ADHDの子に「普通」を求めないで。「みんなと同じ」をめざすと逆効果になる理由
「不注意」や「多動性」といった特性から、ネガティブなイメージを持たれがちなADHD。しかし、実はその裏には、あまり知られていない「ポジティブな特性」が眠っているのをご存じでしょうか。
小児脳発達の専門家・加藤俊徳先生の著書『すごいADHD脳─天才的な能力を200%引き出す方法─』より、ADHD脳だからこそ持つ「才能の種」と、その能力を引き出すための考え方をご紹介します。
※本稿は、加藤俊徳 (著)『すごいADHD脳─天才的な能力を200%引き出す方法─』(ワニブックス)より一部抜粋、編集したものです。
すごいADHD脳は天才の素質
ADHDと聞いたとき、どんなイメージが浮かびますか?
「不注意」「多動性」「衝動性」
ほとんどの人は、この3つの特性を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、この3つの特性はADHD症状のほんの一側面にすぎません。そして、これらの症状があるからといって「発達障害」と断定する必要もないのです。
ここでは、診断の有無にかかわらず、ADHD傾向にある人を含め、ADHD特有の優れた能力を持つ人たちを「ADHD脳」と呼ぶことにします。
ADHD脳は、これら3つの特性よりもはるかに多くのポジティブな特性を持っていることが、長きにわたる研究によってわかってきました。「超ポジティブ思考」「先陣を切る自発性」「驚異の集中力」「桁外れのエネルギー」……これらはすべて「ADHD脳」が持つ天才的な能力です。
ADHD脳が並外れた能力を秘めた天才であることは、今や世界の共通認識となってきています。
実際に、「ハリー・ポッター」シリーズで有名俳優になったエマ・ワトソン、スポーツ選手では水泳界で驚異的成果を出し、多くの金メダルを獲得したマイケル・フェルプスもADHDであることを公表しています。
また、世界的起業家として知られるアップル創設者のスティーブ・ジョブズもADHDだったのではないかと言われています。
まさに「天才」と言われてきた人たちが、ADHD脳であることが知られているのです。
彼らは、「自分らしくないこと」をすることに違和感を覚えます。
その結果、独自の思考力や高いエネルギー、創造性といったADHD脳の強みの特性を活かすことで、多くの人々にインスピレーションを与えてきました。
ものの見方、こだわりが規格外だからこそ、人が気づかないことに気づき、これまでにない発想で新境地を開拓し、あり得ないパワフルさで偉業を成し遂げていく人たちなのです。
才能の種をたくさん持っている、それがADHD脳です。
ADHD脳は「普通」に合わせなくていい
ADHD脳にとって、何よりも大切なのは「自分らしさ」です。
どこまでいっても、自分のやり方で進めたい。自分の考え方を貫いて生きていきたい。そんなふうに自分らしさを求めてやまない人たちです。
ADHD脳が才能をうまく発揮できず、生きづらさを抱えてしまうのは、無理やり世間の一般基準に合わせよう、「普通(集団平均)」に順応させようとするから。つまり、自分らしく生きられていないからなのです。
その高い能力を開花させる最大にして唯一の方法は、自分らしく生きること。
生まれながらにして強みを持っているので、素直にその特性を表に出すことが、才能を開花させるための正攻法です。
しかし、現在病気としてのADHDの診断項目は、不注意や多動性などのネガティブな症状を列挙した基準のものしかなく、強みがまったく診断基準に入っていません。
ADHDの持つ強みを理解していないからこそ、子どもがADHDと聞くと、ほとんどの親はネガティブに捉えてしまうのです。
じっと座っていられるように
人の話は黙って聞いているように
周囲と足並みをそろえて行動するように
ADHDに関わる周囲の人間は、なんとか弱みを取り除いてあげよう、「普通」に近づけようと指導したり、叱咤する傾向があります。
ところがこれは逆効果。平均的なタイプになるように矯正しようとするほど、ADHDの弱み症状が表出している子は脳がさらに働かなくなるため、本人にとっても周囲にとっても意味のない行為になりかねません。
それどころか、できないことばかり注目されるとADHD脳の強みは埋もれてしまい、自己肯定感は大きく下がります。弱みが強調されることで、しだいに生きにくさを強く感じてしまうのです。
これまでADHDについては、ネガティブなイメージだけが蔓延し、本来のADHD脳が持つ多くの強み、高い能力への理解がされていない実態がありました。
しかし、今や世界では、ユーモアがありクリエイティブ、そしてエネルギッシュなADHD脳は大人気。多くの場面で高い能力を発揮し、精力的に活躍すると期待されるADHD脳には魅力があるという認識に変わってきています。