「早期通塾」は焦り損?中学受験に向けて、低学年のうちに身につけたい5つの土台

佐野倫子

中学受験に備えて、低学年のうちから塾通いをスタートする家庭も少なくありません。しかし、「早く通わせなきゃ」という焦りは不要だと、教育ジャーナリストの佐野倫子さんは指摘します。

実は早期通塾よりも、家庭で基本の復習習慣と知的好奇心を育むことこそが、高学年でぐんと伸びる近道。入塾前後の保護者の不安を和らげ、焦らず無理なく我が子の成績を伸ばすために親ができるサポート術を、佐野倫子さんの著書より抜粋してご紹介します。

※本稿は、佐野倫子著『中学受験伴走力』(講談社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

低学年で塾は必要?高学年で差がつく家庭の5つの土台づくり

ここからは、通塾前の低学年、主に1年生から3年生の冬までにご家庭でしておきたいことをお教えします。

低学年のうちに親が子どもに定着させておきたいことは、次の5つです。

●机に向かう習慣
●読書習慣
●正確な計算力
●漢字を丁寧に書く習慣
●生活リズムの安定

樹木に例えれば、ぐんぐん伸びていくために必要な土台である、根や幹を育てる感覚です。特に「勉強を嫌いにしないこと」「知的好奇心を伸ばすこと」が最優先です。「ひとりで考える時間」を奪わないために、すぐに答えを与えず、「どう思う?」と問い返す親の姿勢が、子どもの思考力を育てます。

低学年期にもっとも気をつけたいのは、親が「やりすぎる」こと。つきっきりで教え、間違える前に先回りし、スケジュールを細かく管理することは、残念ながらあまり効果がありません。

勉強の習慣をつけるために低学年から塾に通うのもひとつの選択ですが、思ったように成績が伸びず、親が焦るケースが目立ちます。早期から親が偏差値や成績を気にして子どもをコントロールしすぎると、高学年になっても「自主的に勉強する子」に育ちません。

また、学習量をやみくもに増やすことで、低学年のうちは高い偏差値を出したものの、高学年になると油断して、どんどんまわりに追い抜かれてしまうパターンもあります。

小学生の成長は、本当に個人差が大きいものです。4年生で伸びる子もいれば、5年生後半から急伸する子もいます。全員が中学受験に向いているわけではありませんし、誰もが入試までに急成長する、ということもありません。

大切なのは、子どもが学ぶ楽しさを知り、「分かった!」という体験を重ねること。親としては、少しずつできることが増える感覚を大切にして、その喜びを育てましょう。

早期から塾で勉強することを考える前に、前述の5つのポイントをしっかりご家庭で実践してください。そうすると、子どもは高学年でぐっと伸びます。親の声かけ次第で習慣化・底上げできる部分なので、中学受験をする/しないにかかわらず、根気よく環境を整えてください。

【入塾後】焦らず無理なく成績を伸ばす親のサポート術

4年生(3年生の2月以降)は、本格的な受験勉強のスタート地点です。

入塾した当初は、テキストの厚さや勉強量の多さに圧倒されるかもしれません。各科目の問題文は長くなり、算数は少しずつ抽象的になります。単元別の学習になるので、毎週コツコツと知識を身につける必要があります。

でも焦る必要はありません。この時期は、復習の習慣をしっかりつくることが最大のテー。焦らずに、コツコツと塾のテキストに取り組むよう促しましょう。

どの塾でも、ひとつの単元を4年生から6年生にかけて何度も学んでいくカリキュラムを組んでいます。子どもが「難しい」と感じているようであれば、復習をしっかりして、基本問題がきちんとできるようにしましょう。そのときにすべて理解できなくても、同じ単元を、難易度を上げながら繰り返し学ぶうちに、少しずつ理解が深まっていきます。

親が完璧を求めすぎると、子どものストレスになり、勉強がイヤになります。毎日無理なく復習する習慣が身につくよう、やさしく声かけを。そうやって基礎の部分を厚くすることが、結果的に近道になるのです。

また、早くから塾と我が子との相性を見極め、親子ともに塾と相談できる態勢を作っておくことも重要です。

学年が上がるにつれて、我が子の成績、その他もろもろについての悩みごとは増えていきます。6年生になると、志望校やそれまでの学習量から、やるべき勉強内容が子どもごとに違ってくるので、なかなか周囲に相談できなくなります。

4〜5年生のうちに塾とのコミュニケーションがとれていれば、いざというときに相談しやすくなります。親子ともに、塾の先生を味方につけましょう。

さて、中学受験の伴走を経験した母として、個人的に「隠れ山場」と呼んでいるのが5年生です。5年生は、学習内容が一段と難しくなり、家庭学習の量も増えます。

特に算数は重要単元が続き、入試で戦うための土台を作る一年となります。理科・社会も暗記量が増えます。そうなると、どうしても勉強量を増やさなくてはならないのですが、子どもの意識は、「受験生」という自覚からまだまだ程遠い──。

ここで焦って、教材の量や通塾頻度を増やそうとするご家庭は少なくありません。また反対に、なにから手を付けるべきかわからなくなり、完全に塾まかせで親はノータッチ、いう状況も起こりがちです。

しかし、やるべきことは実にシンプルです。これまでと同じく、毎日コツコツ「基本の徹底」を行うこと。

●間違えた問題を解き直す。
●理解があいまいな単元を放置せず、じっくりテキストを読む。
●わからないときは質問をする。
●睡眠時間や気分転換の時間を削らない。

派手なテクニックよりも、地道な復習がモノを言うということです。

とはいえ、ミスした箇所を見直したり、わからなかった課題にもう一度向き合ったりするのは、大人でも面倒なもの。そのため、たいていの子どもは復習が苦手です。親はその面倒さをやわらげるために、復習のハードルを下げてあげましょう。具体的には、

●ミスした問題に印をつけて、子どもがすぐに解き直しができるようにする
●暗記するものをコピーして、リビングなど目につくところに貼っておく

といった対策が効果的。ちょっとしたことですが、学習の定着率に大きく差が出ます。

5年生の後半からは、徐々に受験生としての学習が本格的になり、6年生になると通塾日数や季節講習が増えます。そのため5年生の夏休みのうちに、家族旅行に行ったり、友だちとたっぷり遊んだり、勉強以外のことも楽しませてあげましょう。

中学受験を終えた保護者に話を聞くと、5年生の夏休みはコツコツ勉強をしながら、楽しいことを経験させたという方がたくさんいらっしゃいました。冬休みになっても、講習の合間を縫って、帰省や旅行でのんびりさせたという方がほとんど。

やるときはやる、楽しむときは楽しむ。そんなメリハリの意識を、親が上手にリードできるよう心がけましょう。

中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと の画像1佐野 倫子 (著)『中学受験伴走力 親がすべきこと、知るべきこと』(講談社)

中学受験で必要な「親の伴走力」の方法を分かりやすく解説。令和の中学受験最前線情報、カリスマ講師の学年・教科別学習方法徹底取材、直前期の伴走方法、出願スケジュールのポイント、当日の持ち物チェックリスト、伴走済保護者の体験談などで構成。