仕事では饒舌な父親がなぜ「学校の懇談会」では黙ってしまうのか…たった一つの準備が変えた場との向き合い方

熱海康太
2026.06.08 08:27 2026.06.08 19:00

手をつなぐ親子 登校

元公立学校教員として多くの子どもたちと向き合い、現在は一般社団法人日本未来教育研究機構代表理事を務める熱海康太氏は、「懇談会で発言できないのは性格の問題ではなく、準備の問題だ」と語ります。毎学期「また何も言えなかった」と後悔し続けた父親が、「今日これだけは聞く」という一つの問いを持って臨んだ日から、懇談会との向き合い方が変わりました。(写真はすべてイメージです)

終わるたびに「また何も言えなかった」

新学期や学期末の懇談会。終わって教室を出るたびに、「ああ、また今日も何も言えずに終わってしまった」という、どんよりとした後悔の念が残ることはありませんか。

先生の話を静かに聞き、他の保護者が流暢に質問するのを眺め、最後はなんとなく周囲に合わせて拍手をして解散する。帰り道、一人になってからようやく「あ、あれを聞けばよかった」「最近の子どもの様子、一言だけでも伝えたかったのに」と、言いたかった言葉が次々と溢れ出してくる。

次の懇談会こそは、と思っても、いざあの教室の椅子に座ると、また口が重くなる。「自分は懇談会という場が苦手なんだ、向いていないんだ」と思い込んでいる親御さんは多いのですが、問題の本質は「性格」にあるのではありません。多くの場合、単に「場に対する適切な準備」が不足しているだけなのです。

裕樹さんの葛藤:仕事では話せるのに、なぜ?

学校の教室、机と椅子と黒板

父親の裕樹さん(仮名)は、毎学期の懇談会に参加するたびに「空気を読んで、ただ座っているだけ」の状態を繰り返していました。周囲の保護者が積極的に発言している姿を見ては、「自分には親としての経験や熱意が足りないのではないか」と、密かに劣等感を抱いていました。

しかし、裕樹さんは決して人前で話すことが苦手なわけではありません。仕事の会議では、論理的に意見を述べ、プレゼンテーションもこなしています。それなのに、なぜ学校の懇談会になると途端に新入社員のような心持ちになってしまうのか。その理由が、長い間彼にはわかりませんでした。

懇談会で「言葉が詰まる」本当の理由

懇談会で発言できない理由を紐解くと、主に二つの要因が浮かび上がります。一つ目は、

熱海康太

熱海康太

  • X

大学卒業後、神奈川県の公立学校で教鞭を取る。 教育実践において厚木市教育委員会から表彰を受けるなど活躍。しかし、勘と根性に任せた指導法に限界を感じ、国立大学付属小学校で多くの教育論や教育実践を学ぶ。 学びを体系化することで、学級や学校は安定し、『先生の先生』を行うことも増えた。その後、教員や保護者、子どもたちのための本を執筆するようになる。 常に先端の教育理論や教育実践を研究している。