「親がいなくても一人で逃げて」子どもに教えたい、津波が来たときに取るべき行動

片山誠
2026.08.31 08:28 2026.09.07 08:00
『こども72時間サバイバル防災』ライツ社より
イラスト:しまりすゆきち
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津波が来たとき、子どもをひとりで逃がすなんて、親としてはとても不安ですよね。

でも、「親が迎えに来るまで待つ」「子どもを迎えに戻る」という行動が、命を危険にさらすことがあります。だからこそ、普段から「親がいなくても一人で逃げる」と子どもと約束しておくことが大切です。

東日本大震災で多くの子どもたちが津波から逃げた、岩手県釜石市の実例から、その理由を考えます。

※本稿は、片山誠(著)『こども72時間サバイバル防災』(ライツ社)より一部抜粋、編集したものです。

「50センチならだいじょうぶ」○か×か

津波って、5メートルとか聞くとこわいけど、50センチくらいならだいじょうぶなんじゃない? そう考えて家にいたままだと、残念ながらキミは命を落とすだろう。
「キミがイメージしている津波」と「リアルな津波」は、まったくちがう。海で遊んでいるときのような波が1回来るだけなら、たしかにだいじょうぶかもしれない。
でも、本当の津波は「水」だけじゃない。
津波には、重たい石やガレキがたくさんまざっている。1発、頭に当たるだけで気を失ってしまうようなガレキがものすごい量、何十分もずっとぶつかり続けてくる。

『こども72時間サバイバル防災』ライツ社より

「家でおうちの人を待つ」○か×か

こわがらせたいわけではないが、さらに続けよう。
そんな津波は、海の上をジェット機のような速さで進んできて、陸に上がっても時速30キロほどの速さでおしよせてくる。これは全力で自転車をこぐよりも、さらに早いスピードだ。つまり、津波が見えてから走っても、もうおそい。逃げ切れないのだ。
そんな津波が来るかもしれない中、それでもキミは家でおうちの人を待つだろうか。

『こども72時間サバイバル防災』ライツ社より

たくさんの人が津波でなくなった東日本大震災のとき、場所に、キミくらいの年の子どもたちが、こんなピンチにおちいった。そのとき、子どもたちはどうしたのか。これから、ある実話を伝える。読んで、キミはどう思うだろうか。

おうちの人の生死は、キミにかかっている

その子どもたちがいたのは、岩手県釜石市のとある小・中学校。あるとき、子どもたちはこんなクイズを出された。
「地震が来たら、キミたちはちゃんと逃げるよね。でも、逃げていないかもと思ったら…お父さんやお母さんは、どうすると思う?」
子どもたちは答えた。「ぼくらをむかえに来ると思う」。
そう。もし「キミがひとりでもぜったいに避難する」と信じてもらえていなかったら、おうちの人はキミを助けようとして、むかえに来てしまうのだ。そして、避難に間に合わなかったら…どうなってしまうだろうか。

『こども72時間サバイバル防災』ライツ社より

だから、釜石の子どもたちは先生とこんな約束をしていた。
「地震が起こったら、そのときどこにいようと、たとえひとりでも、とにかく近くの避難場所に向かうこと。生きていれば、かならずおうちの人がむかえに来てくれるから」。
この言葉は、避難訓練のときだけでなく、朝礼などでも何度もくり返し伝えられていた。

家にもどらなかったお母さん

こんなお母さんもいたそうだ。
「家に子どもを残して買い物に出たあと、地震が起こりました。すぐにでも家にもどりたかった。でも、もどればわたしも津波にのまれてしまう。子どもはきっとひとりで逃げているはずだと信じて、そのまま避難しました」。

『こども72時間サバイバル防災』ライツ社より

会いたい。いっしょにいてあげたい。でも、自分の子どもを信じて、バラバラに逃げたという。
そして、釜石の子どもたちは、小さな1年生でも約束をしっかり守り、津波からひとりで逃げた。
これが、児童全員が津波から逃げ切ったことから「釜石のキセキ」とよばれている話だ。
しかし、釜石の人たちはそう思っていない。
釜石の子どもたちが無事だったという事実は、キセキでもなんでもなく、長年にわたって町ぐるみで防災教育が行われてきた結果だと。そして、それでもなお亡くなってしまった人たちが町にはたくさんいる、と。

いちばん最初に逃げる人であれ

いざというとき、自分からすすんで避難しようとする人は少ない。「だいじょうぶだろう」という可能性のほうを信じたくなるのが、人間という生き物だからだ。
でも、人の気持ちはふしぎなもので、ひとりが逃げはじめると、まわりの人も動き出すことがある。

『こども72時間サバイバル防災』ライツ社より

だからこそ、キミが「最初に逃げる人」になってほしい。

片山誠

学生時代に日本各地を野宿しながら旅することにハマる。一般企業に就職し8年勤めたのち、アウトドアで自由気ままな生活をしたいと思い、2006年にアウトドアツアーを企画運営する株式会社ココロを創業。その後、東日本大震災のボランティア活動をきっかけにさまざまな社会課題と向き合い、アウトドアを通じて、子どもたちが自分で考えて行動し生き抜く力を身につけることに貢献したいと思い、仲間と一緒に72時間サバイバルプロジェクトを立ち上げる。

こども72時間サバイバル防災

片山 誠 (著)『こども72時間サバイバル防災』(ライツ社)

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