かんしゃく・パニックに「落ち着いて!」は逆効果? 言葉より先に「身体」を落ち着かせる感情サポート法

子どもがかんしゃくやパニックを起こしたとき、言葉で説得しようとしてもなかなかうまくいかないものです。子どもが激しい感情をコントロールできるようになるには、まず過剰に反応している「身体(神経系)」を落ち着かせることが欠かせません。
本記事では、子どもが感情に飲み込まれず、自分で気持ちを整えられるようになるための大人のサポート法をご紹介します。
※本稿は、アリッサ・キャンベル、ローレン・ストーブル著『0歳からはじめる 子どもの感情を育てる本』(かんき出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
成長を支える3つの力

今朝、幼い息子を保育園に連れていったときのことです。私と離れるのが悲しかったのか、先生に抱き取られるあいだ、息子は泣きながら手を伸ばして私を呼んでいました。
そのとき先生が、息子の気持ちをそっと受けとめてくれました。「ママと離れるのは悲しいね」。
そして、優しく歌を口ずさみながら、息子の肩から腕にかけてゆっくりとなで、それを何度も繰り返してくれたのです。息子はその場でじっとしていました。
5分ほどして泣きやむと、先生は「ハグしようか」と聞いてくれました。息子は大好きなぬいぐるみをつかんで、先生に身を寄せました。
先生はハグしながらも、歌い続けてくれていました。息子が落ち着くと、先生はもう一度気持ちを受けとめ、悲しくて当然だよと話しかけてくれました。
息子が泣きやんだからといって、悲しみが消えたわけではありません。先生は「成長の三角形」の頂点まで、きちんと実践してくれたのです。

子どもの感情の調整をサポートする

あなたがパートナーに怒っているとしましょう。このとき、あなたの心拍数は上がり、手はぎゅっと握られ、肩に力が入り、震える声で相手にきつい言葉を放っています。
私の友人はそうなったときの自分を「竜巻」と呼んでいます。口から出る言葉をコントロールできている気がしない、身体が主導権を握って相手を飲みこもうとしてしまう、と言います。
でも、少し距離をとって身体の反応を落ち着かせることができると、自分の感情を認識して言葉にし、相手と話せるようになる。怒りが消えるわけではないけれど、身体が握っていた主導権を脳が取り戻せるというのです。
「感覚(神経系)の調整」と「感情の調整」は、別物です。コントロールを失う感覚、身体が主導権を握っている感覚は、神経系から来るものです。子どもの反応がどんどん激しくなり、感情を調整できなくなってきたとき、私たちの選択肢は2つです。
1つは、頑として譲らず、コントロールを失っていく子どもに対峙すること。
もう1つは、子どもとつながり、一緒に気持ちを落ち着かせ(共同調整)、安全だと感じられるようにしてあげること――そうすることで、子どもは感情を調整し、コミュニケーションの力を使えるようになります。
スチュアート・シャンカーが『「落ち着きがない」の正体』(東洋館出版社)に書いているように、「私たちはお互いからエネルギーを引き出し、お互いを通じてエネルギーを蓄えるようにデザインされている」のです。
保育園での息子の話に戻りましょう。息子はそこが安全な場所だとわかっていたし、楽しく過ごせることも知っていたはずです。それでも、気持ちを言葉にすることも、感情を抱えたまま前に進むこともできませんでした。
身体が脳のハンドルを握っていたからです。先生がなで、ハミングし、抱き寄せてくれることで、論理的思考を司る脳が再び動き出しました。
少しずつ落ち着きを取り戻した息子は、先生と言葉を交わせるようになり、感情に押しつぶされることなく、次の一歩を踏み出せたのです。
まず感覚の調整からはじめる

