「スマホを取り上げるよ!」は逆効果?実はペナルティを決めないほうがいい理由

石田勝紀
2026.10.22 14:16 2026.10.27 11:50

スマホを持つ手
子どもがスマホのルールを守ってくれないと、「次に破ったら取り上げるよ!」とペナルティを設けたくなることもあるでしょう。しかし、親子のバトルを繰り返してきた家庭では、ペナルティを課すことが逆効果になる場合もあります。

大切なのは、罰で行動を変えさせるのではなく、子どもが自分でルールを守れるようになること。ルールを立て直すための3つのステップとルールを守れなかったときの具体的な声かけを紹介します。

※本稿は、石田勝紀 (著) 『子どものスマホとゲームに振り回される毎日が笑顔に変わる本』(大和書房)より一部抜粋、編集したものです。

ステップ1:現状を共有する

見つめあう親子

まず、親子で「今の状態」を共有します。

ここで大切なのは、責めないことです。「あなたは毎日4時間もスマホをしている」という言い方ではなく、事実を淡々と共有するだけに留めます。

具体的にはこうです。

「ねえ、ちょっと話したいことがあるんだけど。最近、スマホの時間がちょっと長いかなと思っていて。お母さんが見てる感じだと、平日で3時間くらい、休日だともう少し長い感じがするんだけど、あなたはどう思う?」

ポイント1:「お母さんにはこう見えている」という主観で語る

「あなたは3時間やっている」と断定すると、子どもは「そんなにやってない‼」と反発します。「お母さんにはこう見えている」という形で語ると、「事実の共有」ではなく「感覚の共有」になり、反発が減ります。

ポイント2:子どもの認識を聞く

「あなたはどう思う?」と聞くことで、子ども自身に自分の使用状況を振り返らせます。

ここで初めて、子どもは「もしかして、ちょっと使いすぎているかも」と自覚することがあります。この自覚が生まれることが、ステップ1の最大の目的です。

ステップ2:新しいルールを一緒に決める

現状が共有できたら、新しいルールを一緒に決めます。

ここで「拒絶できない選択モデル」が活きてきます。親御さんの側でいくつかの選択肢を準備しておき、子どもに選ばせます。あるいは、子どもから対案が出てくれば、それも取り入れます。

決める項目は、大きく三つです。

一つ目は「いつ使うか(時間帯:When)」。
二つ目は「どれくらい使うか(時間の長さ:How long)」。
三つ目は「どこで使うか(場所:Where)」。

一度にすべてをガチガチに決める必要はありません。最初は一つか二つに絞って、「まずはこれだけ試してみよう」という形が、うまくいきやすいです。

ここで、絶対に忘れてはいけないことがあります。決まったルールは、紙に書いて見えるところに貼るか、決めた瞬間を動画で撮影しておきます。

口約束だけでは、後から「言った、言わない」の争いになります。紙に書くことで、ルールは「親子の間の約束」から「目に見える契約」になります。

動画で撮影しておく方法も効果的です。自分が「これでいいよ」と言っている姿が映像で残っていると、子どもは後から否定しにくくなりますし、何より自分で決めた事実が記録として残ることで、意識せざるを得なくなります。

ステップ3:ペナルティは、あえて決めない

通常、初めてルールを作る場合は、ペナルティを事前に決めておきます。

「守れなかったらこうなる」という結果を明示しておくことで、ルールに重みが生まれるからです。しかし、すでにルールが崩壊している家庭の場合は、話がまったく違います。

ここは、特に大切なポイントです。再度ルールを決めるとき、ペナルティを決めることはやめた方がいいでしょう。なぜなら、三つの理由があるからです。

理由1:親子の信頼関係が、すでに傷ついている

ルールが崩壊しているということは、その過程で何度もバトルが繰り返されてきたはずです。

「取り上げるよ!」「没収するからね!」という脅しの言葉が飛び交い、実際に取り上げてさらに関係が悪化したり、逆に取り上げると言いながら結局実行しなかったり―そうした経験が積み重なった結果、親子の信頼関係はすでに傷ついています。

この状態でペナルティを設定すると、子どもの心にはこう映ります。
「また罰で縛ろうとしている」
「結局、前と同じじゃないか」

せっかくステップ1と2で「今度は違う、一緒に決めよう」という新しいプロセスを踏んでいるのに、最後にペナルティが出てきた瞬間、子どもの中で「やっぱり前と同じだ」というスイッチが入ってしまうのです。ルール再構築への協力姿勢そのものが、ここで失われてしまいかねません。

