同じ発達障害でもなぜ差が出る? 不登校を分ける「特性と学校との相性」

小林正幸
2026.05.26 10:38 2026.05.29 20:30

小学生の男の子

不登校の子どもたちの中には、発達障害の傾向が見られるケースが少なくありません。
一方で、同じ特性があっても、学校に通い続ける子と、そうでない子がいるのも事実です。
では、その分かれ道はどこにあるのでしょうか。
本記事では、不登校支援に携わる小林正幸先生監修の本をもとに、発達障害のそれぞれの特性と、不登校につながりやすいポイントを解説します。

※本稿は、小林正幸 (監修) 『子どもの不登校が心配になったら知りたいことが全部のってる本 (知りたいことシリーズ)』(主婦の友社)より一部抜粋、編集したものです。

発達障害のある子の中には集団活動になじめない子もいる

特性に応じた「合理的配慮」を受ける権利がどの子にもある

発達障害と不登校の関連性を示す明確なデータはありません。ただ、不登校の児童生徒と接している立場から言わせていただくと、発達障害の傾向のある子の割合は高いと感じます。文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究報告書」(令和6年版)でも、不登校児童生徒の保護者200人のうち、31%が「発達障害が不登校の背景にある」と答えています。

一方で発達障害があっても「学校が大好き」という子もいます。特性や性格の違いもありますが、「先生の指示がわかりやすい」「必要以上に叱らない」「まわりの席の子が穏やか」など、配慮された環境が整っていることも不登校を回避できる要因になります。

2005年に「発達障害者支援法」が施行されました。学校教育でも子どもの個性や状態に応じた支援を受ける権利が重視されるようになっています。学校に「合理的配慮」(一人ひとりの特性や状況に応じた教育を受けるための配慮)を求めることも可能ですし、各学校には特別支援教育コーディネーターの役割を担う先生もいます。子どもの困りごとに応じた対策を、学校と保護者がともに考えていくことは欠かせません。

自閉スペクトラム症(ASD)

頭を抱える男の子

●空気を読むのが苦手で、独得のこだわり、敏感さがある
●「あなたのペースでいい」と伝えて

【特性】
自閉スペクトラム症の代表的な特性として、社会的な関係性が持ちづらく、コミュニケーションが困難という特性があります。空気を読んで行動することができず、あいまいな指示が理解できない特性がある子の場合、集団行動が苦手になりがちです。決まった道順での移動や、急に予定が変わるとパニックになるなどのこだわりの特性が見られると、学校生活になじみくい理由の一つになります。

【対策】
その子のペースやこだわりを理解してもらえるように学校に相談し、予定の変更などは事前にプリントなどで連絡をもらうようにします。ASDの子の中には、自分を押し殺して過剰適応しようとする子もいて、そのことに傷ついていることもあるので、日頃から「あなたのペースでいいんだよ」と伝え続けたいと思います。

不登校のきっかけの例

●友だちができにくい、仲間の輪にうまく入れない
●興味がもてない授業だと別のことをしてしまう
●予定の変更やあいまいな指示で混乱してしまう
● 衝動的な発言や行動で周囲の子に嫌な思いをさせることがある

注意欠如多動症(ADHD)

親に叱られる子ども

●落ち着きがなく、待つことが苦手。叱られやすい
●自己肯定感を下げないように長所を認めて

【特性】
ADHD の特徴は、不注意・多動・衝動性の3つです。不注意とは「1つのことに注意を向け続けることが苦手」ということで、注意の対象が次々に移ります。多動は、状況とは無関係に体や口が動いてしまうこと。衝動性は欲求を抑える力が弱いせいで、パッと動いたり、思ったことを配慮なく言ってしまったりします。この3つの組み合わせで「忘れ物が多い」「授業を聞かない」「周囲にちょっかいを出す」などの行動が多いものの、なかには不注意だけで多動や衝動性がない子もいて、その場合はおとなしく「心ここにあらず」で勉強から取り残されることも。

【対策】
叱られても本人はケロッとしているように見えることもありますが、内心は傷つき、自己肯定感が下がりがちです。大人は叱るのを手控え、ミスをサポートするよう意識したいもの。そのときにはにっこり笑って本人の注意をこちらに向かせ、やさしく短く伝えます。環境調整も重要で、集中しやすい席に替えてもらう、指示は口頭だけでなく目で見てわかるようにするなどをお願いしたいですね。

不登校のきっかけの例

●以下のような理由で教師に叱られることが多い
・集中が長続きしないため、気が散りやすい
・よく忘れ物をする、うっかりミスが多い
・授業中に立ち歩く、関係のないことを大声で話す
●集中力が続かないせいで学習内容が理解できない
● 衝動的な発言や行動で周囲の子に嫌な思いをさせることがある

学習障害(LD)

鉛筆と白いノート

●読み・書き・計算など特定の学習分野が極端に苦手
●「努力すればできる」ではない対策を

【特性】
知的障害や視覚障害がないのに、読み・書き・計算などの特定の分野が極端に苦手です。文章を読めない、書けない、漢字などの形を認識できない、簡単な計算や図形の概念が理解できない、九九が覚えられないなどの特徴があります。努力してもできないことで「どうせ自分はバカなのだ」と自己肯定感を下げてしまいがちですが、つまずいているのはその教科の一部分であることも多いので、具体的な原因を探ることが必要です。


【対策】
何が苦手なのか、どうすればできるのかを明確にして早めに対策を打つ必要があります。文章が読めない子は音声教材を利用することが可能ですし、文字を書くことが苦手でもキーボードやフリック入力ができるなら、支援機器としてパソコンやタブレットを利用できます。黒板をデジカメで撮影する、ICレコーダーで授業を録音する、計算には電卓の使用を認められることもあります。

不登校のきっかけの例

●以下のような障害のために授業が理解できない
・文章を読むのが極端に遅い、まちがって読む
・文字を正しく書けない、誤字や脱字が多い
・数の概念が理解しにくい、計算が極端に苦手
●テストの点数が低いなど、自信を失ってしまう
●勉強ができないことでからかわれることもある

小林正幸

臨床心理士、公認心理師、学校心理士、日本カウンセリング学会認定カウンセラー、カウンセリング心理士および同スーパーバイザー。専門は教育臨床心理学。筑波大学大学院修士課程教育研究科修了。東京学芸大学名誉教授。「登進研相談室」カウンセラー。カウンセリング研修センター「学舎ブレイブ」主宰。

子どもの不登校が心配になったら知りたいことが全部のってる本

小林正幸 (監修) 『子どもの不登校が心配になったら知りたいことが全部のってる本 (知りたいことシリーズ)』(主婦の友社)

2024年度の文科省の調査では、小中学生の不登校は過去最多の約35万人(年間欠席30日以上)。欠席は30日に満たなくても、教室に入れず保健室で過ごしているなど不登校傾向の子どもは100万人を超えると推計されています。「まさか、うちの子が」と動揺しているのはあなただけではありません。子どもに「学校に行きたくない」と言われたら、親はどうすればいいのか。本書では、初期のメンタルケアから、家庭を「安心できる居場所」に変える環境づくり、不登校中にやれること、出席扱い制度のこと、フリースクールや通信制高校といった最新の進路事情までを網羅しました。不登校は「終了」ではなく、子どもが自分らしく生きるための「再起動」のきっかけです。心配ばかりが膨らみがちな親御さんに、本書を読んで次のアクションに繋げるためのヒントを見つけてほしいと願っています。