「私は嫌い」と言って浮いてしまう女の子へ。ADHDの母が伝えたい「同調は安全確認の儀式」という考え方

なちゅ。(医療監修:本田秀夫)
2026.10.30 16:14 2026.11.05 11:50

悩み落ち込む女子中学生・高校生のイメージ

友だち同士で「私も」「わかる」と同調し合うなか、「私は違う」と本音を言って浮いてしまう…。ADHDの特性がある子は、こうした「余計な一言」で人間関係がぎくしゃくしてしまうことも少なくありません。

「思ってもいないことを言うのは、嘘じゃない?」と悩む女の子たちに、ADHDの特性をもつ著者・なちゅ。さんが伝えたい、生きづらさを減らすための考え方とは? 著書『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』から紹介します。

※本稿は、なちゅ。 (著), 本田秀夫(医療監修)『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』(ダイヤモンド社)より一部抜粋、編集したものです。

「同調」は中身のない「安全確認の儀式」と割り切る

やり方:不要な摩擦を減らすために「わかる~」と言っておく

「『〇〇が好き~』と言っているところに『私は嫌い』と言ってくる人、鬱陶しい」。よく聞く話です(私もよくやっていました)。あれが嫌われる理由は、「私たち、同じものが好きだね~」という「敵対していないことの確認」の邪魔になるからです。

でも一方で、「私は嫌い」という人の目的は、「お互いの好みを知ること」です。自分を知ってほしいし、相手を知りたい。会話の目的が探究なんです。どちらのコミュニケーションもおかしくないし、下手でもない。会話の目的が違う。本当に、それだけの話です

私は不要な摩擦を減らすために、まず次の2点を心に置いています。

・「私も!」ととりあえず言っておく

・「〇〇好き~」と言われたら、「わかる~」「いいよね」を返す

・何も言わずにニコニコ黙って聞いておく

考え方:この世には「多数派である」ことが、生存戦略の人がいる

学校で昼食を食べる中学生・高校生のイメージ

人間関係は、私たちが思う以上に「安全確認の儀式」で成り立っています。

猿が毛づくろい(グルーミング)でお互いを確認し合うように、人間は雑談と共感の交換で「敵ではないですよ」を確認し合っています。

「〇〇好き~」「私も!」のやりとりは、情報交換ではなく毛づくろいです。だから中身がなくても問題ない。行為そのものが仕事をしているからです。

とはいえ、この世界には「自分は多数派である」と感じることが生存戦略になっている人がたくさんいます。その人たちにとっては、真実よりも、一時的な同調コミュニケーションのほうが大事です。

どっちがいいとか悪いとかではなく、持って生まれた感覚が違う(そして、同調で群れを保つ人と、真実を優先する人、両方が混在していることが、人類全体の生存戦略なのだと私は思っています)。

だから、「同じ空気を読めているか」を最優先で見てくる場が、この世界にはたくさんあります。発言の正しさではなく、空気。合理的に考えれば無意味に見える「私も!」が、その場では発言内容より大事な仕事をしている。この構造を知っておくだけで、「なぜ正しいことを言ったのに嫌われるのか」の謎が解けます。

同調がしんどいのは、そこに意味や本心を求めるからです。

「思ってもいないことを言うのは嘘じゃないか」と考えると苦しくなる。でも、儀式に本心は要りません。「おはよう」に「今朝は本当におはようと思っているか」を問わないのと同じです。

割り切ってしまえば、同調は最強のツールになります。中身がないから、誰でもできて、失敗しようがない。「わかる~」の一言で、安全の確認が済んで、関係の土台ができていく。あとは、ただ黙って聞いておく。

意味がないからこそ安全で、安全だからこそ、人間関係の入口になるのです。

なちゅ。

なちゅ。

  • X

1980年生まれのワーキングマザー。発達障害(ADHD:注意欠如多動症)当事者。中学生と高校生の娘、そして夫も発達障害の特性を強く持つ。長女の発達障害診断をきっかけに、発達障害やそれに関連する分野の独学を開始。以来15年以上、自らの発達障害や子育てについてXを中心に情報発信を行う。仕事でも、障害福祉分野でマネジメント担当をしながら、個人事業主として講師業やスタートアップのサポートに従事。なかでも、自身の経験を活かした発達障害の親子のケアに力を入れている。

本田秀夫

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」センター長。

精神科医。医学博士。1988年、東京大学医学部医学科を卒業。東京大学医学部附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院を経て、1991 年から横浜市総合リハビリテーションセンターで20年にわたり発達障害の臨床と研究に従事。2011 年、山梨県立こころの発達総合支援センターの初代所長に就任。2014年、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長。2018年より信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授。2023年より長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」センター長。発達障害に関する学術論文多数。日本自閉スペクトラム学会理事長、日本児童青年精神医学会理事、日本自閉症協会理事。

ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと
なちゅ。 (著), 本田秀夫(医療監修)『ADHDの母が伝えたい 生きづらい女の子が覚えておきたいこと』(ダイヤモンド社)

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