友だちを叩く・噛みつく子にどう対応?子どものコントロール力を育てる方法

アリッサ・キャンベル、ローレン・ストーブル
2026.10.27 11:33 2026.10.28 11:50

泣いている子ども

友だちを叩いたり噛みついたりしてしまうなど、子どもの攻撃的な行動に悩む親御さんは少なくありません。ですが、子ども自身も湧き上がる強い感情にどう対処していいか分からず、戸惑っているのかもしれません。

本記事では、子どもが自分の感情に気づく「自己認識」と、気持ちを整えて行動を選ぶ「自己調整」の力を育てるヒントをご紹介します。

※本稿は、アリッサ・キャンベル、ローレン・ストーブル著『0歳からはじめる 子どもの感情を育てる本』(かんき出版)の一部を抜粋・再編集したものです。

叩いたり噛みついたりする男の子

頬をつく子ども

ジョナという子の話をしましょう。彼はよく友だちを叩いたり、蹴ったり、噛みついたりする子でした。さまざまな感情や経験に対する身体の反応が、攻撃的なかたちで表れてしまうのです。

たとえば、自分が遊んでいるスペースに誰かが入ってきたとき、友だちの後ろに並んでいるとき、おやつの入った容器のふたを閉めようとしてうまくいかなかったとき、自分が使おうと思っていた白いシャベルを弟が先に使ってしまったとき(そのシャベルを使おうと思っていたことなど、周りの人は知りようがありません)。

彼が心の中で感じているフラストレーションと、外側に表れる行動はつながっています。ただ、「感情を持つ」と「行動する」のあいだに間(ま)がないのです。
親も教師も、クラスメートやきょうだいも、ジョナにはその「間」をとれるようになってほしいと思っていました。

何かが起こったあと、どういう対応をするかを選べるようになってほしい、と。

ここでの問題は、ジョナに「分別がない」ことではありません。いったん冷静になって落ち着けば、叩いたら痛いことはジョナもわかっていますし、蹴るかわりに深呼吸をしたり足を踏み鳴らしたりすればいいこともわかっています。でも、怒りやフラストレーションを感じた瞬間、そうした考えが消えてしまうのです。

そんなとき、人と一緒に感情を抱き、受け止め、整理する力を学ぶ方法である「CEPメソッド」が役に立ちます。CEPとは「協働的感情処理(Collaborative Emotion Processing)」という意味です。

まずは自分の中にある感情に気づかせる

手をつなぐ親子

自己調整は自己認識から始まります。

私たちはまず、ジョナが自分の中にある感情に気づけるようにしました。興奮したり、緊張したりしたとき「胸がざわざわする」と表現することがありますが、それと同じように「きみはいま手をグッと握りしめているね。肩に力が入っているよ。声もすごく大きい。きみはイライラしているみたいだ」と、自分の内側に意識を向けさせるような声かけをしたのです。

感情が爆発する寸前をとらえて、これを毎日、何カ月も繰り返しました。

「砂場で遊んでいたら、お友だちが近づいてきたのに気づいたんだね。きみがお友だちを見あげたとき、腕に力が入るのがわかったよ。お友だちが違う遊びを始めるんじゃないかと思って緊張したのかな?」

「ぼくは手を握りしめてる。肩に力が入ってる。声も大きい! そうか、ぼくはイライラしてるんだ!」

自己調整、共感力、社会的スキルを身につけるには、まず自己認識をすることが大切です。自分の身体と心で何が起こっているのかに気づけば、自分でそれをコントロールして外の世界とつながることができます。恐れを抱いてとっさに反応するのではなく、言葉と行動を選べるようになるのです。

感情に流されず自分で考えて動く

笑う子

心の中で何が起こっているのかに気づけば――自分がその感情を抱いていることを認められるようになれば――最初に湧いた感情と、実際の行動との間に、少し間が生まれます。

感情は自然に、無意識に生まれるもの。大事なのは、その感情に流されて動くのではなく、「さて、どうしようか」と自分で考えて動けるかどうかです。それが自己調整です。
ジョナも自分の身体の中で何が起こっているのかに気づいていれば、次にどうすればいいか選べたはずです。だから、まずは小さなことから始めることにしました。
困ったときは大きな声で「助けて!」と言ってみようと伝えたのです。
声が聞こえたら親や教師がかけつけ、ジョナが落ち着くのを手伝います。そのおかげで、悪循環に陥らずにすみました。

それができるようになったので、次のステップに進みました。やがて「助けて!」と叫ぶ代わりに、自分に合った言葉を口にしながら、ぎゅっと握りしめた手をゆっくり開いていけるようになりました。ジョナにとってその言葉は、「計画変更」でした。

