浮き輪のまま転覆、砂で火傷も…夏休み前に親が知るべき海のヒヤリハット

茂木みかほ

海は子どもたちにとって最高の遊び場ですが、一瞬の油断がケガや事故に繋がる場所でもあります。

「浮き輪のまま転覆し、水中で逆さづりになる」「砂浜が熱すぎて火傷する」など、特に未就学児~小学生くらいまでの年頃は、大人の想像を超えるトラブルが潜んでいるもの。

本稿では、『子どもと海あそび』(グラフィック社)より、親が知っておくべき「海のヒヤリハット」を事例とともにご紹介します。

※本稿は、茂木みかほ著『子どもと海あそび』(グラフィック社)より一部抜粋、編集したものです。

海あそびのヒヤリハット体験

子どもと海で遊ぶときに、ヒヤッとした体験をしたことが誰しも一度はあるはず。今回、未就学〜小学生のお子さんを持つ方や、自然体験を提供するお仕事をされている方を対象にアンケートを行いました。「磯や砂浜でお子さんと遊んでいるときに、ヒヤッとする体験をしたことはありますか?」という質問に対して、回答いただいた中からいくつか事例を紹介します。

ヒヤリハットは、大事故には至らなかったものの「危なかった!」「ヒヤッとした!」という危険を感じた状況のこと。これを読んで、原因や対策を考えることが大切です。ヒヤリハットには、未就学児〜小学生と海で活動することが多い中尾薫さんにコメントをいただきました。これらを参考に、安全な海遊びをしましょう。

協力:一般社団法人Telacoya921 代表理事 中尾 薫

溺れそうになる① 2~3歳 (伊豆大島)

小さい子用の足入れ型の浮き輪を娘に着けていた。バタ足で泳いでいたが、前のめりになりすぎて、水中に顔を突っ込んで逆さになってしまった。普通の浮き輪と違い、足入れ型は股がしっかりとハマっていたのですぐに抜けず、しばらくもがいて焦った。

【中尾薫さんコメント】
プールのライフセーバーをしていたとき、最も多かったのがこの浮き輪で逆さまになる案件でした。子どもの頭は身体に対して重く、バランスが悪くなっています。その重い頭は一度前のめりになってしまうと、身体とのバランスが悪いため、自力で起こすことが難しいのです。さらに、水の中に頭が入るとパニックになってしまい、ただでさえ起こしづらい体勢から戻れなくなります。

溺れそうになる② 6歳 (ハワイ)

波打ち際で浮き輪で遊んでいたときのこと。子どもが浮き輪を足から外そうとしたときにうまく外れず、転倒して海水を飲み、溺れそうに。すぐに浮き輪が外れて大事にはならなかったものの、浅瀬でも目を離せないと痛感した。

【中尾薫さんコメント】
浮き輪は頼りになる道具ですが、危険性も高いことを覚えておきましょう。このケースのように着脱の場面でも危険があったり、浮き輪を使ったまま風に吹かれて遠くに運ばれてしまう事故もあります。また、海上で一度外れたら、すべったりしてしまい、今度は元通りに着けることが難しいこともあります。浮き輪はあくまでも、大人の手の届く範囲で使用するものだということを親が覚えておきましょう。

溺れそうになる③ 5歳 (神奈川県・逗子海岸)

川の河口付近で、急に深くなっているポイントに気づかず足を取られて沈みかけた。自力で脱出できたので問題なかったが、ライフジャケットを着けていなかったのでかなり焦った。

【中尾薫さんコメント】
海はプールと違って底が見えず、底の形状がどうなっているかわかりません。特に河口付近では、川の砂の滞留や波の影響で流れが読めなくなっている場所も多くあります。ライフジャケットは水に入る可能性があれば、必ず着用しましょう。

水辺で遊ぶときは、ライフジャケットを

水辺で遊ぶときは、ライフジャケットを着用しましょう。着用して暑がって脱いでしまうなどの場合は、必ず一緒にいる大人が携帯し、必要なタイミングで装着させてあげてください。ライフジャケットを着けると足元が見えづらい、しゃがんで観察しづらいなどのときは、柔軟に着脱を。ただし、そばにいる大人が目を配ることを忘れないようにしてください。

切り傷 9歳 (神奈川県・真鶴)

磯の高い岩の上から子どもが足を踏み外して、すねをカキかフジツボのような鋭いもので切り、出血。その後医療機関で縫合が必要なケガとなってしまった。

【中尾薫さんコメント】
「磯の岩場はすべる!」を念頭に置いて行動しましょう。履き物をすべらないものにし、両手を開けることが大切。手袋を着用して磯観察をすると、このような突然のケガを軽減できる可能性が高くなります。デコボコとした足場の悪い岩場の岩やフジツボなどでの切り傷は、体内に菌が入りやすい場合もあります。親御さんが常に真水を持ち歩くと、ケガをした後にすぐに洗い流すことができ、予後を少しでも緩和できます(p.140参照)。

転倒 3歳 (新潟県・粟島)

磯を覗き込もうとして、海藻を踏んですべった。

【中尾薫さんコメント】
履き物が大事なことに加え、「乾いた岩の上を歩こう」などの声掛けも大事です。さらに、両手を開けておかないとすべった際に手が出ず、さらに大きなケガにつながりやすくなります。

火傷 2歳 (神奈川県・逗子海岸)

砂浜が熱すぎて足裏が焼けそうになった。

【中尾薫さんコメント】
夏の砂浜は、砂が熱を集めて備蓄してしまうので、気温以上の温度になります。さらに子どもの皮膚はまだ柔らかく大人よりも敏感で、火傷になる確率も高めです。サンダルが脱げたり、子どもがサンダルに砂が入って気になって履けないようであれば、靴下を履いて砂浜を歩かせるのも手です。もちろんマリンシューズを履き続けられるようであれば安全ですが、サイズが合っていないと熱い砂が隙間から入ってきて不快感を訴え、自分で脱いでしまうこともあります。

クラゲ 9歳 (神奈川県・真鶴)

クラゲが発生しているのを知らずに、海に入ってしまった。結果、アンドンクラゲに刺されてしまった。

海にはプールと違って、海の生き物が生息しているので、当たり前のことではあります。親が意識をもち、クラゲに刺されたときの対処法を事前に学んでおきましょう。ケガの対処ができれば、予後が安心です(p.141参照)。クラゲに100%刺されない方法はありませんが、海に入るときは長袖・長ズボンのラッシュガードを着用すると、多少は防ぐことができます。

お話を聞いた人

中尾 薫(なかおかおり)
一般社団法人Telacoya921 代表理事 
「幼稚園の先生」になってから40年弱。自然が子どもたちに教えてくれることの中でも、とりわけ「海」が教えてくれることの楽しさと深さを伝えたくて、11年前に葉山で認可外の幼稚園を立ち上げる。

 

 

 

 

 

子どもと海あそび

茂木みかほ著『子どもと海あそび』(グラフィック社)

はじめての磯・砂浜でも これ1冊あれば楽しく安全に遊べる!
生物観察の方法に、自由研究のヒントもいっぱい。 親子で知っておきたい環境問題や安全対策も網羅。 大人も楽しく読める、いまの時代の海あそびに必要なことがたくさん詰まった1冊です。