理由2:「ペナルティ」という言葉自体が、過去の失敗パターンを呼び起こす

崩壊した家庭には、ペナルティにまつわる「失敗の記憶」が蓄積されています。

「スマホを取り上げると言ったのに、泣いたら返してくれた」―この経験がある子は、「ペナルティは口だけ」と学習しています。

新たにペナルティを設定しても、「どうせまた口だけでしょ」と最初から信じません。あるいは逆に、実際に取り上げられて激しく反発し、親子関係が決定的に悪化した記憶がある場合、「ペナルティ」という言葉を聞いただけで、子どもの心にシャッターが下ります。

いずれにしても、ペナルティという仕組み自体が、過去の負のパターンと結びついてしまっているのです。同じ仕組みを再び持ち出しても、子どもは「また同じことの繰り返し」としか感じられません。

理由3:まず「守れた」という成功体験を積ませることが先決

崩壊した状態から再出発するとき、最も大切なのは、子どもに「ルールを守れた」という小さな成功体験を積ませることです。

「自分で決めたルールを、自分で守れた」―この経験が、子どもの自律心の出発点になります。

ところが、ペナルティが設定されていると、子どもの意識は「守ろう」ではなく「破ったらどうなるか」に向いてしまいます。

つまり、前向きな動機(守りたい)ではなく、後ろ向きな動機(罰を避けたい)で行動することになるのです。罰を避けるための行動は、長続きしません。ペナルティがなくなれば、守る理由もなくなるからです。

一方、「自分で決めたから守れた」という成功体験は、ペナルティがなくても持続します。

なぜなら、その原動力は「自分で決めた」という内発的な動機だからです。崩壊からの再出発では、この内発的な動機を育てることが最優先です。ペナルティの存在がプレッシャーになると、せっかくの成功体験すら「罰が怖かっただけ」に矮小化されてしまいます。

では、ペナルティなしで、どうするか? ルールが守れなかったときは、どうすればいいのでしょうか。

答えは、罰ではなく「声かけ」で対応する、です。ペナルティの代わりに、穏やかに一声かける。それだけです。お子さんの性格や、そのときの親子関係の状態によって、以下の3つのパターンから選んでください。

1:事実だけ伝えて、翌日に仕切り直す

「今日は守れなかったね。まあ、そういう日もあるよね。明日またやってみよう」
→ 責めない、評価しない、ただ事実を認めて次に向ける。

2:親の気持ちは入れつつ、軽いトーンで

「今日はちょっとオーバーしちゃったね。まあ、最初から完璧にはいかないよね。明日はどうする?」
→ 「どうする?」と問いかけで終えることで、子どもに主体性を戻しています。

3:あえて何も言わない

ルールを破った日に、あえてスマホの話題には触れず、普通に雑談して「おやすみ」と言う。子どもの中に「今日は守れなかった」という自覚が芽生える時間を与えるのです。

数日同じ状態が続くようだったら、「新しく決めたルールはどう? もう一回決め直してみる?」と話をしてみます。このパターンは、すでに雑談を通じた信頼関係がある程度できている場合に効果的です。

以上のように、罰を与えるのではなく、穏やかに声をかけて、翌日以降に仕切り直す。この繰り返しが、崩壊した家庭にとっては最も現実的で、最も効果的なアプローチなのです。

石田勝紀

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教育評論家。20歳で起業し、学習塾を創業。その後、中高一貫私立学校の常務理事に就任し、大規模な経営改革を実行するとともに教師の指導力を高める。講演会や企業での研修会は毎年150回以上にのぼる。教育デザインラボ代表理事、都留文科大学特任教授。

公式サイト:https://www.ishida.online
公式ブログ:http://s.ameblo.jp/edu-design


石田勝紀 (著)『子どものスマホとゲームに振り回される毎日が笑顔に変わる本』(大和書房)

スマホのルールを守れない子どもが自律するために必要なのは、厳しくすることではなかった!

親が子供に「スマホをやめなさい!」と言わなくてよくなる方法が満載。スマホを味方にする親御さんのアプローチ方法がわかりやすく解説されており、スマホ問題は、親子の信頼関係を見直し、子どもの「自律心」を育てるための絶好のチャンスでもあることに気づく1冊となっています。