1歳10カ月のマラが磁石ブロックで遊んでいたとき、別の子がテーブルにぶつかって、せっかくつくったものが崩れてしまいました。マラは大きな声で泣き、パニックになりました。
私はまず深呼吸をして、どう対応すれば彼女の役に立てるか考えました。そして隣にひざをつき、励ましの言葉をかけた瞬間――マラは私の頬を叩いたのです。
私の体内でコルチゾールが一気に分泌され、扁桃体が「闘うか逃げるか」のモードに入りました。
言いたいこと、したいことは山ほどありました。でも私は彼女を見つめ、できるかぎり穏やかに言いました「先生ちょっとトイレに行ってくるね。すぐ戻るから」。
マラを落ち着かせる前に、まず自分の神経系を整える必要がありました。物理的には安全だったので、その場を離れて深呼吸しながら、自分に言い聞かせました。「マラの身体はコントロールを失っている。彼女にはサポートが必要だ」と。
数分後、私は戻って「成長の三角形」について考えました。まず、感覚の調整から。
「叩いちゃダメだよ」と言いながら、彼女の手をそっとつかみました。「一生懸命つくったのに壊されちゃったね。それはイライラするよね」(ひと呼吸おく)。
「そうだ、10回大きくジャンプしてみようか!」。彼女は私の手を握り、一緒にジャンプしながら数を数えはじめました。
10回跳び終わるころには、泣きやんでいました。身体を大きく動かすことによって「感覚(神経系)の調整」が行われ、主導権が身体から脳に移ったのです。
「一生懸命つくったものが壊されたら、イライラするよね。そのままでいてもいいし、一緒に絵本を読んでもいいよ」(少し間をおく)。彼女はこちらを見てから絵本を取ってきて、私のひざの上にすわりました。
読んでいると、膝の中で丸まった彼女の身体から、少しずつ力が抜けていくのがわかりました。
「もう一回つくってみる? それとも、今日はもうやめる?」。
彼女は「今日はもういい」というジェスチャーをして、お料理ごっこを始めました。
神経系が落ち着いたら感情を調整する

15分ほどしてから一緒にお料理ごっこをしているとき、私は容器が開かなくてイライラしているふりをしました。
「ああ、もう! 開けたいのに開かない!」(少し間をとる)。「いま私の声は大きくなってる。顔もしかめてる。誰かを叩きたい気分。でも、ジャンプしてみよう!」。
カエルみたいにぴょんぴょんと5回跳びました。
「ふう、気分がよくなった。そうだ、誰かに助けてもらおう。ねえマラ、これ開けてくれない? ぜんぜん開かないの!」。
するとマラは身を乗りだし、私の背中をトントンと叩いてから、容器をつかんで開けてくれました。とても誇らしげな笑顔でした。
マラが自分の感情を調整し、その出来事を受け止めて整理できたのは、まず神経系が落ち着いたあとだったのです。大きくジャンプしたのは、感覚を整えるためです。日ごろから「感覚遊び」や「感覚を満たす活動」をすることで、その子の気持ちが乱れたときに役立つ方法を知ることができます。
感情を処理できたからこそ、マラは「今日はもういい」と言えた。脳全体を使ってコミュニケーションをとり、問題を解決することができた。その状態になって初めて、自分の反応を振り返り、次はどうすればよいかを学ぶ準備が整うのです。
私を叩くべきでないことは、マラ本人もわかっています。叩きたいわけでもない。私だって人に向かって怒鳴るのは嫌いなのに、ときどき怒鳴ってしまう。それと同じです。
最初の反応ではなく次の行動を意識的に選ぶ

身体が脳を凌駕してしまうことがあります。最初の反応と、その後の対応のあいだに「間」をとるのは1つのスキルであり、意識して磨いていかなければ、自然には身につきません。
私たちがマラの反応にどう対応するかを見せたり、一緒にごっこ遊びをしたりすることで、彼女がこの新しいスキルを身につけられるよう手助けしているのです。
あなたも自分ではどうにもできないような感覚になり、あとで後悔するようなことを言ってしまった経験はありませんか? それが、人間というものです。
そういうとき、あなたはどうすることが多いですか? 自分でも止められないまま大声でわめいてしまう? 荷物をまとめてその場を去る? 黙りこんで心を閉ざす? それとも、言いたいことを飲みこんで、相手の望むことをしようとする?
自分の神経系がどんな反応をするのかを知ることで、次にどうするかを考えられるようになります。
覚えておいてほしいのは、最初の反応は、多くの場合、無意識のものです。
だからこそ、まずはその反応に気づき、少し間をとってから次の行動を意識的に選ぶスキルは、磨くことができます。
アリッサ・キャンベル (著), ローレン・ストーブル (著), 多賀谷正子 (翻訳)『0歳からはじめる 子どもの感情を育てる本』(かんき出版)
「泣かないの」「大丈夫だから」「騒がないで」――
そんなふうに子どもの感情を軽く扱う時代は終わりました。この本では、子育てで誰もが直面するさまざまな困難な場面に対応するための実践的な方法を紹介します。
・子どもが癇癪(かんしゃく)を起こしたときにすべきこと
・子どもがたたく・噛むなどの行動をしたときの適切な対応や声かけ
・不安や怒りを感じている子どもを落ち着かせるサポートの方法 など
親子の関係をより深くはぐくみ、生涯にわたる心のしなやかさ(レジリエンス)と心身の健やかさの土台を築きます。子どもも大人も、すべての人のために書かれた一冊です。






























