実は撃退率90%以上!「最後の手段・クマスプレー」の選び方と正しい使い方

山﨑晃司,山中正実
2026.09.03 09:33 2026.09.07 11:50

熊/クマ

クマに出遭ってしまったときの「最後の手段」として、知っておきたいのがクマ撃退スプレーです。適切な製品を正しく使えば、攻撃的なクマでも90%以上を撃退できるとされています。

とはいえ、いざというときに正しく使えなければ意味がありません。どんな製品を選び、どのように携帯・使用すればいいのでしょうか?

クマ撃退スプレーの選び方と正しい使い方について、山中正実先生の解説をご紹介します。

※本稿は、山﨑晃司(編著)『クマに出遭ってしまったら?』(PHP研究所)より一部抜粋、編集したものです。

クマスプレーの使い方と効果

クマ撃退スプレーは、トウガラシの辛み成分であるカプサイシンを含むガスを噴射するもので、目や鼻の粘膜部に直接スプレーした場合の痛みによってクマを退散させるものです。

適切な製品を用いて正しい使い方をすれば、攻撃的な行動であったとしても90%以上を撃退できることが知られています。現在、もっとも有効なクマ対策のアイテムといえるでしょう。

しかし、突発的な状況で誰もが適切な使い方ができるとは限りません。緊迫した場面でクマ撃退スプレーを正しく使うことよりも、出遭わないようにすることのほうがはるかにたやすいのです。クマ撃退スプレーはあくまで最後の手段と考えましょう。

適切なクマ撃退スプレー

『クマに出遭ってしまったら?』より

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『クマに出遭ってしまったら?』より

十分なカプサイシンの濃度と量、噴射持続時間、到達距離、噴霧形態を保証する米国環境保護庁(EPA)認証の製品を、米国省庁連携グリズリー委員会(IGBC)のガイドラインでは推奨しています。製品のラベルをよく見てEPA認証製品を選ぶと安心でしょう。

ガスが十分に広がってクマの接近を止める壁となることが重要です。認証されていない製品では、水鉄砲のように細い水流状で噴射されるものがあります。これではいざというときに的確にクマの目と鼻に当てることは難しいので注意しましょう。

適切な携帯方法

『クマに出遭ってしまったら?』より

すぐに取り出せる位置に装着しておきましょう。ザックなどに入れて持ち歩くのでは意味がありません。ベルトやザックのショルダーハーネスに装着すべきです。

誤噴射をして自分や仲間にかかると大変なことになるので、セーフティクリップ(安全装置)が外れないようにカバーされたホルダーに入れて携帯するとよいでしょう。セーフティクリップを外して持ち歩くのは危険です。外すのは噴射の直前と心得ましょう。

正しい使い方

『クマに出遭ってしまったら?』より

威嚇突進するクマは3~5mで引き返すことがしばしばあります。また、風向きによっては噴霧が十分届かないこともあるので、3~5mに近づくまで待ったうえで噴射しましょう。クマの目と鼻をねらって、小出しにせずに全量を吹きかけ続けます。

なお、クマがゆっくり近づいてくるような場合、もしも余裕があれば、風向きをよく見てください。逆風にならないようにクマとの位置関係をゆっくりと変えてから噴射すると効果的です。余裕がなければ、逆風であっても十分引きつけてから噴射するしかありません。

クマに近づいてほしくない場所、たとえばテントのまわりやゴミ置き場などにあらかじめ噴射しておくのは意味がありません。においに興味をもったクマが近づいてくる可能性さえあり、逆効果です。クマがいそうだという雰囲気だけで、予防的に付近の空中に散布するのも、すぐに拡散してしまうので意味がありません。実際に使う必要が生じたときにガスの量が不足してしまう危険もあります。

噴射後の対応

クマが逃げていったら、その場に留まらず、走らずにゆっくりとその場を離れましょう。カプサイシンの噴霧が自分にかかったら、目も開けられず、呼吸することさえ苦しい状態になります。しかし、絶対に顔をこすってはいけません。できる限り早く流水で洗いましょう。衣服についた場合は着替えたほうがよいでしょう。

【POINT】
●製品のラベルをよく見て、適切なクマ撃退スプレーを選ぶ。
●すぐに取り出せるように携帯する。
●クマが3〜5mの距離まで近づいてきたら、目と鼻をねらって全量を噴射する。

【執筆者】
山中正実(やまなか・まさみ)
北海道大学大学院獣医学研究院野生動物学教室 客員研究員
1959年生まれ。山口県周南市出身。北海道大学でヒグマ研究グループに所属し、知床をはじめ北海道内各地でヒグマや海獣類の生態調査を行なう。1987年以来、知床の自然環境の保全管理にあたる知床財団の設立から関わり、統括研究員・事務局長として同財団の中枢を担った。また、知床世界自然遺産の登録にいたる活動を主導した。2012年から2018年には、知床博物館館長としても勤務。博士(人間科学)。

山﨑晃司

山﨑晃司

茨城県自然博物館館長。東京農業大学名誉教授。
1961年東京都調布市出身。 森林動物生態学が専門。東京農工大学連合大学院博士(農学)。ザンビア国立公園局野生動物調査官、東京都高尾自然科学博物館学芸員、茨城県自然博物館首席学芸員、東京農業大学地域環境科学部教授を経て、茨城県自然博物館館長。元日本クマネットワーク代表、元International Association for Bear Research and Management 理事、IUCNクマ専門家委員会委員、東京都自然環境保全審議会鳥獣部会長、千葉県環境審議会鳥獣部会長、環境省鳥獣保護管理プランナーなどを務める。著書に『日本のクマ』(東京大学出版会・共編著)、『ツキノワグマ すぐそこにいる野生動物』(東京大学出版会)、『ムーン・ベアも月を見ている』(フライの雑誌社)、『クマとともに』(東京大学出版会・共著)など。

クマに出遭ってしまったら?

山﨑晃司(編著)『クマに出遭ってしまったら?』(PHP研究所)

クマに出遭ったら、どうすればよいのか。日本のクマ専門家たちが、クマに出遭わない工夫からクマに襲われたときの防御法までを解説。