ヘビはいっぽん?数え方のつまずきを「面白がって直す力」に変える絵本

大人が何気なく使っていても、子どもにとっては不思議だらけなのが日本語の「数え方」です。
「一本、二本、三本はどうして“本”の音が変わるの?」
「細長いものが“一本“だとしたらヘビも“一本“?」
など、その複雑さに戸惑ってしまう子も多いのではないでしょうか。
そんな難しい数え方を、子どもたちが楽しく体感できるのが、絵本『ぽんぴきぱいのぽん』(エンブックス)です。
物語の舞台は「まほうようちえん」。きゅうり1本を出したいときは「ほんぴきぱいの“ぽん“」、かえる2匹は「ほんぴきぱいの“ひき“」と、数え方をもとにした魔法の呪文を、子どもたちがマスターしていくお話です。
作者の飯田朝子先生は、数え方研究の第一人者。絵本としての楽しさと「数え方の解説」をどのように同居させたのか、その試行錯誤の道のりを、飯田先生と担当編集者の西川俊充さんに語っていただきました。
(取材・文:nobico編集部)
「数え方」を絵本にした理由
──まず、「数え方」を絵本にしようと思ったきっかけを教えてください。
飯田朝子先生(以下飯田): 正直に言ってしまうと、エンブックスさんから企画をいただいたから、というところが始まりです(笑)。最初は「監修をしてほしい」とお話をいただいたんですが、進めていくうちに私の方からもアイデアがどんどん出てきて。そこからより本格的に作者として制作にかかわることになりました。
──ものの数え方を魔法の呪文にするというアイデアは、最初からあったのですか?
エンブックス 西川俊充さん(以下西川): 最初は、数え方のバリエーションをとにかくたくさん見せる、「辞書」や「数え歌」のような企画を先生にご相談していました。でも、それだと子どもには少し難しいし、嫌になってしまうよね、という話になりまして。そこから、音が濁る「連濁(れんだく)」にフォーカスを絞って、企画を磨いていきました。
実は最初、今の物語絵本ではなくて、「ぽん・ほん・ぼんって何だろう?」と考えさせるような、ちょっとゲーム性のある企画として作っていたんです。
飯田: この辺りは、結構苦労しましたよね。いろんな試作品を作りました。途中で「ぽん」のタイミングで手を叩くような、体を使う体験型の仕掛けを入れようとしたこともありました。
西川: 絵本を通じて何かを体験できるような仕掛けがあるといいなと、色々と考えましたね。
そんな中で「ぽん、ぴき、ぱい」という3つの音を組み合わせがすごく面白いなと思いまして。「これを魔法の言葉にできませんか?」と先生に相談したところから、今の物語絵本になっていきました。
間違えても自分で修正できる力をつけてほしい

──ストーリーは先生が考えられたのですか?
飯田: みんなで「寄ってたかって作った」という感じです(笑)。全体の展開や物語の山場は私が提案して、それを編集部で直していただきながら進めました。
何より「数え方」が一番大切なので、子どもたちが順序立てて覚えらえるようにすること。そして「間違えるとエラーが起きる」という部分を伝えたかったんです。
──物語の中で「ヘビを“一本“と数えたせいで、魔法でヘビが消せなくなった」というくだりが面白かったです。
飯田: ありがとうございます。呪文を間違えてエラーが生じても、それをしっかり自分で修正していく力をつけていければいいなと思い、展開を工夫しました。
大蛇は一頭ではない? 大人の知的好奇心もくすぐる1冊に
西川:絵本の制作中、先生と話すなかで「へー!」と驚く発見がたくさんありました。
例えばヘビのシーン。人間より大きい生き物は「一頭」と数えるイメージがあったため、「この大きさなら“一頭”になりますか?」と尋ねたところ、この場合は「一匹」とのこと。大人でも意外な発見が多く、面白さを感じました。
この本はいわゆる「知育絵本」のジャンルになりますが、絵本はやっぱり、子どもにとっての「楽しみ」であってほしい。そこへ、いわゆるお勉強のような「教育」は持ち込みたくないな、という思いが根底にありました。同じ知育でも、私たちは「知的好奇心を育む知育」だと捉えています。
先生ご自身がまさに知的好奇心の塊で、世の中のモヤモヤを自分で解き明かしていく方なんです。そんな先生にお願いできたからこそ、本当に作りたかった絵本が完成したなと思っています。
──確かに、「教えてやろう」という上から目線を感じない、子どもが純粋に楽しめる絵本だなと感じました。
西川: 読者にそう思っていただけたら、もう大成功です!
──数え方はまだまだたくさんあるので、続編も作れそうですね。
西川: どうですか、先生?(笑)
飯田: ハリー・ポッターみたいにシリーズになればいいな、なんて思っています(笑)。
飯田朝子(作), 武者小路晶子(絵) 『ぽんぴきぱいのぽん』(エンブックス)
「数えかた」が楽しく学べる物語絵本
「まほうようちえん」に入園した子どもたちが学んだのは、食べものや生きものを出す「ぽんぴきぱい」の魔法。
この魔法の言葉をうまく使いこなすには、きちんと「数えかた」のルールを覚えないといけません。例えば、きゅうりを1本出したいときは「ぽん」、かえるを2匹出したいときは「ひき」と、間違えずに数えることが大切です。
ところが帰り道、こっそり魔法を試してしまった子どもたちの前に、思ってもみない生き物が現れて大ピンチ!……
知的好奇心が芽生える4歳ごろのお子さんにおすすめです。読んでいるうちに、いつのまにか数えかたマスターに!






























