震などを学びたいといった生徒、地震や災害に強い物質材料を研究する高分子の方に進んだり、医療関係に進んだりとか、本当に多様ですね。

就職にしても、公務員就職が多く、災害科学科からだと、消防や警察、あとは多賀城市や、宮城県というところで、なにかしら防災減災に関われる分野で、暮らしと安全を守ることに貢献したいという生徒が多いですね。

高橋徹

高橋徹

宮城県白石市出身、明治大学法学部卒。広告代理店、編集プロダクション、Web制作会社勤務を経て、フリーランスライター・Webディレクター・プランナーとして活動中。