「何度言えば…」服の脱ぎ着もハサミも!子どもが自然と覚える4つの教え方
小さな子どもに、服の脱ぎ着やハサミの持ち方などを何度も教えているのになかなか覚えてくれず、ついイライラしてしまうことはありませんか?
本記事では、子どもが自然と学べるようになる「4つの教え方」と、効果的に伝えるためのポイントをご紹介します。
※本稿は、アリッサ・キャンベル、ローレン・ストーブル著『0歳からはじめる 子どもの感情を育てる本』(かんき出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
子どもにスキルを教えるための4つの方法
人間はどのように学ぶのか、新しいスキルをどう教えれば効果的かを考えてみましょう。メルヴィン・コナーの『子ども時代の進化――関係と感情と知性』(未邦訳)によれば、教えるときに私たちがしていることは4つあるといいます。
①意図的に手本を見せる
子どもは目と耳で多くのことを学びます。
以前、幼児クラスにいたデイヴィッドの両親は、心理学の分野で働いている人でした。担任は、デイヴィッドが友だちをギュッとつかむことで親愛の情を示していることに気づいていました。でも幼い子には力が強すぎるのか、みんなその手を振り払ってしまうのです。私たちはこの件を両親に伝え、解決策を話し合うことにしました。
数日後、父親がデイヴィッドを送ってきたときのことです。帰り際、「いってらっしゃい」と言いながら父親がデイヴィッドをギュッとつかむと、デイヴィッドは顔をしかめてその手を振り払いました。そのとき父親はハッとしました。「そうか、ぼくの真似をしていたのか!」
子どもや生徒に、自分の言葉をそっくりそのまま言い返されたことはありますか?騒いでいる子に「静かにしなさい!」と怒鳴ったことは?
子どもはたいてい、親に言われたようにではなく、親がやるようにやります。意図的であれ無意識であれ、こうした教え方を「モデリング」といいます。
大人が話し方や振る舞いを示す
家で子どもを預かる仕事を始めた最初の1年、私は1人で子どもたちの面倒を見ていました。するとすぐに、私が使った言葉や言い回しを、子どもたちが私に向かって言ってくるようになりました。なかには、あまりよくない言葉も!
そこで気づいたのです。自分がしょっちゅう「○○しないと、△△してあげないよ」という言い方をしていることに。子どもたちが私の口癖を真似し始めて初めて気がついたのです。
子どもたちの話し方を変えたいなら、まず自分が変わらなくては。そこで言い方を変えると、数週間のうちにお互い気持ちよく話せるようになりました。
子どもに話しかけるとき、あるいは子どものいる前で大人と話すとき、自分がしてほしいと望む話し方や振る舞いを意識的に示せば、子どもがそれを身につける可能性はずっと高くなります。まだ幼くて理解できないだろうと思っても、子どもは常にあなたを見ています。
直したいと思いながらも、つい出てしまう口癖はありませんか?感情が高ぶっているときに話しかけられて、「この人の話し方は素敵だな」と感じた経験は?あるいは、とても気持ちのよい頼まれ方をされたことは?
いま思いつくことがあれば、書き留めておいて、あとで見返してみましょう。思いつかなくても大丈夫です。これから数週間、自分の言葉に耳を傾けてみてください。
②積極的に励ます
私は母からマニュアル車の運転を習いました。母の口調はいつも穏やかでポジティブでした。私の足がきちんとペダルを踏んでいるか、手がギアにきちんと置かれているかを見守るそのボディランゲージから、母が私に注意を向けていること、私ならできると信じていることが伝わってきました。
ギアチェンジのたびにひどい音がして私が思わず身をすくめても、「大丈夫よ、最初はみんなそう。練習すればうまくなるから」と励ましてくれました。
③大げさに見せることで、大切なポイントを明確に伝える
1年生のとき、先生がハサミの安全なもち運び方を実演してくれた場面をよく覚えています。
先生はまずハサミを目の前に掲げ、とがった刃先を指さしました。それからハサミを閉じ、閉じた刃先をゆっくりと片手で包みました。そのまま腕をゆっくり大きく下げて、ハサミが下を向くようにします。何度か上げ下げして、下を向いていることを強調しました。
そしてゆっくり歩き、つまずく真似をしてみせたのです――これがいちばん安全な運び方だと示すために。
④やることを細分化して、手順を明確にする
3歳の子どもに、脱いだ上着の袖を外側に出す方法を教えるとき、私は物語を使っています。こんな感じです。
「自分の腕がヘビだと思ってみて。ここがお口ね(手をパクパクと開いたり閉じたりする)。ヘビさんはお腹が空いています。そこで、お庭の穴にもぐっていきました(袖の中へ腕を入れる。子どもが乗ってきたら、シューッという音も出す)。ヘビさんはお口を開いて(袖口から手を出して、大きく広げる)、ガブッと噛みつきました(袖の端を手でつかむ)!かみついたまま、穴を後戻り!すると、ほら!」
これで袖がきちんと外側に出ます。2本目の袖は自分でやらせてみましょう。
新しいスキルを学ぶ準備ができていない人には、教えてもうまくいきません。
準備が整っているとは、基本的なスキルをもっていて、心が「安全だ」と感じている状態のこと。
鉛筆の持ち方を知らない人に絵の描き方を教えることはできませんが、鉛筆の使い方を知っている人なら、描きたいものを描く方法を学ぶ準備が整っています。
人が何かを学べるのは、心が安全で落ち着いているときです。そのとき、論理的な思考を司る脳(前頭前皮質)がもっとも活性化します。
逆に、命を守る脳(扁桃体)が主導権を握り、闘う・逃げる・固まる・機嫌を伺うモードに入っているときは、学ぶことができません。
「安全な場」でなければ子どもは学べない
子どもがスーパーの床で手足をばたつかせているときは、教え諭す場面ではありません。身体が主導権を握っている状態では、言葉も意見も耳に入らないのです。
まずすべきことは、身体的にも精神的にも「安全だ」と感じさせてあげること。脳に主導権を取り戻させることです。
そういう場面では、どう教えるかよりも、周りからの視線が気になってしまうこともあるでしょう。でも、「床を叩くのはダメ」と感情的に叫んでも、叩いてはいけないと教えたことにはなりません。「叩くのはよくない」とわかるだけでは、子どもは叩くのをやめないのです。
では、子どもがパニックになっているときはどうすればいいのでしょう。
安全だと感じられないと扁桃体が活性化し、子どもは本能的に自分を守ることを優先して、考えたり学んだりするのをやめてしまいます。そんなときは、まず落ち着かせることが先です。
教えるのはそのあとでいい。安全だと感じられれば前頭前皮質が働きだし、新しい考えを受け入れたり、フィードバックを聞いたり、問題を解決したりできるようになります。そのときが、教えるのにいい時間です。
アリッサ・キャンベル (著), ローレン・ストーブル (著), 多賀谷正子 (翻訳)『0歳からはじめる 子どもの感情を育てる本』(かんき出版)
「泣かないの」「大丈夫だから」「騒がないで」――
そんなふうに子どもの感情を軽く扱う時代は終わりました。この本では、子育てで誰もが直面するさまざまな困難な場面に対応するための実践的な方法を紹介します。
・子どもが癇癪(かんしゃく)を起こしたときにすべきこと
・子どもがたたく・噛むなどの行動をしたときの適切な対応や声かけ
・不安や怒りを感じている子どもを落ち着かせるサポートの方法 など
親子の関係をより深くはぐくみ、生涯にわたる心のしなやかさ(レジリエンス)と心身の健やかさの土台を築きます。子どもも大人も、すべての人のために書かれた一冊です。