注意してほしいのは「自己調整」と「感情の処理」は別のものだということです。
これは大人にも当てはまります。例を挙げてみましょう。

こんなことがありました。私がアプリで注文と支払いを済ませた料理を受け取りに、レストランへ行ったときのことです。
レストランに着くと、料理を受け取る前にスマホの画面で受け取り確認ボタンを押してくださいと店員が言うのです。でも、私のスマホの画面にはどこを探しても受け取り確認ボタンがありません。そこで、店員がアプリのカスタマーサービスに電話をしてくれました。

2回も保留にされ、気づけば45分が過ぎていました。結局、支払いを2回して、予定より1時間遅れてようやく帰ることができたのです。正直、私は内心苛立っていました。内心、というのがポイント。

待っている間、愚痴はこぼしましたが、声を荒げることは一度もありませんでした。

あの場で感情をぶつけても意味がないと思ったからです。傍から見れば落ち着いているように見えたでしょうが、感情はまったく整理できていませんでした。落ち着いているように見えても、感情を処理できているとは限りません。

抑えた感情は後に爆発することもある

カフェラテ

感情を「処理」するのではなく、「抑える」ことで、自己調整できているように見せることはできます。

でも、抑えられた感情は1人でに、消えることはないし、思いがけないときに外に向かって、あるいは内側で爆発することがあります。その感情を、引き出しに閉まっておくようなものです。

まず、その場を自分でうまく乗り切って、あとで落ち着ける場所で感情をちゃんと整理することが大切です。レストランの一件は、家に帰ってから夫や友人に話すことで、うまく感情を処理できました。

自己調整は、学校や職場でうまくやっていくために欠かせません。そして感情を処理することは、深い人間関係を築いたり、心の自由を感じたり、思いやりのある職場を守ったり、長期的な目標をあきらめないために大切です。この2つは、組み合わせてこそ本当の力を発揮します。

アリッサ・キャンベル

親や教師、保育者が子どもの「心の知能(EQ)」をはぐくみながら、自らのメンタルヘルスも守れるよう支援する団体〈Seed&Sew〉のCEO。ローレン・ストーブルとともに「CEPメソッド」を開発し、全米でその実践と研究を続けている。また、幼児教育者向けの認定制度や専門家育成プログラムを立ち上げ、子どもの感情を大切にする教育を広めている。ポッドキャスト『Voices of Your Village』は100カ国以上で配信され、SNSのフォロワーは30万人を超える。2019年には『ワシントン・ポスト』で「情緒の発達の専門家」として紹介された。ニューヨーク州西部の小さな町で4人兄弟の一人として育つ。現在はバーモント州バーリントンで、夫と息子と暮らしている。「子育ては1人でするものではなく、支え合うコミュニティ(村)が必要」という考えのもと、世界中の親や教育者に向けて講演や情報発信を行っている。

ローレン・ストーブル

幼児教育コンサルティング団体〈Engage: feel.think.connect〉でコンサルタントを務める。8歳までの子どもを対象とした教育や保育に長年携わり、自宅を拠点とした幼児教育プログラムも16年間運営。その後は大学で幼児教育を教えながら、教育者の育成や組織づくりにも取り組んでいる。専門分野は幼児教育、アンチバイアス教育、マインドフルネス、発達心理学、ヨガ・瞑想など多岐にわたる。子どもの感情だけでなく、大人自身の感情や無意識の偏見にも目を向け、行動科学や神経心理学の知見を教育現場に生かす研究を続けている。現在はマサチューセッツ州ホリヨークで夫と2匹の猫と暮らしている。

0歳からはじめる 子どもの感情を育てる本の画像1

アリッサ・キャンベル (著), ローレン・ストーブル (著), 多賀谷正子 (翻訳)『0歳からはじめる 子どもの感情を育てる本』(かんき出版)

「泣かないの」「大丈夫だから」「騒がないで」――
そんなふうに子どもの感情を軽く扱う時代は終わりました。この本では、子育てで誰もが直面するさまざまな困難な場面に対応するための実践的な方法を紹介します。
・子どもが癇癪(かんしゃく)を起こしたときにすべきこと
・子どもがたたく・噛むなどの行動をしたときの適切な対応や声かけ
・不安や怒りを感じている子どもを落ち着かせるサポートの方法 など
親子の関係をより深くはぐくみ、生涯にわたる心のしなやかさ(レジリエンス)と心身の健やかさの土台を築きます。子どもも大人も、すべての人のために書かれた一冊です。