クマはなぜ人を襲う? 行楽シーズン前に知っておきたい「攻撃の本当の理由」

山﨑晃司
2026.08.24 08:04 2026.08.24 11:50

熊/クマ

近年、クマによる人身被害のニュースを目にする機会が増えています。子どもと一緒にハイキングやキャンプを楽しみたいけれど、クマとの遭遇は避けたいもの。

では、そもそもクマはなぜ人を襲うのでしょう。人を見つけると、積極的に襲ってくるのでしょうか?

今回は、クマが人を襲う理由や遭遇時の注意点について、山﨑晃司先生の解説をご紹介します。

※本稿は、山﨑晃司(編著)『クマに出遭ってしまったら?』(PHP研究所)より一部抜粋、編集したものです。

クマはなぜ人を襲うのか

クマが人を攻撃するもっとも多い理由は、自己防御です。自分自身や、母グマなら子グマを守ろうとして立ち向かってきます。クマも人が怖いのです。クマと人とが相対した場合、人の目の位置がクマよりもかなり高く、クマは人のうしろのようすがどうなっているのかを見ることができません。科学的に実証されているわけではありませんが、クマは人を自分よりも大きな動物だとみなして脅威を覚えるのだという説明もあります。カナダ・カルガリー大学名誉教授のスティーブン・ヘレロ博士の話では、腰をかがめて目線が下がった状態の人間はクマから攻撃されやすい傾向があるといいます。

通常、クマは人との不要な争いを避けてその場から遠ざかるか、あるいは近くに身を潜めて人をやり過ごします。北海道の大雪山の見通しのよい場所から観察された例でも、歩いている人はクマの存在にまったく気づいていないながら、ヒグマはすぐ脇の小さな茂みに大きな体を縮めて隠れてやり過ごしていたといいます。攻撃の場合でも、かなりの割合がブラフチャージと呼ばれる威嚇攻撃で、人の目の前まで低い姿勢で近づいてきて、前足で地面を叩いて引き返したり、人の直前で左右に曲がって逃げ去る場合が多くあります。

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ただし、子グマを連れたメスは異なった行動を取る場合があります。特に、子グマと母グマの間に人が入ってしまう、子グマに不用意に人が近づくという場合は、子を守るための防御的な攻撃に発展する場合が少なくありません。厄介なのは、人が子グマを避けようとしても、好奇心が旺盛な子グマが人のほうによちよちと近づいてきてしまう場合です。このような場合も母グマの防御的な攻撃が引き起こされる可能性が高いでしょう。一方で、行動の追跡研究のためにわなで生け捕りしたツキノワグマが子グマだった複数の例では、たいていはわなのそばに母グマが居残っていますが、研究者が近づくと母グマは退避行動を取ったものもいました。

ヒグマの場合は、ツキノワグマにくらべて体が大きいという余裕もあり、特に若いヒグマが好奇心から人に近づいてくることがあります。人がパニックを起こして冷静さを失うと、それがクマに伝わって攻撃につながることがあるので注意が必要です。

【POINT】
●攻撃の多くは自分や子グマを守ろうとして起こる自己防御としての攻撃。
●通常はクマのほうから人を避ける。

山﨑晃司

山﨑晃司

茨城県自然博物館館長。東京農業大学名誉教授。
1961年東京都調布市出身。 森林動物生態学が専門。東京農工大学連合大学院博士(農学)。ザンビア国立公園局野生動物調査官、東京都高尾自然科学博物館学芸員、茨城県自然博物館首席学芸員、東京農業大学地域環境科学部教授を経て、茨城県自然博物館館長。元日本クマネットワーク代表、元International Association for Bear Research and Management 理事、IUCNクマ専門家委員会委員、東京都自然環境保全審議会鳥獣部会長、千葉県環境審議会鳥獣部会長、環境省鳥獣保護管理プランナーなどを務める。著書に『日本のクマ』(東京大学出版会・共編著)、『ツキノワグマ すぐそこにいる野生動物』(東京大学出版会)、『ムーン・ベアも月を見ている』(フライの雑誌社)、『クマとともに』(東京大学出版会・共著)など。

クマに出遭ってしまったら?

山﨑晃司(編著)『クマに出遭ってしまったら?』(PHP研究所)

クマに出遭ったら、どうすればよいのか。日本のクマ専門家たちが、クマに出遭わない工夫からクマに襲われたときの防御法までを解説。